Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

薀蓄漫画じゃない!青春漫画の王道〜荒川弘『銀の匙』(1)〜(3)

銀の匙 Silver Spoon(1) (少年サンデーコミックス)

銀の匙 Silver Spoon(1) (少年サンデーコミックス)

銀の匙 Silver Spoon 1 (少年サンデーコミックス)

銀の匙 Silver Spoon 1 (少年サンデーコミックス)


薀蓄漫画は、あまり好きじゃない。
どんどん漫画がニッチなジャンルのスポーツや趣味に手を伸ばす中、それぞれの薀蓄は面白かったとしても、どうしても薀蓄疲れをしてしまい、こういうのが自分の読みたい漫画だったのか?と感じてしまう。
そんな気持ちから、ハガレン(『鋼の錬金術師』)を描いた荒川弘が農業高校の漫画を描いていると知ってもあまり興味を持たなかった。「農業高校ってこんな感じなんだ〜。へ〜、面白いなあ。」という感想になる自分を想像して、それだけでつまらなくなってくるのだった。


しかし、読んでみるといい意味で予想は裏切られた。
銀の匙』は、薀蓄に頼らない青春漫画だった。
主人公の八軒は、進学校から一般枠で入学したばかりの農業高校の1年生

中学の頃の八軒は
「何かにならなきゃいけない」という呪文に
ガチガチに縛られて
「どんな人間になりたいか」が
すっぽり抜けていたように思います。

と、中学時代の担任が校長先生に話すシーン(ピザ会のとき)があるが、まさに、八軒が「どんな人間になりたいか」について考えて行動する過程が描かれている漫画で、そして彼の人間的な魅力が伝わってきて読んでいて清々しい。
そう、自分が読みたいのは作品内の人間の成長であって、自分が未知の世界についての知ることにはそこまで興味がないのだろう。


2巻の鹿の解体のときも、結局、作業の過程はおじいちゃんの「セリフ」で少しフォローされるだけで、(実際に取材はしているはずだと思うが)絵としてはバッサリと省かれる。その代わり、捌きはじめるまでの八軒の心の葛藤に多くのページが使われる。
そして、馬術部に入部して最初に馬に乗るシーン。馬に乗って背を伸ばすと視野が広がるということを、見開きゴマで見せる。それは勿論、八軒の成長を比喩的に表現するだけでなく、彼のスッキリした心をこれ以上なく上手く表せているように思う。
こういったシーンからは、あくまで中心は農業高校薀蓄ではなくて、常に八軒にあるのだと分かる。
繰り返すと、サイドのキャラに焦点を当て過ぎず、常に八軒の心と行動を中心に物語が動くこの漫画を読んで、自分の読みたかったのは、こういう青春・成長漫画だったことに気が付いた。
4巻以降も楽しみ。

銀の匙 Silver Spoon 2 (少年サンデーコミックス)

銀の匙 Silver Spoon 2 (少年サンデーコミックス)

銀の匙 Silver Spoon 3 (少年サンデーコミックス)

銀の匙 Silver Spoon 3 (少年サンデーコミックス)