Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

信頼のブランド”たくさんのふしぎ”〜村上彗『家をせおって歩く』

小児科などに小冊子(絵本のある子育て)が置いてあることの多い「童話館ぶっくくらぶ」など、毎月、絵本が配本されるサービスがいくつかある。
我が家も、子どもが二人とも小学校入学前くらいの時期に、半年だか1年くらい試してみたことがあったのだが、個人的にはあまり面白くなかった。残念なことに親の気持ちは子どもに移るから、子どもたちもあまり熱中しなかったような覚えがある。


というのも、小学校入学前の自分を思い返すと、かこさとしが好きで、、純粋な絵本というよりは、細かくてごちゃごちゃしていたり、もう少し編集された雑誌っぽいものをよく読んでいたからだと思う。だから、よく名作絵本として挙げられる『100万回生きたねこ』なども読んだことが無かったし、通常の絵本の面白がり方を今でもよくわかっていない。


そこに来ると、(月刊誌のスタイルをとった)「たくさんのふしぎ」の、自分にしっくりくる感じと、その充実度はすごい。
タイトルだけで惹かれるし、いわゆる絵本作家ではない人の作品がどーんと現れたりする。こんなのが毎月届くのはとても楽しみ。
ここ最近の作品を並べても、基本的に普通の絵本はなく、写真中心の科学絵本や絵・言葉に焦点をあてたものが多い。過去に紹介した谷川俊太郎『生きる』の絵本もこのシリーズだった。

昆虫の体重測定 (月刊たくさんのふしぎ2016年4月号)家をせおって歩く (月刊たくさんのふしぎ2016年3月号)へんてこ絵日記 (月刊たくさんのふしぎ2016年2月号)トドマツ (月刊たくさんのふしぎ2016年1月号)生きる (月刊 たくさんのふしぎ 2013年 09月号)


中でも、今回紹介する『家をせおって歩く』は変わっている。
作者の村上彗さんは1988年生まれのアーティスト。
この本はタイトル通り家をせおって日本中を歩いて旅する本。表紙の家がまさにそれで、よく見ると、家の下から足が出ている。
家と言っても発泡スチロールだから持ち運べる。そして屋根があるから、雨露がしのげて、その中で(寝袋にくるまって)眠ることができる。
道路や公園に勝手に家を置くことはできないから、家を置かせてもらう土地の持ち主と交渉して、ときには建物の中にまで家を運び入れることもある。
関東から東北、北陸、近畿、九州と、歩くだけでなく、ときにはフェリーを使って全国を回る中で、見た建物や景色を家に描く。
そんな村上さんが2014年4月から2015年3月までに「家をせおって」歩いたあちこちの記録がこの本になる。最後に「家を置いたところ全集として180か所の紹介もある。


実際、その様子は目立つから、目撃者は多数いて、まとめページも作られている。


また、表紙に見られるような描線の細かい線画は、勿論村上さんの手によるもので、写真だけでなく絵もたくさんあるため、この「絵本」という形態はベストという気がする。
そして、最後に村上さんと家のペーパークラフト(切り取って組み立てる)がおまけとしてついているところもいい。
絵本としても面白いし、村上さんの活動にもとても興味がわく本だった。(HPを見ると、2016年3月現在は、小豆島で家を作っているみたい…⇒http://satoshimurakami.net/


というわけで「たくさんのふしぎ」は、我が家の子どもがもう少し小さいころであれば、定期購読をしておきたかったなあ、というシリーズ。
そうすれば、よう太ももう少し、科学好きになっていたかもしれない…。
福音館書店のHPでは小学3、4年生向けということになっていますが、本を沢山読む小学3、4年生には物足りなく感じるかもしれません。ベストは小学1年生だと思います。お子さんが小さい方は是非とも定期購読のご一考を。