Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

人生を肯定してくれる漫画〜つづ井『腐女子のつづ井さん』(1)

腐女子のつづ井さん (MF comicessay)

腐女子のつづ井さん (MF comicessay)

久しぶりにテレビで高校サッカーを見た。
高校時代に所属していたサッカー部は、それほど強いわけでなく、自分はレギュラーではなかったが、それでもサッカーに思い入れは強く、同世代の小倉隆史城彰二を見ると、熱心にサッカーを見て、サッカーを練習していた頃の自分を思い出す。
また、高校野球もそうだが、負けムードの学校側のスタンドで手を合わせて祈る女子生徒をテレビカメラが抜くのを見るのも結構好きだ。可愛いかどうかではなく、彼女の視線の先には誰がいて、どんな関係なんだろう、とか、ちょっと妄想して楽しんだりする。


そんなときに、最近読んだこの漫画を思い出した。
タイトル通り「腐女子のつづ井さん」が友達と話をするだけの漫画だが、その妄想のレベルが自分とあまりにも違い過ぎるので面白い。
「ねー聞いて、めっちゃハッピーな夢見た」とつづ井さんが友達のMちゃんに話しかけるところから始まる「腐女子と夢」の回はこんな感じ。

  • (1)高校生のつづ井さんは、バッテリー間の人間関係の悩みを聞いて野球部男子といい感じになる。
  • (2)甘酸っぱいイベントをたくさん経たあと、最終的にピッチャーの子に寝取られる
  • (3)Mちゃんの感想「めっちゃいいじゃん。超うらやましい!」


(1)のような夢は分かるが、(2)の展開に驚き、(3)の予想外過ぎる反応によろめく。序・破・急、というのか、あっという間に腐女子沼に連れてかれる。
…すべてがこんな感じ。
他にも名言が多くて、「ここで、そんな表現が…」「なぜこんな発想に…」等、何だか色々と勉強になる。

  • ますらをの しろたへのあな いとをかし(出会って間もないオカザキさんがLINEで送ってきた古文)
  • 男性といい感じになっても「私チ●コついてないけどいいの!?」って本気で思うようになった(Mちゃん)
  • もうアニメイト行きたい アニメイトのきれいな空気の中で深呼吸したい(就活で疲れているつづ井さん)
  • これ…韻を踏むどころじゃない…日常パートとスケベパートがまるで…そう おもちつきのように…すごいスピードと頻度で交互に…すごい…(Mちゃん)
  • 東京すっごいな!!これ…この窓際でセ●クスするやつやん!!「外から見えちゃうよ…」といか言いながらめっちゃ盛り上がるやつやん知ってる!100万回読んだことある!!(Mちゃんと泊まるホテルの部屋を見て興奮するつづ井さん)
  • この世に互いの乳首に毎日オロナインを塗り合う男子高校生がいるかと思うと…貯金全部使ってオロナインを高校に寄付したい(つづ井さん)
  • じゃあ来年は右乳首にニベア 左乳首にオロナイン塗ってみようよ!!(Mちゃん)
  • 「私の十字架」ってどう?(この漫画のタイトル案を聞かれたオカザキさん)


いや、一人一人の言葉も面白いけど、やっぱり、会話の中の、無防備なバカ話の感じが面白いんだと思う。
「生きる」という言葉の意味について考えてしまう「腐女子と内緒話」の回とか、ときめきの魔法式の断捨離をやったあとで物が増えてしまう「腐女子と断捨離」の回とか、好きな漫画の最新話に衝撃を受けたオカザキさんが喪服で現れる「腐女子と感受性」の回とか、どれも、やり取り全体が面白い。


で、それだけじゃなくて、この種の漫画にしては自虐要素が少なくて、笑わせようとしてバカやってる感じでもない、というところがいい。友達は大事にするけど、影響を受け過ぎず他人を気にせずに楽しく生きている感じ、そこに、好きなことに突っ走る生き方を肯定されるようで、読んでいて楽しくなってくる。
幸せな雰囲気が強くて、自分はとても好きな漫画です。


こちらから試し読みができるので是非→コミックエッセイ劇場

参考(過去日記)

⇒同じく友人に「オカザキさん」が登場する『岡崎に捧ぐ』がテイストとしては近いかもしれません。この感想は、3作にまたがるアクロバティックなものになっており、読みにくいですが、昨年読んだ中でも1,2を争う好きな漫画です。山本さほさんは絵柄も好きです。

⇒こちらも2冊同時紹介のアクロバティックな構成ですが、『俺たちのBL論』は、自分になかった物の見方を懇切丁寧に教えてくれた、素晴らしい教科書です。