Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

オトナ帝国になれたかもしれないのに・・・『映画ドラえもん のび太と奇跡の島』

映画ドラえもん、かなり大雑把ですがネタばれ感想です。
今回、のび太のお父さん(のび助)がフィーチャーされるということを知り、だいぶ前から期待していた今回のドラえもん映画。事前の評価や細かいストーリーについては、なるべく仕入れずに見に行ってきました。それこそオトナ帝国*1級を期待していました。


さて、結論を言うと不満。かなり不満。
もしかしたら、夏ちゃんのトイレでしばらく席を立っていた間に重要な展開があった可能性もあるが、不満点としては大きく二つ。

ボリューム不足

まず、ボリューム不足ではないか?ということ。これほど「え、もう終わりなの?」と思ったドラえもん映画は初めて。
ドラえもん映画は、ごく大雑把にいって以下の3つでできている。

  • (1)異世界のキャラクタとの交流
  • (2)強いボスキャラを倒すまでの冒険
  • (3)寂しさを伴う日常への帰還

今回、そのどれもが中途半端になってしまった。それは、今回の特殊要因ダッケ(のびすけ)を入れたことによる時間不足が原因なのだろうが、もう少し上手く見せられなかったのかなあと思う。
上に挙げた中でも特に(2)の問題が大きい。ピンチに次ぐピンチで、瀕死の状態からの逆転勝利だからこそ、仲間たちの絆が深くなり、別れが辛くなる。人質にとられたケリー博士との絡みを少し増やして、ボスキャラは、危機的状況から機転と友情で乗り越えるというものになっていれば、ちゃんとしたドラえもん映画になっていた。そう、今回は、ちゃんとしていなかった。ビッグライトで解決?あり得ない。

カブ太の扱い

映画冒頭で、のび太は、駅前のデパートで、パパにカブトムシを買ってもらう。パパは、ちゃんと育てることを約束させ、指切りをする。
そのカブトムシ「カブ太」を、空き地でやっていた虫相撲で対戦させるも、ジャイアンのカブトムシ相手に負けてばかり。もっと大きいカブトムシがほしいということで、今回の舞台「奇跡の島」が登場する。
この冒頭シーンだけで映画のテーマがいくつか見えてくる。
ひとつは、分かりやすく「約束を守る大切さ」。もうひとつは親子関係、空き地で、ジャイアンスネ夫のび太のパパを「弱い」とからかうことからもわかるように、パパ→のび太→カブ太の構造が明確だ。逆に、この前提がないと、クライマックスで「カブ太」がのび太達を助けようとして大活躍する理屈が無くなる。つまり、パパが愛情を持ってのび太に接するように、のび太は「カブ太」に愛情を注ぐ・・・べきなのだが、そうはなっていない。
のび太はピー助に、キー坊に、台風のフー子に愛情を注いだからこそ、感動的な名シーンが生まれたのだ。それが今回は

  • 虫相撲に負けてすぐに、ドラえもんに代わりのカブトムシをねだる
  • 「奇跡の島」では、ルール違反をして、絶滅危惧種のカブトムシを持ち帰り、それでジャイアンのカブトムシを倒して喜ぶ
  • その間、カブ太は放置。(ドラえもんが保護)

にもかかわらず、コロンが「のび太の虫が欲しい」とねだったときだけ「パパとの約束があるから・・・」というのはどうか。「約束」の大切さを強く感じているのは、その後預かったカブ太を大切に扱ったコロンの方で、むしろ、のび太は何もわかっちゃいないという思いを強くした。
そもそも、デパートで購入という出会いからしておかしい。パパと一緒に朝早く出かけて捕まえた(もしくは、鶴の恩返しのように「助けた」)、というストーリーにすれば、もっと「カブ太」に思い入れを持って見ることができた。
さらには、クライマックスで、ビッグライトで大きくなった「カブ太」がボスキャラを倒すという展開は、敵の倒し方や道具の使い方に工夫がないという以上に、物語の構造としても気持ちが悪い。前半、ジャイアンのカブトムシに何度も負けた理由を「体の大きい相手には勝てないのかな」と説明していたパパ。その言葉を破ってこその映画ドラえもんでしょう!体が小さくてもひと工夫することで勝てる。それこそ知恵と勇気と友情で。それが、ビッグライトで体が大きくなって勝ち、とか、何それ?と思ってしまいました。


整理すると

  • 「カブ太」とのび太の出会いは、もっと必然性を感じさせるものであるべきだった。(やっぱり鶴の恩返し?)
  • のび太が愛情を持って「カブ太」を育てるシーンをもっと盛り込むべきだった。
  • 特に、今回の映画では、パパ→のび太の構造と重ねてそれを見せるべきだった。
  • 人質になったケリーさんとの心の交流を描いておくべきだった。
  • カブ太は、「力」でボスキャラを倒してはならなかった。
  • カブ太は、のび太を助けようと敵に一撃を与えるも反撃を受け、のび太達が協力して敵の弱点を突くという展開にすべきだった。

というところでしょうか。
今回、ダッケの声を、僕ら(パパ世代)のヒーローである野沢雅子が担当し、劇中歌を堀江美都子が歌うという盤石の布陣を敷いていたので、序盤は、涙腺決壊まであと数秒という状態が続きましたが、後半になるにつれ、気持ちがさっぱりしてきて、最後の福山雅秋*2の主題歌を聴く頃には、目の周りに渇きを感じたほどでした。
人魚大海戦がどういう話か忘れてしまいましたが、水田わさび版のドラえもん映画の中でもワーストに近い出来だと感じました。
設定を全部生かせば、オトナ帝国的な映画になったかもしれないのに・・・と残念でたまりません。
コナン君映画(今回、いろいろ情報が出てくれば出てくるほど、映画的なゴージャスさに欠けるように感じますが)には期待しています!*3

*1:いわずとしれたクレヨンしんちゃんのヒット映画。監督・脚本は原恵一

*2:ドラえもんファンは皆こう呼びます。あと、甘栗旬ね。

*3:ところで、ドラえもんとコナンの映画を見に来ていつも思うけど、ポケモン映画のタイトルはいつもかっこいい。新しいポケモンの名前がタイトルになっているみたいで、今回は「キュレムVS聖剣士ケルディオ」おおお!カッコいい。