Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

名探偵ロイズはぼくらのヒーロー!〜乙一『銃とチョコレート』

バレンタインデーに因んでチョコレートの本を。

銃とチョコレート (ミステリーランド)

銃とチョコレート (ミステリーランド)


よう太が本屋に行くたびに気になって、チラチラ立ち読みしているのは文庫版の『王様ゲーム』。
長い間平積みにされているだけでなく、

  • 表紙が怖い
  • タイトルに「ゲーム」と付く
  • 人が次々と死ぬらしい

などの要素が相まって、先日クリアしたSCRAPのアプリ『人狼村からの脱出』からの連想でホラーっぽい要素を求めているよう太にとって、かなり気になる作品らしい。
しかし、この本は子どもに向いていないだけでなく、非常に悪評が多いので、むしろ遠ざけたい本*1。そこで、『王様ゲーム』から目を反らせるためにも、何とか「これを読んどけ」的な本を教えてあげたい。しかし、ホラー要素が強い子ども向け小説というジャンルについてよく知らないので調べてみると、子ども向けを謳っている講談社の「ミステリーランド」シリーズというのがあった。このシリーズ、作家陣が非常に豪華で、基本的には「ミステリ」だが、ホラーとの境界領域の作家も多く、よう太というよりは、自分の方が気になったので、まずはホラーにも強い作家として乙一を手に取ってみた。

少年リンツの住む国で富豪の家から金貨や宝石が盗まれる事件が多発。現場に残されているカードに書かれていた【GODIVA】の文字は泥棒の名前として国民に定着した。その怪盗ゴディバに挑戦する探偵ロイズは子どもたちのヒーローだ。
ある日リンツは、父の形見の聖書の中から古びた手書きの地図を見つける。その後、新聞記者見習いマルコリーニから、「【GODIVA】カードの裏には風車小屋の絵がえがかれている。」という極秘情報を教えてもらったリンツは、自分が持っている地図が怪盗ゴディバ事件の鍵をにぎるものだと確信する。地図の裏にも風車小屋が描かれていたのだ。リンツは「怪盗の情報に懸賞金!」を出すという探偵ロイズに知らせるべく手紙を出したが……。


大・満・足!!
総ルビで字が大きいために、子どもでも読めるし、人が死ぬシーン等、子どもに毒が無いとは言わないが、過度に残酷な描写は無い。よう太に読ませても大丈夫だ。
しかし、それ以上に内容が良い。
探偵ロイズVS怪盗ゴディバという、非常に分かりやすい構図。そして探偵ロイズに憧れる少年リンツという主人公とその仲間たち。前半部から、すぐに明智小五郎+少年探偵団VS怪盗二十面相という対立関係を当てはめて読めて、子どもの頃に戻った気分に。しかし、その関係が上手く行き過ぎていて「面白いけれど、パターンに嵌めることが、少年少女向けということなのかな?」と、全4章構成の2章の途中でやや疑問を持ち、ダレてきた。
ところが、3章に入り、突然その構造が大きく変わり、想定と大きく異なるパターンの冒険行が始まる。いわゆるネタバレ部分に入るので一切書かないが、この辺からはジェットコースターのように持って行かれる。
夢に出そうな怖い雰囲気を持ったイラストもいいし、装丁も凝っている。(図書館で借りたため、外側カバーは無かったのだが、もしかしたらこの方が雰囲気があるかも)
乙一独特のブラックな要素やどんでん返しもあり、最後まで気が抜けず、いわゆる子供騙しではなく、大人が読んでも大満足だ。しかし、子どもが読んでも楽しく読める。どうしてこういう小説がアニメや映画にならないのか、むしろ不思議なくらい。
一旦は、よう太にスル―されたが、もう一回薦めて見ることにしよう。


ところで、ロイズといえば、ポテトチップチョコレートですよね。時々食べるたびに驚きの美味しさです。


*1:原作は読んでいないが、漫画を途中まで読んだので、ある程度設定は把握しているつもり。漫画の感想はこちら