Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

日経新聞7/29(日)

乾いた大地「収穫半減」 米イリノイ州、干ばつ直撃 地に伏すトウモロコシ(5面)

約半世紀ぶりの米干ばつが米中西部の農家を直撃している。トウモロコシと大豆は米国がともに世界最大の生産量を誇るが、米農務省によると全体の約9割が干ばつの影響を受けている。9月には収穫激減が判明してトウモロコシなどは最高値を再更新するとの観測も浮上する。被害の実態を探ろうと、トウモロコシの主産地であるイリノイ州の農場を訪ねた。

トウモロコシや大豆の価格への影響は避けられないようだ。トウモロコシの高値→飼料作物の高値ということで、広い範囲に影響してくるのだろうか。

環境対策、中国政府に不信感 江蘇省で排水管設置巡りデモ 王子製紙、早期操業再開めざす(5面)

中国江蘇省南通市啓東で28日、製紙大手の王子製紙が利用を計画していた排水管の設置反対を訴える数千人規模のデモが起きた。地元政府は建設計画の撤回を決め、デモはいったん収束。ただ、環境対策を巡る政府への不信感と反日感情が市民の間に根強いことを浮き彫りにした。

このニュースは、当初NHKニュースで取り上げられているのを聞いたときは、王子製紙が関連しているとは知らなかった。そこでの取り上げられ方は、記事の中でも書かれているように「環境保全より経済成長を重視する政府への市民の反発が表面化」というのが軸で、政府もデモの主張を飲むケースが多いという報じられ方をしていた。王子製紙の件は意図的にかどうか、抑えて報道していたのかもしれない。
したがって、この記事を読み、デモで影響を受けたのが日本企業であり、背景に市民の反日感情があると知って驚いた。朝日新聞記者に警官隊が暴行したというニュースも併せて読むと、「反日」の要素がかなり強く感じられる。
デモが増えている(しかも、それが受け入れられている)中国の現状には非常に関心があるが、それ以上に、どちらの報道の仕方が事実に近いのかという点が気になる。

検証 原発事故調報告書〜浮かぶ事故の姿、核心解明は遠く(7,8面)

東日本大震災から500日がすぎ、東京電力福島第1原子力発電所の事故を究明する、政府、国会、民間、東電の4つの調査報告書が出そろった。巨大地震と大津波に見舞われ、3つの原子炉が次々と炉心溶融メルトダウン)するという史上最悪の原発事故は、避けようがなかったのか。事故の姿はようやく見えてきたが、その答えを得るにはまだ時間がかかる。

不勉強なことに、4つの事故調報告書があることを理解していなかった。

  • 政府事故調:菅政権が閣僚決定に基づき設置。責任追及よりも事故の経過や法制度の分析を重視。委員長は畑村洋太郎
  • 国会事故調:国政調査権に基づく強い権限を持つ。国会に設置。責任の所在を明らかにすることを重視。委員長は黒川清
  • 民間事故調:民間企業等がスポンサーとなり自由な立場から調査。東電幹部は調査協力を拒否。事故の歴史的・構造的要因を重視。委員長は北沢宏一。

事故の原因が津波地震かなどという分かりやすい部分は勿論、SPEEDIについても意見が分かれているのは興味深い。住民避難に使えたはずとする政府事故調民間事故調に対して、そもそもSPEEDI自体が正確性に疑問符があり使えない技術だとする国会事故調。後者みたいな視点は無かった。国会事故調は、事故の原因が津波ではなく地震だとする唯一の報告書で、どの報告書が政府よりとかいうことはなく、各事故調に属する委員の先生の持論によってブレが生じているようだ。
「事故調査報告書」と、簡単にひとまとめでいうことは出来ず、4つを比較することで、今後何かあったときにどう検証すればいいのかを考えることが出来るのではないだろうか。

創論:核燃料サイクルは必要か(11面・日曜に考える)

賛成反対双方の意見を読み比べるコーナーだが、まずテーマの立て方には驚く。原発の早期全廃なら核燃料サイクル自体も即時廃止とすることが明確で、原子力を当面維持することが前提のテーマだからだ。自分は、考え直すまでもなく、核燃料サイクル反対の立場で、この問題については、反対が多数なのではないかと感じていた。ところが、読者アンケートを見ると、賛成と反対は拮抗している。

