Yondaful Days!

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ひまわりの高度はなぜ36000kmなのか〜『人工衛星の“なぜ”を科学する』

ちょうどタイミングよく、韓国が人工衛星の打ち上げに成功したようで何より。それにしても北朝鮮との関係は複雑…。↓

韓国は30日、ロシアの協力を得て人工衛星の打ち上げに初めて成功し、国内で祝賀ムードが広がっていますが、先月、「人工衛星の打ち上げ」だとして発射を行った北朝鮮は、国連安全保障理事会で非難決議が採択されたばかりなだけに、「扱いが不公平だ」と主張して反発を強める可能性があります。


人工衛星の“なぜ”を科学する―だれもが抱く素朴な疑問にズバリ答える!

人工衛星の“なぜ”を科学する―だれもが抱く素朴な疑問にズバリ答える!

最近、とある資料を読んでいたら「ひまわりは静止衛星なので地上約3万6000m上空にある」というような記述が出てきて、静止衛星=36000kmって決まっているんだっけ?と疑問に思ってしまったこともあり、基礎を勉強するために読んだ。
結果として、知りたいことは大体網羅されていてとても役に立った。自分の興味関心にムラがあることもあり、すべてを面白く読んだわけでは無く、つまみ読みな感じだったが、知りたいところの穴がどんどん埋まっていくようで心地いい読書だった。


まず衛星軌道の高度と軌道経路については以下の通り。静止軌道の高度は遠心力と引力の釣り合うところで決まる。

  • 静止衛星は、赤道上高度36000km(=地球3個分)
  • 極軌道衛星は、高度900km前後が多い。(北極と南極を結ぶ周回)
  • 準天頂衛星は、高度32000〜40000km(みちびきの場合。8の字軌道)*1
  • 国際宇宙ステーションISSは、高度400km。
  • いずれも衛星の軌道はケプラーの法則で決まる。
  • 運用中の静止衛星はかなりの密度になり、平均すると260km(東京〜浜松間)に一つの衛星が飛んでいる計算。


衛星による通信について。

  • 静止衛星なら24時間通信可能だが、低軌道の衛星の場合、地上局と直接通信できるのは1日のうち10分程度×5〜6回。
  • 通信時間拡大に有効なのがデータ中継衛星(静止衛星)で、常に地上局が見える場所に位置して他の衛星との中継を行なうことで、通信時間は10時間以上になる。
  • GPSによる測位は、4機以上のGPS衛星を受信できないと精度の高い位置の計算ができない。
  • 準天頂衛星「みちびき」が見えていれば、あと3つ見えればいいことになる。


その他、打ち上げについての話が面白かった。

  • 静止衛星は東向きに、極軌道衛星は南向きに打ち上げる。
  • 自転速度が効率に利用できるので赤道に近いほど、打ち上げ場所として有利。
  • ケネディ宇宙センター(29度)と種子島宇宙センター(30度)は、ほぼ同緯度。
  • 極軌道衛星を目標軌道に確実に入れるための打ち上げ可能な時間帯(ロンチウィンドウ)は1日2回10分程度。
  • 静止軌道衛星のロンチウィンドウは1時間程度。地上との相対的な位置関係が変わらないのに時間が限られるのは、打ち上げ後に太陽電池で電力を確保する必要があるため。
  • 探査機など訪問先が決まっている場合ロンチウィンドウは秒単位。


その他メモ

  • 冗長化と軽量化という矛盾する課題のバランスが重要(p166)
  • 人工衛星の計算機は放射線による異常動作対策として、複数の計算機による多数決で結果を決める(p168)
    • エヴァンゲリオンのMAGIや、コンピュータ将棋の「あから2010」と同じような合議制と知り胸熱。
  • とはいえ、人工衛星につまれている計算機は実績と信頼性重視のため、古いものが用いられる。「だいち」で使われたのは初代プレイステーション程度の性能。(p186)
  • デブリ化を避けるため、衛星の燃料補給や捕獲回収などの軌道上精密作業の実験を行ったのが「きく7号」(p172、194)


さて、この本の著者はNEC人工衛星」プロジェクトチームで、本の中では、最新成果である、2012年度打ち上げ予定の「ASNARO(あすなろ)」についての記述が多い。あすなろは光学望遠鏡を搭載した地球観測衛星で、目標とする地上分解能は50cm級とのこと。震災により当初より一年延期して、そろそろ打ち上げ時期のはずなのだが、調べてもそれがいつなのかよく分からなかった。人工衛星の打ち上げは、もしかしたらギリギリまで秘密にされるのだろうか。

政府は日本独自の観測衛星システムの整備を急ぐ。経済産業省がNECに委託している小型人工衛星「ASNARO(アスナロ)」の開発を進め、2012年末から13年3月までに打ち上げる。観測衛星「だいち」がトラブルにより5月に運用を停止して以降、現在まで日本自前の観測衛星システムは機能していない。東日本大震災の被災地復興にも衛星画像は必要なため、海外企業からの画像購入に頼っている現状を早期に打開する。


なお、最近もまた、宇宙ゴミの話題が出ているが、本の中でも「美しい軌道空間を未来に引き継ぐ責任がある」という固い決意を持って、この課題への取り組みにページが割かれていた。いわゆるケスラーシンドロームデブリ同士の衝突によって加速度的にデブリが増える)がどの程度現実的なものかは分からないが、よく目にするスペースデブリの分布イメージ図を見ると、感覚的に理解できて怖い。何とか「美しい軌道空間」を維持できることを願う。

地球の周りを飛び回る「宇宙ごみ」が国際宇宙ステーション(ISS)に衝突する恐れのある事態が相次いでいる。人類が生んだ厄介者は増加の一途で、宇宙開発のリスクを高めている。今年は日本人初のISS船長を務める若田光一さん(49)が出発するが、ごみ問題の解決策は見つかっていない。


今回、以前読んだイカロスやはやぶさはもちろん、色々な人工衛星が登場して楽しかったので、次はいよいよこれを読んでみようかと思っています。松浦晋也さんが監修されていることを知り、なおのこと読みたくなりました!

現代萌衛星図鑑

現代萌衛星図鑑

参考(過去日記)

 ⇒イカロス関連も少し知識がついてきたので読み返してみたい。いや、まだ「はやぶさ」関連書籍を読んでいないことに気付く…

 ⇒プラネテスは面白かったな。宇宙に興味の出てきた今だからこそ見直したい。アニメも結局見てないし…。

*1:実は、準天頂衛星の軌道について、本ではしっかり取り上げていなかったのですが、Wikipediaの説明に分かりやすいアニメーションがあり理解出来ました。⇒Wikipedia:準天頂衛星