Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

ドラえもん映画との相違点にエッセンスが〜岡田淳『二分間の冒険』『ようこそ、おまけの時間に』

そもそもは『二分間の冒険』が、紀伊國屋新宿南店の(夏休み向けの)冒険関連本特集で平積みにしてあったものを見かけたのがきっかけ。諸星大二郎っぽいカバーイラストは、何か別の機会にもオススメされた覚えがあったので、すぐに入手。
こういう、何となく面白そうな本は、よう太に紹介すると、(波長が合えば)すぐに読んでくれるのがいい。自分より先に読み終え、さらに図書館で借りてきた『ようこそ、おまけの時間へ』も読破し、『ようこそ〜』の方をオススメしてくれた。


二分間の冒険 (偕成社文庫)

二分間の冒険 (偕成社文庫)

『二分間の冒険』
たった二分間で冒険?信じられないかもしれません。でもこれは、六年生の悟に本当におこったこと。体育館をぬけだして、ふしぎな黒ネコに出会った時から、悟の、長い長い二分間の大冒険が始まります。昭和六十年度うつのみやこども賞受賞。


ようこそ、おまけの時間に (偕成社文庫)

ようこそ、おまけの時間に (偕成社文庫)

『ようこそ、おまけの時間に』
授業中、12時のサイレンと同時に賢がはいりこんだ不思議な世界―そこでは、だれもが茨にまかれて身動きすることもできなかった―学校を舞台にくりひろげられるスリリングなファンタジーの世界。


2冊とも巻末解説がついており、『二分間の冒険』は上野瞭さん*1、『ようこそ〜』は、子どもの本専門店「ジオジオ」の江草元治さんが書いている。


いずれも共通して指摘されているのは、以下のような点だ。

  • “日本の児童文学の世界には「人生いかに生きるか」とか「社会のゆがみにいかにたちむかうか」といった作品には高い評価があたえられる傾向があり、そういう規準で物語を眺める人が多い”一方で“物語というものがもっている「どきどき、わくわく」する「おもしろさ」が軽く見られる傾向にある。岡田淳の描く物語は、軽視されがちな、物語の「どきどき、わくわく」をメインに据えながら、大切なものについても考えることができる。

二冊の本で、ほとんど同様の解説が書かれているところを見ると、岡田淳という作家の評価として定着したものなのかもしれない。これは、自分が、フェイバリットのファンタジー小説鉄塔武蔵野線』を読んで感じたこととも通じる内容だが、確かに、二冊の本は押し付けがましさはなく、スッキリ読めて少し考えられる本だった。


また、二つの作品は物語の進行上で共通する部分があり、解説を読んでも岡田淳さんという作家の得意なモチーフであり、癖なのかもしれない。つまり

  1. 主人公は、それほど取り柄のない平凡な小学生。
  2. 現実世界と隣り合わせの別世界(大人がいない世界)での冒険譚。
  3. 別世界に突然入り込み、課された課題をクリアして元の世界に戻る。
  4. 元の世界に戻った主人公は、確固とした成長を遂げるわけではないが、気持ちが少し楽になっている。
  5. 登場人物はクラスメイトで名前も共通。(平行世界の住人)

これらは、ドラえもん映画*2では何度も出てくる常套のパターンだ。
しかし、一点だけ異なるのは「5」の部分で、未知の人物がほとんど出てこないことで、空想の敷居を下げているといえる。突拍子もないホラ話であればそうはならないが、夢のレベルを下げることで、むしろ空想することの楽しさを知る。上野瞭さんの解説が分かりやすい。

読みおわったとき、ひどく満ち足りた気持ちになるのは、岡田さんのつくりだす世界が、じつは、ぼくらのなかに眠っている世界だからです。
「ねむっている」というのは、こういうことです。ぼくらもときどきいろんなことを空想する。しかし、その場限りの夢として、そのまま忘れ去ってしまう。ほんとうは「夢見るそこ」にも僕らの世界があるのに、それに気づかず「ねむらせている」ということです。

こういった作風を、“岡田さんが実際に小学校の先生であること”、また“岡田さんが画家としての独自の目をもっていること”*3に理由があると分析しているが、二冊を読んでみると、その指摘はもっともかなという気がしてくる。


自分は小学生のときに、こういう学校ファンタジーやSF(眉村卓など)を、ほとんど読まなかったが、読んだらもっと、学校の友達が好きになっていただろう。(問題があったわけではないが、マイペースだった)
『ようこそ、おまけの時間に』の方が物語の構造がシンプルで読みやすいが、『二分間の冒険』は、やや意外な展開もあり、はじめに提示された謎を解いていく楽しさもあり、盛り沢山で面白い。
どちらも特に小学生にオススメ。そして、小学生の子を持つ親にオススメ。

*1:『ひげよ、さらば』を書いた方ですね。

*2:2013年の映画のタイトル出ましたね。>『のび太の秘密道具博物館』http://doraeiga.com/2013/

*3:『二分間の冒険』を除き、カバーや挿絵を本人が担当していることが多い