Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

古さばかりが目立つ残念作〜『映画ドラえもん 新・のび太の大魔境〜ペコと5人の探検隊〜』


去年、今年の映画が『のび太の大魔境』だと知ってから、ずっと「何故今この作品のリメイクを・・・」と思っていた。限りなく期待値の低い状態で見ることで、むしろサプライズを呼び込むかも、という僅かな可能性に懸けたが、結局、今回観たあともその疑問は晴れなかった。


映画冒頭で、スネ夫ジャイアンが熱弁をふるうように、地球上には、誰も訪れたことのないような秘境は、もはや存在しない。そもそも、大魔境を発見する過程で、ドラえもんが打ち上げた自家用衛星によって何千枚も印刷した航空写真も、もはやグーグルマップ、グーグルアースでPC上で同様のことができる現在では、時代遅れの感じが拭えない。
また、旧作が上映された1982年は、1977-1985年に放映されていた川口浩探検隊が流行っていた時代で、「秘境」的なものに、国民的な関心があった。それに対して今は、芸能人が「世界の果てまでイッテ」くるバラエティ番組が頻繁に放送される時代で、「誰も見たことのない魔境を探検したい!」というジャイアンの希望自体が理解しにくい。インターネット全盛の世の中で、現地に行かなくても分かるからと海外旅行に行く若者が減った、という言われ方をよくするが、まさにその通りだと思う。
ちょうど予告編では、東宝シンデレラが、のび太たちと同じような探検家コスプレで「まだ誰も見たことのない大自然」と、GWから上映される映画『ネイチャー』を紹介していたが、カメラの映像にこだわり抜いた大自然ドキュメントはいかにも現代的。こういった映画と比較すると、『のび太の大魔境』の古臭さは、どうしても際立ってしまう。


それならば、何かのアレンジを加えてくるのが当然だろうと思っていたら、結構、原作に忠実で、ペロの正体が判明する前半部は退屈過ぎてかなりの部分、寝てしまった。特に、秘境の描き方が東京ディズニーランドがイメージする秘境(ジャングル・クルーズなど)と全く同じで、原住民の描き方も、21世紀にこれかよ、と思ってしまった。


いざ、悪い大臣からバウワンコ王国を取り戻す、という本編が始まってからも、

  • ストーリーの展開がオーソドックス過ぎて盛り上がりに欠ける
  • ひみつ道具がない、という映画独特の設定が裏目に出て、ジャッキー・チェン級のアクションを強いられる登場人物(特にジャイアン)が嘘くさく感じる
  • ラスボスがブルドッグなのが災いして、ギャグのない「かいけつゾロリ」にしか見えない
  • そのため、「古代兵器」による攻撃も、どの程度まで怖がっていいのかよくわからない

と、物語に乗れない要素が多数。最後まで諦めなかったのび太が、剣術の達人であるサベール隊長に競り勝つシーンなども、ご都合主義な展開としか見えない。
勿論、原作を知っていることもあって、よう太(9歳)は後半部で寝てしまったという。


ということで、よう太の評価は「ひみつ道具ミュージアム」の半分くらいの面白さだね、とのこと。そもそも、よう太は、元の話を知っているリメイクはあまり好みでは無いようだが、それでも『鉄人兵団』は面白かった、というから、今回のアレンジの仕方に問題があったのかもしれない。
いや、そうではなく、やはり「ひみつ道具ミュージアム」で、ドラえもん映画のポテンシャルを知ってしまったあとでは、それを全く活かせていない今回の作品はやはり低い評価になるのは仕方がないと思う。今回の映画を観て、改めて、平成ドラえもんは、もう少し笑いの要素を多めにして、何でもありの展開を重視したクレヨンしんちゃん寄りの内容の方が面白くなるのではないかと思った。来年はよう太も高学年になるので、そろそろ卒業な気もするが、完全新作っぽい来年の劇場版には期待したい。


ただ、エンドロールで流れるKis-My-Ft2による主題歌「光のシグナル」は、ドラえもんの世界に合っていてとても良かった。