Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

底知れぬTOEIC愛〜ヒロ前田、 清涼院流水『不思議の国のグプタ』

DL特典付 不思議の国のグプタ―飛行機は、今日も遅れる

DL特典付 不思議の国のグプタ―飛行機は、今日も遅れる

久しぶりにTOEICを受ける機会があったので、「TOEIC小説」と言われるこの本を思い出して、購入した。
実は、初めてKindleで一冊読み切った本。ただでさえ物が届くのが早いAmazonだが、電子書籍だと、さらにそこの時間が短くできるのは便利だ。


一気に読んでしまったが、ボリュームが少なかったのがストレスなく読み終えることができた理由だったように思う。逆に、ボリュームが少ないが故に、書籍の形だったら買うのを迷っただろう。(逆に、電子書籍版の方が200円安いのも購入を後押しした理由)
価格設定とボリュームが見合っているかどうか、という部分は、自分の慣れもあるが、電子書籍では判断しにくい部分かもしれない。


さて、この本は、「TOEIC小説」と銘打たれている通り、本編部分は小説のかたちをとっているが、本編と同じくらいのボリュームの注釈がついているのが特徴的。ちなみに両方とも基本的に日本語で書かれているので、英語に不慣れでも全く心配ない。
小説パートで主人公グプタが戸惑う通常世界とのずれ(例えば、副題にある通り、飛行機が常に送れる)について、小説の外から、TOEIC的な視点からすればよくあることとツッコミを入れる形になる。、

主人公は世界的物流企業であるトビアスアインシュタイン社のバンクーバー本社で顧客サービス部に勤務するグプタ。彼は自分のいる世界に違和感を覚え始める。例えば「すべての電話番号に“555”が含まれる」「図書館は、いつも閉まっている」「老人と子どもが、いない」「アルコールとタバコが、存在しない」「病院は存在するが、治療で利用する人は、いない」「警察が存在しない」といったことだ。グプタが感じた、この世界の不思議には、どんな秘密が隠されているのか……。


このように一言でいえば「TOEICあるある」という「出落ち」的な内容で、ひねりはない。特に、本書内で言われるようなTOEICerの人たちからすれば、当たり前のことばかりなのかもしれないが、自分としては、全く知らなかったことがほとんどで、楽しんで読めた。特に上に引用したような、TOEIC的世界観だけでなく、ナレーターには異なるアクセントを持った「レギュラー」4人と交代要員がいるという話や、1回のテストに出題される200問のうち、約4割は蚊懇意出題されたことのある問題であるという話など試験の仕組みについても興味深かった。


また、この本にはおまけの特典ダウンロードコンテンツがついていて、その中の、著者2人の対談が良かった。一番面白かったのは、むしろこちらの裏話かもしれない。特に、点数というのとは無関係に、TOEICという試験を愛してしまった人たちがいるということを知ることができて驚いた。
清涼院流水は、かなり昔に一冊読んだか読まないか程度(じゃんけんのやつ)で、今回がほぼ初めて。TOEICマニアだけあって、自著を自ら英語版でも出しているとのこと。癖のある本を書く人だということは知っていたが、ちゃんと小説も読んでみたくなった。


なお、世界観(お約束)を共有していれば、若干の点数アップが見込めるという点では、それ抜きで学力を測定するべきTOEICというテストの問題点が示されているともいえるのかもしれない。
これを読んだあとのテストで実際に何点取れたかというのは秘密ですが…。