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法条遥『リライト』『リビジョン』『リアクト』〜タイムパラドックスマニアにオススメのシリーズ

リライト (ハヤカワ文庫JA)

リライト (ハヤカワ文庫JA)

リビジョン (ハヤカワ文庫JA)

リビジョン (ハヤカワ文庫JA)

リアクト (ハヤカワ文庫JA)

リアクト (ハヤカワ文庫JA)

リライブ (ハヤカワ文庫JA)

リライブ (ハヤカワ文庫JA)

全4作中3作を読み終えたので普通なら「あと一冊で終わりだ!ワクワク」となる部分だが、今回はそんな気分になれない。RPGで言うと、やっとある程度の全体マップを把握できて、今からやっと本格的に冒険が始まるという感じだ。
読みにくいと思っていた1巻目『リライト』がどれほど分かりやすい話だったか…3作目『リアクト』読後の今そう感じるのは、自分の「タイムパラドックスもの読者としてのレベル」が上がっているからなのかもしれない。4作目『リライブ』を読む前に、1作目からネタバレなしであらすじを復習してみる。


Amazonによれば、1作目『リライト』のあらすじは以下の通り。(個人的な感覚では、かなり踏み込んで書いてしまっているあらすじ)

過去は変わらないはずだった―1992年夏、未来から来たという保彦と出会った中学2年の美雪は、旧校舎崩壊事故から彼を救うため10年後へ跳んだ。 2002年夏、作家となった美雪はその経験を元に小説を上梓する。彼と過ごした夏、時を超える薬、突然の別れ…しかしタイムリープ当日になっても10年前 の自分は現れない。不審に思い調べるなかで、美雪は記憶と現実の違いに気づき…SF史上最悪のパラドックスを描く第1作。

『リライト』のオチの部分は、自分はすぐに咀嚼できなかったが、このあとの2作、特に『リアクト』で何度も取り上げられるので、今ではある程度明確になった。この本は1冊目ということもあり単体で読んでも面白いはずの本なので、未読の方は、まずこの一冊を読み、クライマックスの謎解きにすぐに合点がいくかどうか聞かせて欲しい。


2作目『リビジョン』のあらすじは以下の通り。

時間にだって、抗ってみせる―1992年秋、家の女性に代々受け継がれる手鏡を使って、未来を視ることができる千秋霞。彼女はある日、生まれたばかりのひ とり息子ヤスヒコが一週間後に亡くなるビジョンを視てしまう。霞は手鏡の能力を利用して、息子が死ぬという「未来」の改竄に挑むが…我が子のために手段を 選ばない母親の狂気と、絶対的な時間のルールが交錯する。『リライト』から数カ月後の未来を揺るがす第2作。

序盤は『リライト』との絡みはなく、独立した物語のようになっているが、中盤以降、『リライト』のクライマックスである「旧校舎崩壊事故」に関わり合うようになり、終盤は、現在・過去・未来の登場人物の平行世界が錯綜するハイレベルなタイムパラドックスものが展開される。
改めて振り返ると、あらすじに書かれている通り「我が子のために手段を 選ばない母親の狂気」こそが終盤以降、『リアクト』まで継続する難解な平行世界を作り出している。ここは、「一冊の本」のために話がどんどん難解になる『リライト』『リアクト』よりも納得が行きやすい。
ただ、途中から、設定の全てについていくのを諦めた。平行世界の自分はこの巻で脱落して、読む本をもっと易しい本に切り替えているはずだ…。


3作目『リアクト』のあらすじは以下の通り。

1992年、N中学校2年4組の美雪は、未来からきたという保彦と出会う。ある小説を探してひと夏を過ごした彼は、300年後へ帰ったはずだった。そして 1992年秋、西暦3000年からきたタイムパトロールの少女ホタルは、過去が見える能力者、坂口霞との遭遇をきっかけに岡部蛍の小説『リライト』に疑問 を抱く。作中で2年4組の同級会が開かれたという2002年に向かったホタルは、恐るべき夏の真実に近づいてゆく。シリーズ第3弾。

より第一作『リライト』と密接に関連する内容で、『リビジョン』の設定や登場人物も出てくる。既にあらすじで1992年、2002年、300年後、3000年という4つの時点が出てきて複雑度を増す。
『リライト』自体が、1冊の本をめぐって300年後から少年(保彦)が現れる、という「本」をめぐる物語。そのときのポイントは、「現在」において、その本が正しく書かれなければ、保彦が「未来」から「現在」を訪れるきっかけ自体を失ってしまう、ということ。これがシリーズを一貫したポイントで、まさに『リアクト』では、「その本」=『リライト』が書かれる過程がストーリーの中心として扱われる。
と、簡単に書いたが、3作目の作中で、メタ的に1作目の『リライト』が何度も登場し、登場人物がその内容に言及することで、さらに物語の難解度を増している。


ということで、あらすじだけを追っても全く理解は深まらない一方で、今ならやっと、全体を俯瞰する目を持ってここまでの3巻を読むことができそうだ。
怖いものなしの息子よう太は結構理解しながら読み進めているようだが、自分はダウン寸前。
次の最終巻では四季を模した4部作*1を綺麗に締めてくれそうで、全体の完成度をしっかり味わうためにも、読み直そうと改めて決意を固めるのでした。

*1:表紙カバーも四季になっています…。