Yondaful Days!

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きこえますか…きこえますか…〜山岸涼子『日出処の天子』(3)

日出処の天子 (第3巻) (白泉社文庫)

日出処の天子 (第3巻) (白泉社文庫)

聞こえぬのだな
聞こえぬのだな 毛人
毛人!             p244

厩戸王子と毛人それぞれに婚姻話が出てくる中、二人のすれ違いはさらに悪化し、厩戸王子の挙動がどんどん不安定になってくるところが見どころ。以下のような場面で王子の心の動きが分かる。

  • 毛人が気になって地震を起こしてしまう
  • 冬なのに池に飛び込んでしまう
  • 毛人の想い人である布都姫に嫌味を言うためだけに直接会いに行ってしまう
  • でも、泊瀬部大王への対応は常に完璧でブレない

一方で、この巻の最後では、冒頭に引用したように、王子のテレパシーも受け取れないほど、毛人は布都姫に夢中になってしまった。それを快く思わない人物があと一人いるあたりも面白い。
厩戸王子を太陽だとすれば、毛人は地球。そして裏側を隠しながらも常に地球を見つめ続けている月は刀自古。地球が別の恒星に向かおうとすることは、太陽も月も黙っていない、というところだろうか。
以下の大まかな流れでは特に触れなかったが、3巻でも刀自古の“暗さ”がじわじわ来ていて、全体的にダウナーな方向にベクトルが向かい始めた気がする。


なお、巻末解説は梅原猛×山岸涼子で面白そうだが、前回懲りたので、今回は全く読まず。

大まかな流れ

泊瀬部大王(崇峻天皇)の大嘗祭で、舞姫に扮して厩戸王子が踊る姿に心を動かされてしまった毛人は、王子の姿を忘れるために、阿部の姫の元へ通う。一方で、刀自古と楽しく話している毛人の姿を目撃し、局所的な地震を起こすほど動揺(笑)した厩戸王子のもとへは、額田部女王が長女・幸玉宮の大姫をけしかける。
賭弓の儀のあと、久しぶりに出会った二人はぎこちなく、突然、王子は池に飛び込んでしまう。近くにある司馬の屋敷に駆け込み、加護を受けたその晩、二人は夢の中でまた出会う。
その後、司馬の一族は、厩戸王子、蘇我のグループとの距離が縮まり、寺院建立の工人としてスポットがあたる。(駒などの東漢(あずまのあや)氏一族は外された格好になる)


百済からの使いに良い所を見せようと、突然、寺院建立の権限を奪い、自分が指揮を執ると言い始める泊瀬部大王。王子と大王の対立関係が悪化する中、5月5日の薬狩りの日を迎える。霧がかった森の中で、穴穂部王子や物部大連など、自らの政敵の亡霊に囲まれる。近くを通りかかった泊瀬部大王が、穴穂部王子(兄)の亡霊に怯えて放った矢は、厩戸王子に向かい、二人の対立は決定的なものとなる。
調子麻呂(厩戸王子の舎人)は善信尼との仲が進展し、厩戸王子自身は額田部女王の大姫ごり押しを受け入れるなど周囲の男女関係が順調に進む中、雄麻呂に「(お前は心の底から)阿倍の女にホレてない」と言われ、悩んでしまう毛人。そんなとき布都姫との運命の出会いが訪れる。


一方、馬子は泊瀬部大王が動かないことに業を煮やし、厩戸王子を担ぎ出し。金に物を言わせて五経博士や各豪族を従わせて寺院建立を進めてしまう。力の差を感じた泊瀬部大王と大伴糠手は、厩戸王子と馬子の暗殺を試みるが失敗。


厩戸王子は、毛人に訪れた変化を感じ取るが、毛人に対しては、その超能力の威力は半減し、相手を探り出すことができない。そんなとき、司馬の秘蔵っ子・トリから“噂”として布都姫のことを知った王子は直接、布都姫に会いに行くのだった。嫌味を言いに行くために…(笑)