ウナギとりの夏 (月刊 たくさんのふしぎ 2012年 08月号)
- 作者: みやわきまさお
- 出版社/メーカー: 福音館書店
- 発売日: 2012/07/03
- メディア: 雑誌
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ケンくんはおじいちゃんにウナギの取り方を教えてもらい、夜行性のウナギを取るためにテントを張って夜を過ごし、持ち帰ったウナギを家でおじいちゃんがさばくのをじっと見つめます。そうして食卓を飾った数々のウナギ料理を見ていると、絵本の中から、匂いが立ち上ってくるようで、すぐさま鰻屋に駆け込みたくなるような、そんな気持ちになります。
「釣った魚を食べる」という単純な話ですが、実際のウナギの取り方、さばき方について、道具や場所の詳しい図解があり、自分もその場で教えてもらった気になることができる絵本です。
月刊たくさんのふしぎ綴じ込みの「ふしぎ新聞」では、著者のみやわきまさおさんが以下のように書いています。
「とって、さばいて、たべる」。食の原点ともいえるこの手順が、生きものたちの営み、そのつながりと仕組みはもちろん、歴史や文化、政治と教育、はては食の流通と外交問題にいたるまで、ぼくにいろんなことを考えさせてくれる。(略)
野に出でて、他の生きものの命をいただくことで生かされているぼくたちの暮らしはどのようにあったらよいのか、この作品をきっかけに想いをめぐらせてほしい。
ウナギという魚が特別なのは、食べ物としてのウナギが特別だからだと思います。今年は、ナス*1などの変わり種も含めて、代用品の蒲焼もたくさん出たようですが、やはり他に代えがたい魅力がウナギの蒲焼にはあります。
だから、生態面から、いかに「謎の魚」かを強調されても、一番の関心は「美味しい魚」という食の部分にあります。だから、絵本としても『うなぎのひみつ』みたいなアプローチも王道ですが、『ウナギとりの夏』も、それ以上に王道アプローチで、ふたつで両輪をなしている感じがします。
東大海洋研もその点は抜かりなく、2011年に、自然科学以外の視点も十分に取り入れた鰻博覧会を開いています。
この鰻博覧会の展示会場では、自然科学、社会科学、人文科学のあらゆる側面からマクロな視点でウナギを包括的に理解し、不可思議で、それでいて愛すべきウナギという生き物の魅力を存分に楽しんでいただければ幸いである。
この鰻博覧会用に発売された冊子が以下に示す『旅するウナギ』で、装丁が美しく、カラー写真も豊富でページをめくるのが楽しく、ウナギの生態も食文化も網羅したウナギ大事典とでもいうべき本になっています。
- 作者: 黒木真理,塚本勝巳
- 出版社/メーカー: 東海大学出版会
- 発売日: 2011/08/01
- メディア: 大型本
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こうして見て行くと、やはり、ヨーロッパウナギが取れなくなったから次はアフリカウナギか?という話に猛烈な気持ち悪さを感じます。気にするべきはウナギの「量」ではなく、人々の生活とのかかわり、すなわち「文化」です。ヨーロッパウナギという前例がありながら、海外のウナギ文化を破壊していくのであれば、日本は、むしろ世界中から非難されるべきだと思います。
絶滅危惧種に指定され、種としての存続が危ぶまれているニホンウナギですが、少し考えれば分かる通り、「とって、さばいて、たべる」という日本のウナギ文化は、それと表裏一体をなすほど重要です。河川環境の改善に、適度な漁業規制*2などの乱獲対策を効果的に組み合わせて、何とかウナギ文化を存続させる。直接的には何もできない*3一般市民としては、そういう施策を何とか応援していきたいです。
参考(ウナギ関連本)
*1:見た目がウナギにそっくりでインパクトがありますね。是非一度食べてみたいです。→http://www.kawatomi.com/nasu.html
*2:ウナギをとること自体がウナギ文化を成しているという意味では、完全規制は、ウナギ文化を絶滅させることに繋がります。
*3:ただし、例えば、少し高くても、ちゃんとした店で食べて応援という方法はあると思います