Yondaful Days!

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東京再発見ものとしてのシリーズ化に期待〜蒼月海里『幽落町おばけ駄菓子屋』

幽落町おばけ駄菓子屋 (角川ホラー文庫)

幽落町おばけ駄菓子屋 (角川ホラー文庫)

先日(8/17)読んだ日経新聞の日曜読書欄のコラム(「活字の海で」)では、9月から始まる「新潮文庫nex」と、11月からリニューアル創刊される集英社ダッシュエックス文庫」の2つのレーベルを取り上げ、この流れを次のように解説しています。

大ヒットした『ビブリア古書堂の事件手帖』に代表される、キャライラストやシリーズ化を特徴としたこうした小説は「キャラ文芸」と呼ばれ、ライトノベルと一般文芸の中間に位置づけられる。
(略)ラノベ読者を文藝に取りこもうとするのが新潮社なら、集英社は漫画からラノベへの流れを作ろうとしている。

いずれも文庫全体の2割ほどを占める一大市場に成長したラノベが踊り場に入りつつあることを踏まえた対応のようです。


そうか、あれよあれよという間に書店の文庫棚を埋め尽くしている沢山のシリーズは「キャラ文芸」というのだな…。『ビブリア古書堂の事件手帖』シリーズも未読なので、そろそろ少し読んでみたい…。
と思っていたところに、以前ビブリオバトルでのプレゼンがとても印象的だった蒼月海里さんの新刊が、まさに「キャラ文芸」的なスタイルで角川ホラー文庫から出るということで、早速買ってみました。

大学入学と同時にひとり暮らしを始めることになった僕。有楽町の物件に入居するはずが、着いた先はなぜか「幽落町」……。そこは妖怪たちが跋扈し、行き場を見失った幽霊がさまようトンデモナイ町だった。
Amazonあらすじ)

主人公は御城彼方(みじょうかなた)。不動産屋のふりをした猫目ジローに騙されるようにして連れてこられた幽落町でしたが、水無月堂という駄菓子屋の主人・水脈(みお)の魅力にも惹きつけられ、1年間だけ住むことになります。そこで彼方は、「行き場を失った幽霊」を成仏させるために、水脈の手助けをすることになる・・・というのが基本的な構造です。
物語は3編(+おまけ)からなりますが、いずれも「幽霊」の遺体発見・死因?解明・居場所探索などが、東京の町に絡められてストーリーが展開するのが特徴です。
特に自分が好きなのは、僅かなヒントをたよりに、東京都内のある場所を推理するという、第一話「さくらのわすれもの」、第三話「かくれんぼしましょう」です。特に第三話の「謎の答え」となる場所は、これまで何度も近くまで行ったことのあるところですが、あまり意識をしたことがない場所で、「あの場所に、そんなものが…」と素直に驚きました。(ネタバレになるので伏せます。)また、その場所の持つ雰囲気がストーリーの盛り上がりとシンクロして話としても綺麗にまとまっています。


先日、少しだけトライした「東京上級ゲーム」という(テレビ番組と連動した)iPhoneアプリが、こういった謎解きと趣きが似ており、アプリで出される謎を解きながら、都内の名所を「再発見」して行く内容でした。
(このゲームで、これまで世田谷線の駅名としてしか意識してこなかった豪徳寺が招き猫に縁のあるお寺であることを知りました。)


また、漫画では、『ちづかマップ』という作品が、古地図をベースに東京を再発見できる内容でした。自分は、凌雲閣(浅草十二階)を扱った第三話は、素朴ですが大好きな話です。凌雲閣の模型を見るだけのために江戸東京博物館に行きたいです。

ちづかマップ

ちづかマップ


ということで、個人的な希望(特に東京在住者としての希望)としては、歴史に触れながら東京名所を推理するタイプのシリーズものとなるといいなあと思っています。場所は東京タワー希望(あと、凌雲閣w)。
12月に発売となる第二巻ではどのようになっているでしょうか。とても楽しみです。


ところで、六七質さんのイラストはとても良いと思いますが、「小生…」とか「…ですぜ」などと言う猫目ジローのイマドキ風のファッションだけは違和感ありです。袴姿で、常に狐のお面を頭につけている感じの人物として頭の中ではイメージしてました。顔は、吉田秋生の描くキツネ目の少し脇っぽい男性キャラ…。
こんな感じ(表紙の人)↓

参考(過去日記)

⇒よく考えると、これも「キャラ文芸」ですね。

⇒いわゆるラノベはこれしか読んだことないかも。もっと読みたいのですが…。