- 作者: 高野秀行
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2011/10/20
- メディア: 文庫
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本書は、「探検話」+「対談」+「書評」(本の雑誌の連載)の3つから成っている。
このうち、「探検話」は、それはそれで面白かったのだが、『アヘン王国潜入記』など他の本の後日談となっていたりするので、元の本を読んでから読み直したい。
「対談」は、角田光代、井原美紀、内澤旬子、船戸与一、大槻ケンヂと、一癖も二癖もありそうな人と、主に旅、探検、UMAをテーマに話す。どの対談もそれぞれの性格が見えて読み易い内容。
そして、最後の「書評」。特に期待していなかったが、これは素晴らしいと思った。エンタメ・ノンフ(エンタメ系ノンフィクションを指す略語)というあまり慣れないジャンルの本だから、割増で面白そうに見える可能性もあるが、読みたい本がザクザクという以上に、作品や作家の本質を捉えた物言いが気持ちいい。探検部あがりは文章も達者な人間が多い*1(p299)と自身で言っているが、Amazonですぐにポチりたくなる名文ばかりで驚いた。
以下、読みたい本リスト
- 椎名誠『武装島田倉庫』:現代にある「辺境」の世界を描く連作短編SF。
- 椎名誠『水域』:辺境感溢れる、旅先で読みたい小説。
- アーネスト・シャクルトン『エンデュアランス号漂流記』:トラブル続出の南極探検から全員が奇跡の生還を果たす「完璧なノンフィクション」
- ケリー・テイラー・ルイス『シャクルトンに消された男たち』:上ほ本の裏話的内容。実際には全員生還ではなかった!命を落とした数人に焦点を当てた内容。
- ミルダ・ドリューケ『海の漂泊民族バジャウ』:自分探しをスタートにして辿りついた時間も場所もない世界。
- 中島京子『イトウの恋』:明治時代に日本の辺境を旅したイザベラ・バードに恋した通訳兼ガイドの話。
- 奥圭三『例えばイランという国』:すぐにでもイランに行きたくなるイラン滞在記。
- 内澤旬子『世界屠畜気候』:何もかも面白い、世界各地の屠畜と土地を描く傑作ルポ。
- 青山潤『アフリカにょろり旅』:東大海洋研ウナギチームの探検談。最後の教授の名言には思わず目が潤む。
- 宮田珠己『ウはウミウシのウ―シュノーケル偏愛旅行記』:高野とも親交の深いエンタメ・ノンフ界の雄。
- 高橋秀実『素晴らしきラジオ体操』:エンタメ・ノンフの横綱のオススメ本。「管理したい」と「解放されたい」の止揚、それがラジオ体操。
- 牛山隆信『秘境駅へ行こう! 』:遭難覚悟で到達した函館本線・張碓駅への踏破ルート図あり。
- 石丸元章『KAMIKAZE神風』:キャバ嬢同伴で、特攻隊の生き残りである老人達を取材。
- 角幡唯介『川の吐息、海のため息―ルポ黒部川ダム排砂』:1976年生まれの早稲田大学探検部出身(高野の後輩)の本。代表作は「空白の五マイル」
参考(過去日記)
*1:遠征前には、政府や学者を騙す計画書の作成に忙殺され、帰ってきたら成果をアピールする報告書を書く。自分の思ったことを書くのではなく、読者に「ああ、なるほど」と思ってもらう文章を書く訓練をしているので自然に文章がうまくなる、ということらしい。