Yondaful Days!

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日本型食生活は是か非か?〜江部康二『腹いっぱい食べて楽々痩せる「満腹ダイエット」』


これは想像していたよりもずっと面白い本だった。

糖質制限ダイエットというのは、基本的には、カロリーではなく、糖質の摂取量を減らすことがダイエットにつながるというもの。これさえ守れば、本のタイトルにあるように「腹いっぱい食べて楽々痩せる」ことが可能になる。
理論的には、エネルギー源として、糖質ではなく体脂肪を利用するという回路を活発化させることで、無理なく脂肪を落としていけるというメカニズム。ブドウ糖は絶対に必要だからこそ、外から摂取しなくても体内でブドウ糖を(脂肪から)作りだし、血糖値を一定に保つ仕組み(糖新生)が人間の体には備わっているので、これを上手に利用していくという考え方。


この基本理論に追い打ちをかけるのは、「糖質制限食が人類の本来の食生活だ」という指摘で、この論法は、幕内秀雄の粗食理論や、マクロビオティックと共通する。つまり科学的に実証されているとかエビデンスがどう出ているとか、そいういうことと無関係に、目指す場所に「本当の自分」があるという、そのことによって、多少辛くても先に進もうと思わせる魅力がある。しかも、ピマ・インディアンやイヌイットの話が出てくると、何かそれだけで信じこまされてしまう。(笑)
つまり、400万年の歴史を持つ人類は、本来肉食で、糖質を食べるようになったのは農耕が始まった1万年前からのことに過ぎない、というのだ。また、農耕が始まるまでの長い期間、人類は狩猟・採集のみで暮らしていて、糖質中心の食生活は適していないという話にも、そもそも、血糖値を下げる機構(安全装置)がインスリンしかないという事実がそれを裏付けているという理屈がつき、科学からは外れないのが、またもっともらしい


また、作者自身が、(糖尿病発覚をきっかけに)2002年から糖質制限食を継続しているということもあり、今これを始めなくてどうする、というくらいのエキサイティングなダイエット本だった。
ダイエットだけでなく、通常の生活においても食後高血糖が体によくないという話もあり、自分も今後の食生活において、糖質の摂取量を少し意識していきたいと思った。


ただし、血糖値を上昇させる糖質が「悪」という考え方は理解したが、脂肪は「悪」ではないという考え方については、まだピンと来ないところもある。最近のAERAでも取り上げられているが、糖質制限食理論から導かれる「欧米型の食事よりも日本食の方が悪」という考え方にも、やはりすぐには頷けない部分もある。

日本が世界有数の長寿国になったのは、欧米型の食事が浸透したおかげだ。健康そうなイメージの「日本型食生活」こそ、糖尿病の原因になる。

肉、卵、乳製品などいわゆる欧米型の食事を避け、ご飯と根菜類などが中心の日本型食生活をすることが、患者が増え続ける糖尿病を防ぐとされてきた。だが、その逆が実は正しいというのが、今や世界の大勢である。

ということで、糖質制限食自体について賛否両論があるのは分かっているが、その基本理論を勉強することができ、何より、日々の食生活に目を向けることができる本という意味で、良い本だった。
これを機会に、もっと色々と関連本を読んでみたい。