Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

F先生の描く自然風景と超合金ロボのギャップ〜藤子・F・不二雄『エスパー魔美』(4)

エスパー魔美 4 (藤子・F・不二雄大全集)

エスパー魔美 4 (藤子・F・不二雄大全集)

3巻は未読のまま4巻。
F先生も慣れてしまったのか、この巻は、うまく行き過ぎる話が多くて、1巻や2巻を読んだときの興奮は無い。
そんな中で、高畑さんと登山に行って魔美の料理の腕に救われる「恐怖のサンドイッチ」や「いきがい」など、大自然をバックに飛び回るシーンがある話は絵的に開放感があって心地いい。特に、20年前にできたダム湖を舞台にした「生きがい」は感動的だ。ダム湖に沈んだ故郷の姿を、魔美が潜って脳裏に焼き付け、テレパシーで相手に伝えるシーンのビジュアル的なイメージは素晴らしい。これを見ると、F先生は、自然風景を描くのが本当に上手だなあと思う。
それは逆に言うと、苦手なものがあるということで、日本を代表するロボット(ドラえもん)を描く漫画家が描く超合金ロボが、常に「これじゃない」感を出しているのは、なぜだろうかと不思議に思う。(鉄人兵団のザンダクロスが辛うじて大丈夫な程度…)
巻末解説では、永井豪手塚治虫との違いを以下のように語っているが、そのためだろうか…。

手塚先生が描かれたSFマンガと、藤本先生のSFマンガは、同じSFというジャンルではあっても、大いに趣を異にしている。手塚先生の作品には、ヒーローの冒険や戦いをテーマにしたものが多く、その舞台は遠い未来であり、地球外の惑星であったりする。一方藤本先生は、子供達の日常生活を舞台にし、子ども目線による作品を多く描かれた。
子供達の日常生活にSFを持ち込み、手の届くところに起こりうる「不思議」を物語にすることで、小さな冒険心を見たし、日常を楽しくさせてくれたのだ。

辻村深月いうところの「すこし・ふしぎ」理論と主旨は同じなのかもしれない。カッコよすぎるロボは、「すこし」からはみ出るからセーブしたのだろうか。


なお、魔美のテレキネシスを目撃し、本当のことを言えと、そして結婚しろと魔美に迫る映画研究会の黒沢さんが登場する話は、他には感じられないスリルがあって面白かった。