  • 使用済み核燃料はリサイクルと直接処分のどちらが望ましいか
    • 35%:リサイクル
    • 34%:直接処分
    • 15%:リサイクルと直接処分の併用
    • 17%:どちらも支持しない

確かに、使用済み核燃料をどうするかと問われれば、リサイクルと答えたくなるのかもしれない。日経新聞の意見は以下の通りリサイクル推進に傾いているようだ。

経済的な合理性が見いだせなくても選択肢を捨てないために国の後押しでリサイクルを進めるのが従来の政策だ。政府の肩入れは不要で商業ベースが無理ならやめるべきとするのは米国やドイツに似る。

記事での賛成論者は京都大学の山名元教授で、廃棄物管理の観点(使用済み核燃料は廃棄に適した状態ではなく、再処理でプルトニウムとウランを分ける必要)と資源の観点(今後のエネルギー供給の不確実性に対する備え)から核燃料サイクルが必要だとする。元動燃の技術者から京大教授になっているという経歴は、あまり客観的な判断のようには見えないのが残念。
一方、反対の立場をとる九大の吉岡斉教授は、六ヶ所の再処理工場はメドが立たない状態で、商業的な合理性がないとする。使用済み核燃料の行き場がなくなるから再処理をする必要があるというのは核燃料サイクルを継続する口実に聞こえるという意見には強く頷ける。
六ヶ所の再処理工場について山名教授は「稼働できる」という楽観的な意見で、今の時点でこういう主張があり得るということ自体に驚きがある。
少なくとも高速増殖は、他の先進国があきらめた夢の技術であり、今後のエネルギー供給の備えとしては、そういったお金は地熱などの分野に入れていくのが理解しやすいと考える。
賛成派の山名教授の意見をもう少し読んでみたい。

それでも日本は原発を止められない

それでも日本は原発を止められない

読書欄

世界文化小史 (講談社学術文庫)

世界文化小史 (講談社学術文庫)

「本の小径」欄で、“文庫で読む通史”というテーマで紹介されていた一冊。地球の誕生、生物の始まりから説きおこし、第一次世界大戦後までを通覧する内容とのこと。「地球と生命の誕生に始まる人類の歩みを大きな視点で物語る。現代に通じる文明観と、人類への信頼に満ちた、世界史入門の名著。 (Amazon)」とあり、惹かれる。

わたしがいなかった街で

わたしがいなかった街で

ちょうど先日書評家の豊崎由美さんがラジオでオススメされていた小説。未読ながら柴崎友香さんという作家自体に興味がある。「この小説は3.11の大震災に直接はふれていないが、あきらかにその衝撃と痕跡が背後にある。未曾有などといわれる出来事が、日々の生活のすぐ隣にあるという現実を示す、作家の想像力と卓抜な小説技巧によるものである。」


ネゴシエイター―人質救出への心理戦

ネゴシエイター―人質救出への心理戦

誘拐事件での「交渉人」の実態に迫るノンフィクション。運悪く誘拐された時の心得など、海外での仕事が多いビジネスマン必読ではないか、という、翻訳家平岡敦さんのオススメの仕方はツボ。


女性のいない世界 性比不均衡がもたらす恐怖のシナリオ

女性のいない世界 性比不均衡がもたらす恐怖のシナリオ

インドや中国における女児中絶の実態を伝える、中国駐在の長い米国生まれの女性ジャーナリストによる本。米国、タイなどの富裕層の間で行われている着床前診断についても、今後の産み分けは男女にとどまらない可能性があると警告する。

気象を操作したいと願った人間の歴史

気象を操作したいと願った人間の歴史

天候を人為的に操作しようという夢を追った科学者らの試みを歴史的・批判的に検証した本。私たちは「自然の複雑さ(と人間の性質)を前にして、十分な謙虚さと、畏怖さえ培う」必要があり、制御すべきは気候ではなく、むしろ科学技術の傲慢さなのである。これは、上の山名元教授の本と合わせて読みたい感じ。