Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

グエムル動き過ぎ!〜ポン・ジュノ『グエムル-漢江の怪物-』

ソウルの中心を南北に分けて流れる雄大な河、漢江(ハンガン)。休日を、河岸でくつろいで過ごす人々が集まっていたある日、突然正体不明の巨大怪物<グエムル>が現れた!
河川敷の売店で店番をしていたカンドゥの目の前で、次々と人が襲われていく。気付いた時には遅かった!カンドゥの愛娘、中学 生のヒョンソがグエムルにさらわれたのだ!
さらに、カンドゥの父ヒボン、弟ナミル、妹ナムジュのパク一家4人は、グエムル保有するウィルスに感染していると疑われ政府に隔離されてしまう。
しかし、カンドゥは携帯電話にヒョンソからの着信を受け、家族と共に病院を脱出、漢江へと向かう。
果たして彼らはヒョンソを救えるのか?
そしてグエムルを倒すことはできるのか!?

シン・ゴジラ』を見てから、一気に興味が湧いた怪獣映画のジャンル。
既に平成ガメラは2、3をチェック済みでだったが、海外作品として、かねてより見たいと思っていた2作が『グエムル』と『クローバー・フィールド』。その『グエムル』。


まず、総括すれば、予想を裏切られまくりの映画だったと言えるかもしれない。
韓国ドラマに対して自分の持っていた先入観とは異なり、美男美女が出ない。主役のカンドゥはダメ男で、その家族もパッとしない。表紙に出ているもう一人の主役である、娘役ヒョンソは、いわゆる韓国ドラマの美人ではなく、個性派な感じ。(とはいえ、いかにも中学生女子的な元気な感じが自分は好きですが)*1
一方で、日本人からすると信じられないほどの家族の絆の深さを感じさせるなど、全体として、怪獣映画以外の部分は韓国の人(エリートではなく一般の人)にアピールする部分が大きいのかもしれない。
先日観た『舟を編む』の主人公・馬締のようなタイプは、自分の今まで過ごしてきた中で沢山見てきたし、自分にも社交性が欠けている部分があるから共感できる。しかし、カンドゥのようなタイプは周りにはいなかったから、共感しにくい…と感じたが、もしかしたら韓国の人から見ると、逆に、カンドゥのようなタイプが普通で、馬締のようなタイプはほとんどいないのかもしれない。


さて、「漢江の怪物」グエムルは、予想外に初登場シーンから姿を見せる。チラ見せどころか、見せすぎなくらいに昼間の河川敷を暴れまくる。サイズとしては結構小さく、サイやゾウくらいだろうか。そのくらいのサイズだと、逆に、「目が合えば殺される」的なリアルな怖さがある。(ゴジラは「目が合ったら」などとは思わないので、怪物のサイズというのは、恐怖の質に大きく影響してくると思う。)
グエムルの最大の売りは、その造形よりも動きにあり、、尻尾を自在に操って橋の下や下水道を移動する様子は非常に自然で、昔からこういう生き物が下水道の中に棲んでいるに違いないと思わせるほどだった。*2
ということで、これだけ白昼堂々と動き回り、姿を見せながらも、着ぐるみ感や、ハリボテ感を感じさせないCG技術は、それだけで見るに値する映画だと思う。


さて、展開について言えば、とにかく粗が目立つ。
まず、指名手配犯的な報道を受けた状態にもかかわらず、家族のみで、逃走、娘の救出を果たそうとするサマは、あまりに大雑把で、緻密さが無い。未知のウイルスの可能性があると言って、必死で隔離しようとする人がいる一方で、病院関係者は感染に無頓着なのも、何をしたいのかよくわからない。グエムルがそもそも漢江上流の施設での薬品の不法投棄が原因であるという冒頭のシーンは、あまりストーリーに絡まない。
さらには、グエムルが一度呑み込んだ人間を吐き出し、下水道に置き去りにした目的も解決されずにモヤモヤが残る。(普通に考えれば、これから生まれる子どもの餌にするなど)
そして何より救いのないラスト。
全体的にわけがわからないことばかり。
しかし、繰り返しになるが、ここまでよく動く「怪獣」は珍しいと思う。それだけで観た甲斐がありました。
あと、韓国は中心部でも、あれだけ賄賂がはびこっているのか、と、変な部分にも驚きました。

*1:調べてみて気付いたが、カンドゥの妹役のナムジュは『空気人形』のペ・ドゥナだったんですね。目立たない感じの美人でしたが、全く気が付きませんでした。

*2:そういえば、『下水道映画を探検する』には、この作品も扱われているのだろうか。