- 作者: 田中芳樹,丹野忍
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2006/12/07
- メディア: 新書
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アニメ『アルスラーン戦記』について、海外での評価がニュース記事になっていた。
イランでいま、日本のテレビアニメ『アルスラーン戦記』が若者たちのあいだでひそかな人気となっている。田中芳樹氏原作のファンタジー小説をもとにした作品で、舞台は古代イランを想定したパルス王国。敗軍の将となり、国を負われた14才の無力な王太子アルスラーンが、仲間とともに数々の死地を乗り越え、敵国ルシタニアによって陥落した王都エクバターナの奪還を目指す壮大な物語だ。土地、人名、その他の多くの用語にイランの言葉であるペルシャ語が盛り込まれ、いにしえの英雄叙事詩を彷彿とさせる。(大村一朗)
実際、小説裏表紙でも「中世ペルシアによく似た異世界」という紹介文があり、田中芳樹もさまざまな場面で口にしているが、荒川弘版の漫画1巻の巻末対談を見ると、ペルシャになったのは『グイン・サーガ』が原因らしい。
『銀河英雄伝説』という作品が望外に多くの方に読んでいただけたことで、「スペースオペラは書き尽くしたな」という感じがあって、そして同時にチャンバラものを書きたいと思ったんですよね。とはいえ、日本のチャンバラは自信がないし、西洋ものだともう栗本薫さんの『グイン・サーガ』がある。違うところで勝負しなければと思ったときに不意に浮かんだのが「ペルシャ」だったと。
実際の国ごととの対応についてはYahoo知恵袋に詳しい回答があり、シンドゥラ=インド、ミスル=エジプトなど、言われてみれば納得。
パルスは中世ペルシャをモデルにしているそうですが、他の国々(シンドゥラ、チュルク、トゥラーン、ミスル、マルヤム、ルシタニア等)はもしモデルがあるとしたらそれぞれどの国にあたるのでしょう。
実際の地図をアルスラーン戦記の地図と見比べると南のペルシャ湾と北のカスピ海に挟まれたイランは、まさにパルスで、首都テヘランは王都エクバターナ。
キャラクター名を思い起こさせるような地名も多い。エスファハーンとか…
- 作者: 田中芳樹,丹野忍
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- 発売日: 2006/12/07
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- 第一章 染血の一夜(ペシャワール攻防戦)
- 第二章 黄色い下弦の月(ミスル国の政変)
- 第三章 「プラタナスの園」(バーゲ・チナール)奇譚(タハミーネ王太后とレイラ、そしてイルテリシュ)
- たまたま訪れたバダフシャーンの地で、ギーヴはタハミーネ王太后の噂を聞く
- 王太后の館に最近住み込むようになった女は、どうもケルマインに仕えていたレイラらしい
- ギーヴは懸念を伝えるが、逆に、王太后から「レイラが自分の娘かもしれない」と打ち明けられ、帰れと言われる
- ギーヴが夜に忍び込んだ館で、レイラとイルテリシュの密会を目撃(ギーヴはイルテリシュを知らない)
- ペシャワールから王都エクバターナに向かう途中で、ギーヴの噂を聞いたイスファーンはギーヴを追う
- イスファーンは、「プラタナスの園」で、王太后の侍女として働くアイーシャと出会い、話の途中でイルテリシュの「音」を聞く
- 有翼猿鬼を倒し再会したイスファーンとギーヴのもとに王太后が現れ、ギーヴがいることに腹を立てる
- イスファーンとギーヴは王太后の眼前から去り、レイラ、イルテリシュ、タハミーネの結びつきによる最悪の可能性を相談する
- 王太后の寝所で、エメラルドを過剰に嫌うレイラを見て、アイーシャが「ザーハックの眷属だ」と騒ぐ
- レイラが獣の声をあげたとき、土星(カイヴァーン)が飛び込み、イスファーン、ギーヴが続く
- さらにそこに現れたイルテリシュが、逃げるレイラをかごに乗せて空中に逃げる
- ギーヴ、イスファーンは、アイーシャを連れて王都に戻ることに。
- 第四章 暗黒神殿
- 第五章 紅い僧院(ルージ・キリセ)の惨劇
- エステル、ドン・リカルド、パリザードの3人は、王都に向かう途中、ルージ・キリセ、その頃、カルハナ王の特命でパルスに偵察に来ていたチュルクの勇将シングの小集団と出会い、闘いの末シングは自死を遂げる。
- 役人カーセムの依頼で、ルージ・キリセの囚人(ルシタニア人)と会わせられた3人は、囚人がルトルド侯爵と知る
- 最低人間であるのにもかかわらず、哀れみをかけたエステルの依頼で、牢から出ることになったルトルド侯爵はパリザードに襲い掛かる。
- ドン・リカルドによりルトルド侯爵は殺されたが、その騒ぎでエステルが右足を負傷し、杖なしでは歩けない体に。
- アルスラーンに会いたいと熱望するエステルは高熱のま、ま車に乗せ、カーセムを含めた4人と護衛兵で、一行は王都に向かう
さて、この巻の主人公は誰なのかと問われれば、そのうちの一人はイルテリシュのような気がしてくる。
これまでイルテリシュは同胞たるトゥラーン人には「親王(ジノン)」と称され、敵手たるパルス人からは「狂戦士」と呼ばれていた。そして凄惨なペシャワール攻防戦の後には、つぎのように称されることになる。
「魔将軍(ガウマータン)イルテリシュ」p45
ということで、これまで、ジムサ、クバード、トゥース、メルレイン、ジャスワント、イスファーン、ギーヴと闘ったイルテリシュは、その強さを見せつけるだけでなく、魔道士の意見は聞かずに、トゥラーンの再興に向けて突っ走ることになる。
自分は、キマイラシリーズでいう菊池、ガイバーでいうとアプトムみたいな、最初はやや劣っているが、我流でどんどん強くなるタイプのキャラクターが好きなので、当面はイルテリシュから目が離せない。
そして、ヒルメス扮するクシャフール公も上り調子。
かの有名な「これはクリリンの分!」を彷彿とさせる「いまのは、おれの分」「これはザンデの父カーラーンの分」「これがザンデの分だ!」という3振りで、下衆野郎マシニッサを倒すシーンは熱い。(p84)
第二部の始まりの頃に落ち目だったのが嘘のよう。
残念なことと言えば火星(バハーラム)、そしてエステル。
特にエステルは、ここで一生治らない怪我を足にしてしまうと、女性棋士としてアルスラーンのもとで役立つという芽がなくなってしまう。パルス国民ではなく、ルシタニア人ということも考えれば、足の怪我がもとで厄介払いということもあり得るのだ。
誓いの言葉や、その後の経緯を見る限り、エステルはアルスラーンの嫁候補としてはトップを走るので、エクバターナに到着したらそのままゴールインということなのだろうか。
なお、4章、5章の最後でアルスラーンの名言が炸裂する。
宿命などというものはなく、人生は自分の意思による選択の連続だという5章末のシーンもなかなかいいが、4章末は今後の展開を暗示させる重要な発言がある。
アルスラーンの深すぎる思いやりに感動するとともに、それがもとで命を落とすことを予感したナルサスが、自分が身代わりとなることを決意し、エラムに「おれの後をよろしくたのんだぞ」と言うシーン。(p179)
どうもナルサスは完結前に姿を消すことになりそうだ。