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好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

「自分事」として読めるコーチング小説〜播摩早苗『リーダーはじめてものがたり』

リーダーはじめてものがたり

リーダーはじめてものがたり

自分は、「こうすれば変われる」というタイプの自己啓発本の類があまり好きではない。
熱心に読んでいた時期もあったが、ここ数年は、

  • 精神高揚感が長続きしないであろうことが、読んでいる途中から透けて見えてしまう
  • そのことで、どんどん自分を好きになれない気持ちが湧いてきてしまう

と、精神的な悪影響が大きいので遠ざけるようにしてる。


コーチングの本もいくつか読んだことがあった。
コーチングは、自分が変わることよりも、自分を認めることに重きを置くので、とっつきやすい。
しかし、「強みを生かす」みたいな物言いは、実務に落とし込むとやはり理想論に見えてしまい、やはり途中から読むのが嫌になってしまうのだった。


さて、そんな自分だが、3月のビブリオバトルでこの本のことを知り、ちょうど5月から職場環境が少し変わることもあるので、(不得意分野の本だからこそ)いいきっかけだと思って実際に読んでみた。
まず、この本の嫌いな部分は、この種の本だから当然とはいえ、短期間で成長し成功する内容となっている部分と、主人公がモテること(笑)。
ただ、それ以外の本筋の部分は、純粋に小説として面白く読めたし、それだけでなく、(他人事ではなく)「自分事」として、周りの人や仕事上で起きたこれまでの出来事と重ねあわせて読むことができた。
社内最年少のチーム長となった主人公は、若手、自信家、女性、年長者…と5人のメンバーを率いることになるが、それぞれの人間がよく描かれていて、あてはまる人を社内で思い浮かべることができたということもある。また、仕事量として負荷が高い状況を設定し、その中でいかに工夫を凝らすかが書かれているのも、現実的で良かった。
理論から入るのではなく、困難があってそれが必要となった場面ではじめて、メンター的存在である「おっさん」からアドバイスをもらうという構成も、読む側としては受け入れやすい。


会社として考えた場合、何よりも成果が求められるが、成果部分、そしてその過程は職種による差があり、まとめてものを言うことは難しい。しかし、その土台として、皆が積極的に働けるような職場環境、人間関係が必要であることは共通している。ギスギスした職場が生まれるのは、リーダーが原因であることも多いが、決して「リーダーだけ」の問題ではなく、チームのメンバー全体の問題でもあるという意味では、職場環境を改善したい人全員にオススメ出来る本。
この本のテーマである「承認力」をつけるために、「おっさん」からは、挨拶から始まり、観察や声かけを最初のステップとして奨められるが、まずは、そのスタート地点からクリアして、明るく仕事をしていきたい。

喜ばすことなんか考えなくてええねん。
あるがままを言葉にして伝えるだけで「存在の承認」になるんや。
〜おっさんの訓え(7)