- 作者: 小野不由美,山田章博
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2012/06/27
- メディア: 文庫
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その後、何人もの人に読んだ方がいいと奨められ、読め読めポイントが100貯まったので、ついに再読。
「お捜し申し上げました」──女子高生の陽子の許に、ケイキと名乗る男が現れ、跪く。そして海を潜り抜け、地図にない異界へと連れ去った。男とはぐれ一人彷徨(さまよ)う陽子は、出会う者に裏切られ、異形(いぎょう)の獣には襲われる。なぜ異邦(ここ)へ来たのか、戦わねばならないのか。怒濤(どとう)のごとく押し寄せる苦難を前に、故国へ帰還を誓う少女の「生」への執着が迸(ほとばし)る。シリーズ本編となる衝撃の第一作。
確か、主人公が異次元にある国の王になる話でしょ、と気軽に読み始めたが、ページをめくってもめくっても状況が悪化の一途をたどり、これ以上ない鬱展開で上巻は終わる。
放課後の職員室で、突然、妖魔に襲われ、何が何だか分からないまま、「あちら」の世界に渡る。混乱の中、自分を連れ出したケイキともはなればなれとなり、妖魔から逃げて斬って逃げまくる。
セーラー服を着ていると目立ってしょうがないということで盗みに入った民家で、優しくしてくれたおばさん・達姐に騙され、宿屋で知り合った日本から来たという高知出身のおじいさん(松山誠三)に財布を盗まれ、金髪の女と喋るオウムに右手を刺され、あらゆる災いが振りかかるだけでなく、誰も信じることのできなくなった陽子。
ラスト近くの陽子の独白が生々しい。
…こんなところで死ぬのか。
そう思うと、すこし笑えた。
クラスメイトの中でも、野垂れ死にするのは陽子だけだろう。
p262
そして、その体力の限界の中で、陽子がいなくなった後の「元いた世界」=「帰るべき場所と信じていた世界」の映像を見せつけられる。それによって暴かれてしまった、自分をめぐる白々しい人間関係が、野垂れ死に寸前の陽子の追い打ちをかける。
…クラスメイトは、誰も陽子のことを友だちとは思っていなかった。
…先生も、今回の失踪を、家出だと決めつけているようだった。
…最後の頼みの綱の母親も、先生の話を聞いて、「いい子の顔」に騙されていたと思うようになった。
待っている人などいないのに。陽子のものはなにひとつなく、人は陽子を理解しない。だます、裏切る。それにかけてはこちらもあちらもなんの差異もない。
(略)
...もういい。
もう、どうでもいいことだ。じきにぜんぶが終わるのだから。
『月の影 影の海(下)に続く
これはひどい!
結局、上巻では、達姐と高知のおじいちゃんが十二国全体の世界のイメージと、今いる巧国と隣の慶国の話を語ってくれるものの、この世界のルール(麒麟など)については、全く不明のまま終わるというのも予想外だった。
おそらく上下巻同時に発売されたんだよなと思って、奥付*1を見ると、
ということで、この状態で一ヶ月待たされるのは地獄の苦しみだったろうな。
さっさと下巻を読みます。
*1:今回、図書館で借りて、講談社X文庫ホワイトハート版を読んでいます。表紙は同じ山田章博さんですが、デザインが違います。どちらもいいですね。