Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

読書人生を変えた一冊と再会〜鳴沢真也『ぼくが宇宙人をさがす理由』

ぼくが宇宙人をさがす理由

ぼくが宇宙人をさがす理由

本は、その人の一生をかえてしまうかもしれない、大きなエネルギーを持っています。きみもそんなすてきな本にであえることを願っています。

そう、あとがきに書かれているように、本との出会いがその後の人生を決めることもあります。
いや、人生と言うのは大袈裟だとしても、その後の読書人生を変える一冊、映画人生を変える一作、ゲーム人生を変えるゲームがあると思います。好きなことを続ける原動力というのは、結局「それ」に出会えるかどうかにかかってくるんじゃないかと思うのです。それと気づかなくても、心の深いところで自分を支えている一冊があるかもしれません。

地球外知的生命体探査(ちきゅうがいちてきせいめいたいたんさ、Search for Extra-Terrestrial Intelligence)とは、地球外知的生命体による宇宙文明の存在を検知しようというプロジェクトの総称。頭文字を取って「SETI(セティ、セチ)」と称される。アクティブSETI(能動的SETI)に対して、パッシブ(受動的)SETIとも呼ばれる。現在世界では多くのSETIプロジェクトが進行している。

この本は、地球外知的生命を電波で探るSETIを扱いながらも、SETI自体にはそれほど深入りせず、作者の鳴沢真也さんの人生を中心に描かれますが、その中で2冊の本が登場します。
4歳のときにアポロ11号の月着陸に成功し、小5のときにNASAの探査機バイキングが火星に着陸し、それらの映像をテレビで見て「宇宙心」をすくすくと育てていった少年時代。鳴沢さんを宇宙少年にした原点は、幼児期に何度も母親に読んでもらった雑誌『キンダーブック』(1966年7月号「つきりょこう」)でした。
その後、宇宙への気持ちが膨らむ中、足の骨折を機会に中2から学校に行かないようになり、家に引きこもってしまいます。通学しないまま宇宙を夢見て通信制の高校で受験資格を得て大学受験に臨むも失敗し、一年の留年を経て何とか福島大学に入り、理科教師を経て、晴れて、あこがれの宇宙の仕事に就くことができます。兵庫県佐用町の西はりま天文台の職員です。その辛い時代を支え、そして、その後、SETIの中心メンバーとなるのを後押ししたのは、中学時代に読んだ一冊の本、カール・セーガン『COSMOS』だったのです。

Cosmos 上

Cosmos 上

Cosmos 下

Cosmos 下


実は自分もこの本を中学3年生のときに読んでとても感動し、それだけでなく、地球人としての自分という感覚にグラグラ来たことを、これを読んで思い出しました。当然、 ジョディ・フォスター主演の映画『コンタクト』も見ました。
今も、こうして宇宙やその他科学を扱う本を読み続けているのは、やはり、この『COSMOS』があったからかもしれません。自分は飽きっぽい性格で、一つのジャンルのことを固定して追い続けることをしなかったこともあり、結局、その方面に進むことはありませんでしたが、読書人生を決めた一冊と言うことはできるかもしれません。実際、この本の中にも何度も書名が出てきますが、SETIを熱く語る鳴沢さんの後ろにカール・セーガンが見え隠れして、その部分に自分はグッときました。
鳴沢さんが「宇宙人をさがす理由」は、「ぼくは、特別な存在なのだろうか?」という自分への探求心と、「多くの人たちが、自分たちの星、地球を見つめ直すきっかけになってほしい」という自分以外にあてたメッセージにあります。それらは、やはり『COSMOS』のど真ん中にあったテーマだったように思います。これをきっかけに四半世紀を遡って、またあの感動に触れようか、それとも思い出はしまっておこうか、悩ましい所です。
あ、DVDもあるのか…。

Cosmos (Collector’s Edition) [DVD] [Import]

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参考

自分の文章ながら、『ぼくが宇宙人をさがす理由』がどんな本なのかはあまり伝わってない気がします(笑)。この本の概観がもっと分かりやすい書評が、作家の朱野帰子さんによって書かれてますので、むしろこちらを是非!

なお、表紙と中のイラストも含めた装丁は、ここ最近の中で一番好きです。是非手にとってみてください。