Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

森で見つかるモンブランやプレッツェル〜川上新一・伊沢正名『森のふしぎな生きもの 変形菌ずかん』

森のふしぎな生きもの 変形菌ずかん

森のふしぎな生きもの 変形菌ずかん

綺麗な写真が満載で見て楽しい図鑑は色々あり、ハエトリクモの図鑑も面白がって読みました。
今回もその流れで読みましたが、ハエトリグモと違うところは、肉眼でも十分観察が可能なところ。
そして、標本をつくることができるというのもなかなか面白いと思いました。
この本を片手に森に変形菌を観察しに行ってみたい、そう感じたので、とてもいい本だと思います。


変形菌がどんなものなのかについては、色々と紹介されているページがありますが、日本変形菌研究会のHPが比較的写真も多く、イメージが伝わりやすいです。

森の中で、倒れて腐った木や落ち葉の上に不思議な物体を見つけたことはありませんか?
ひとつは下の写真のように、スライムというねばねばしたおもちゃに似ている黄色、白色、青色などの「ねばねばした液体」で、時には、網のように広がっています。
もうひとつは、下の写真のようにキノコ、カビ、虫の卵とは違う「小さくて不思議な形」をしたものです。
実は、これらの正体が「変形菌」と呼ばれるもので、「ねばねばした液体」は「変形体」、 「小さな不思議な形」が「子実体(しじつたい)」といい、まったく別なものに見えますが、 どちらも「変形菌」です。ねばねばした「変形体」から「粘菌(ねんきん)」とも呼ばれています。
変形菌を知る(はじめに)

ここでも書かれているように、変形菌は、「変形体」のときはアメーバのように動き回り、「子実体」に変化すると、見た目は、キノコっぽい生き物になる、というかなり特殊な生物。
変形体のときの動きはスピードがゆっくりながらも確かに移動している様子が本に掲載された連続写真からもよくわかりますが、面白いというか気持ち悪いというか…。でも「動き」については、やはり動画で見るのが一番わかりやすいです。(早送りすると複数種類の変形菌の動きが確認できます)


こういうのを見てしまうと、図鑑の「ススホコリ」のところに載っていたアメリカの住民たちが恐怖したという事件も納得です。

実はそれで、ひとつ面白いエピソードがあるんです。「ススホコリ」という変形菌が1973年春に北アメリカで起した有名な事件です。その年は例年になく湿度が高かったため、変形体が大発生しまして、子実体をつくる場所を求めて電柱などに上がっていったんです。鮮黄色の大きな塊があちらこちらに出現し、しかも、どうも動いているらしいと分かったため、異星生物が地球を征服に来たなどというデマも飛び交うほどの騒ぎになり、住民を恐怖に陥れたんです(笑)。
生物界のはみだし者−変形菌(アットホーム教授対談シリーズ 萩原博光教授)

見た目が色も形も多種多様で、さらに、それぞれが子実体と変形体で少し変わった見かけになるので、図鑑を眺めていて飽きません。見た目を食べ物に例えて紹介しているものも多いですが、プレッツェル、ブルーベリー、ドイツパン、なめこ、トリュフチョコ、ドーナツ、すじこモンブランなど、どれも納得です。名前も面白いものが多いですね。

  • クビナガホコリ
  • フンホコリ
  • マンジュウドロホコリ
  • ヨリソイヒモホコリ
  • クダマキフクロホコリ
  • ウルワシモジホコリ
  • キノウエホネホコリ


なお、変形菌の研究者については、南方熊楠については知っていました(「粘菌」という言葉とセットで記憶にありました)が、昭和天皇も研究されていた(新種発見もあり)と知って、驚きました。
検索してみると、マラソンで走るときに訪れることのある生田緑地の森の中でも、変形菌は見つかるとのこと。梅雨時期が一番見つけやすいようなので、来年は探しに行ってみたいです。


変形菌 (Graphic voyage)

変形菌 (Graphic voyage)

↑この本の著者 川上新一さんの最近の本も表紙がものすごく美しいです。変形菌界のアイドルとの異名をもつ「ジクホコリ」だそうです。