レンアイ、基本のキ――好きになったらなんでもOK? (岩波ジュニア新書)
- 作者: 打越さく良
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2015/10/21
- メディア: 新書
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本を読んだきっかけは、以前、ストーカーの本を読んで、ストーカーの被害者・加害者の関係が、「恋愛関係」から一歩はみ出しただけであることを改めて思い知らされたから。そのたとえで言えば、「一歩」まで行かずに「半歩」はみ出しているのが「デートDV」で、特に年齢が低ければ低いほど、その罠に陥りやすいだろう。
自分の時代には、授業で教えられることは無かったが、義務教育(中学生時代)で教えるべき内容だろうと思ったので、基本的なことを知っておきたくて、この本を読み始めたのだった。
読んでみると、男性被害者を扱った事例がほとんどなかったり、デートDV加害者側の心理を突っ込んだものが少なかったのは残念だった。しかし、本や漫画の引用が多く、色々と本を読みたいと思わせてくれる、次に繋がる読書となった。
離婚事件やDV、セクハラの被害者の代理人を多数つとめてきた女性弁護士ということで、女性からの相談が多いのだろう。男女ともに持っている「男性優位」の固定観念を問題点として挙げているが、これは、つい先日読んだ田房永子の著作とも視点が似ている。
例えば2014年の新語・流行語大賞のトップテンにも選ばれた「壁ドン」という動作の中にある威圧的なものを感じて次のように警戒する。
私たちは無意識のうちに、男が多少の暴力をふるうことを大目に見ているのではないだろうか。怒りの表し方に(それが暴力であっても)、男女で違いがあってあたりまえ。そう、私たちは知らず知らず思い込んでいることがわかる。
(略)
「主導権=男がもつもの」になると、男の暴力も「まあよくあること」と大目にみることに、つながってしまわないだろうか。それはDV事案を多々扱ってきた私の実感だ。だから、そんな男性を「男らしい」と評価してしまうことにも疑問を持ちたい。
p64
自分も、この意見には納得できる。例えば、通常とは逆の関係、つまり女性が主導権をとることに、男性が「情けなさ」を感じる場合がある。それは場面場面で変えて行けばいいのだと思う。
主導権〜束縛〜暴力は、セットになって出てくるが、作者が繰り返すように、相手の気持ちを尊重できることが何より重要で、その感性がしっかり磨かれていないと、何が重要なのかが分からなくなってしまう。その意味では、小さい頃から相手の立場になってものごとを考える練習をさせておくと、結局、デートDVやストーカー被害に遭うリスクを減らすことができるのかもしれない。
なお、5章「デートDV対処法」は非常に実用的な内容となっており、具体的な悩みがある人は必読だ。
- 友だちから相談されたとき、どのような言葉をかければいいのか。
- 知っておくべきセックスのマナー、リスクについて
- 別れるときのマナーと、ストーカー行為について
- 実際に困っているときに、どこに相談すればいいのか、どんな法的ツールがあるのか。
ということで、もう少ししたら子どもにも読んでほしい本。
紹介されている本・漫画
- あいざわ遥『カラフル・パレット』
- 元カレと今のカレで束縛する側とされる側の両方のケースを経験する真琴
- 理由があれば暴力はOKという考え方の竹本君
- 関係を持ち竹本君に「オレのもの」と思わせてしまったことが束縛を強くしたきっかけ。
- 有川浩『阪急電車』
- 彼から暴力を受け続けるが別れることを決断できない主人公ミサ
- しかし、自分にとって大事にすべきことを見つけ、彼と別れることに。
- 門田悦子にホテルに強引に誘われた遠山竜太は、彼女を大事に思ってそれに乗じない。
- 島本理生『波打ち際の蛍』
- 恋人からの過酷なDVから自殺未遂のあとサバイブした主人公・真由。
- KANA『女の友情と筋肉』
- 女性側が凄まじい暴力をふるうギャグ漫画。お笑いになるのはリアリティがないから。
- ランディ・バンクロフト『DVにさらされる子どもたち−加害者としての親が家族機能に及ぼす影響』
- グロー・ダーレ『パパと怒り鬼−話してごらん、だれかに』
- 「やさしいパパ」が「怒り鬼」になって暴力をふるい、ママが恐怖心に怯える様子を描いた絵本
- 主人公が「王様」に手紙を書くことでパパが「怒り鬼」に向き合うきっかけになるというラスト(作者はやや不満らしい)
- 中脇初枝「べっぴんさん」(『きみはいい子』収録)
- 母親から虐待されて育ってきた「あやねちゃんママ」は自分の子どもに虐待を繰り返してしまう。
- 受け止めてくれる人が周りにきっといると思わせる話
- 西原理恵子『この世でいちばん大事な「カネ」の話』
- 「旦那の稼ぎをあてにするだけの将来は、考え直したほうがいいよ」という真実。自立が重要。