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more active,more free〜椎木一夫『一生食いっぱぐれないためのエンジニア仕事術』

一生食いっぱぐれないための エンジニアの仕事術 (光文社新書)

一生食いっぱぐれないための エンジニアの仕事術 (光文社新書)

プロのエンジニアになるためのヒントが満載!
エンジニアは、世の中の役にたつ新しい技術や製品を開発する発明家であり、論理的な思考を地道に積み重ねる思索家であり、新しい価値観や市場を生みだす開拓者であり、自分がつくったモノに対して責任を負う最高責任者です。
本書は、エンジニアを目指している学生、あるいは入社して数年目のエンジニアに向けて、どのようにしてエンジニアの基礎をつくるかということから始めて、エンジニアがプロとして仕事にどう向き合うか、そのヒントをまとめてみました。ぜひ参考にしてもらいたいと思います。

著者は日立製作所中央研究所から、現在、慶應義塾大学理工学部名誉教授になっている方。
目次は以下の通りで、まさにエンジニアという職業に特化した内容になっている。

  • 序章 エンジニアほどやりがいのある仕事はない
  • 第1章 エンジニアほど基礎が大事な仕事はない
  • 第2章 エンジニアほどプロ意識の必要な仕事はない
  • 第3章 エンジニアほど日々レベルアップの必要な仕事はない
  • 第4章 エンジニアほど想像力と創造力の必要な仕事はない
  • おわりに

序章で、エンジニアとは「ADRのプロセスを実践する者」と説明している。
東日本大震災において、高さおよそ13mの大津波におそわれながらも、安全に冷温停止することができた東北電力女川原発。この原発が無事だったのは、貞観津波に耐えられるような立地を解析(Analyze)し、大津波にも耐えられるという目的に沿って原発を設計(Design)し、それを実現(Realize)することに力を果たした一人のエンジニアがいたからだという例が挙げられている。


その後の章では、ADRそれぞれの実践に必要なアドバイスが挙げられるが、「まずはあいさつから始めよう」「会社の行事には積極的に参加しよう」などというものをはじめとして、日常的に意識して積み上げられるヒントがバラバラと紹介される。こういったアドバイスは単体で抜き出すと、むしろ「だから何?」的な冷たい反応を引き起こさせる基本的過ぎるものだが、著者の日立製作所時代の具体的な経験談や、偉人の逸話が巧みで、かなり納得度が高く、その意見を素直に聞くことができた。

自分の思うことが相手に正しく伝わるよう工夫しよう(p102)

  • 特に重要な内容は「口頭だけでなくメモでも伝える」「時間をおいて違う言い方で同じ内容を伝える」(懇親旅行のアンケートから学んだこと)
  • ⇒まさにその通りで、認識のすれ違いによるミスは、なかなか無くならない。特に、時間差で同じ内容を伝える、ということは、これまであまり意識していなかった内容。

「五分前集合」を励行しよう(p118)

  • 出席者が10人の場合、1人でも遅刻して、開始が10分遅れたとすると、残り9人分の時間、90分を無駄にしたことになる。
  • ⇒自分の会社は、5分、10分の遅刻は当たり前の世界になってしまっており自分もご多分に漏れない。一人の遅刻が、大勢の参加者に波及して、膨大な時間的損失を生むことを意識したい。
  • ⇒なお、個々が他者のせいだと言い訳をつくって遅刻しているのが原因である。(今読んでいる本の言い方でいえば、箱の中に入っている)

長期的な課題はいつも目に入るようにしておこう(p125)

  • 日々の仕事を一生懸命やればやるほど、長期的な目標が達成できなくなる
  • ⇒これもその通り。自分自身、ここ数年、能力的向上がストップしている気がする。意識するだけでなく、書き出す必要がある。一方で、長期目標をもとに逆算して短期の目標を設定して行く(p153)というのももっともで、これは観念してすぐに取り組もう。

パスツール象限の仕事こそがイノベーションをもたらす(p217)

  • イノベーションについて考える為に、ストークスモデルというものを紹介している。エジソンは、自然科学の理解度は低いが、徹底的な試行錯誤で発明を生み出していたため、モデル内でも、やや不本意な位置づけとされており、当然、エンジニアは自然法則の理解度が高く、応用性・実用性の考察深度が高い「パスツール象限」での成果を求められる。


その他、薀蓄部分も、毎度出てくるスペースシャトルのチャレンジャー号の事故の話やウォークマンの発明、また、日本語ワープロ仮名漢字変換方式の発明(それ以前は活字を探し出して一文字ずつ打ち込んでいく方式:想像がつかないが)など、色々な分野に渡っており読み物としても面白かった。
紹介文などを見ると、新入社員に読ませる本、という書き方だし、実際、社会に出ている人は知識としてすでに知っているものばかりかもしれないが、働いてきたからこそ分かる部分もあり、特に就業年数を問わず(エンジニアという種類の職業に就く人には)オススメできる。
自分としても、面白いで済ませてしまっては、読み進めたときの自分にも申し訳ない。我が身を振り返り、出来ないことを一つでも実践して、前に進んでいきたい。つまり、この本で書かれているようにless activeではless freeをしか手に入れることができないのだから、少しでもactiveに生きていきたい。