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好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

ハーモニーから乗り鉄まで〜藤川大祐『教科書を飛び出した数学』

教科書を飛び出した数学

教科書を飛び出した数学

ときどき興味を持って手に取る数学本。思えば中学校のときは数学が得意科目で、それが自分を理系の道に進ませる大きな要因だったように思う。逆に、周りを見ていると、文系の道を選んだ人には数学が苦手だった人が少なくない。そういう意味で、数学全般に興味を持つフックとなる、このようなタイプの本が多く求められているのだと思うし、数学嫌いを減らすことは社会全般に対しても、良いことのように思う。


まえがきに本の成り立ちが説明されている。
千葉大学教育学部教授の著者が、自らの「授業実践開発研究室」の中で、中学3年生を対象に行った「社会とつながる数学」。これをダイジェストで収めたのがこの本ということになる。

  1. 音律とハーモニーの数学
  2. 次元を超えるトリックアート
  3. 素数と暗号
  4. 証明の起源から3D技術まで
  5. 虚数iが電気工学で使われる理由
  6. 最長片道切符と情報工学
  7. 負けにくい戦略とゲーム理論
  8. 統計を読み解く―視聴率から犯罪まで

いずれも興味を引く内容で、8つの選択肢があれば、どれか一つはグッと引き込まれる内容があるかもしれない。自分は、1のピタゴラス音律純正律平均律の話や、虚数を使うことで三角関数をかけ算で扱えるメリットがあるという5、JRの片道切符の最長ルートを探る6なんかが面白かった。こういった授業があることで、「これって必要?」という内容が出てくる中学生辺りの学習課程では、勉強をやる意味を問い直すことができて良いと思う。
しかし、それぞれが別々の大学生(大学院生)によって作られた授業であるこれら8つをまとめて読むと、ややまとまりに欠け、読んだあとにあまり残るものがないのも事実。結局、数学の面白さは、上澄み部分の薀蓄的なところにあるのではなくて、もっと狭い穴をドリルで深く掘ったときに気がつく骨組の部分にあるような気がする。ただ、それを読むには、重い腰を上げなければいけないので、なかなか読めないのも事実。
ということで、「数学」と題された本を読む場合、薀蓄的な部分よりも、もっと数学的考え方について掘り下げた内容を自分は求めているんだなあ、と気づかされた。そろそろ一巻のみで止まっている『数学ガール』の続きを読んでみる時期かもしれない。