Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

これはひどい!(褒めてます)〜早坂吝『○○○○○○○○殺人事件』

○○○○○○○○殺人事件 (講談社文庫)

○○○○○○○○殺人事件 (講談社文庫)

アウトドアが趣味の公務員・沖らは、仮面の男・黒沼が所有する孤島での、夏休み恒例のオフ会へ。
赤毛の女子高生が初参加するなか、孤島に着いた翌日、メンバーの二人が失踪、続いて殺人事件が。さらには意図不明の密室が連続し…。
果たして犯人は?そしてこの作品のタイトルとは?第50回メフィスト賞受賞作。


第50回メフィスト賞受賞作ということで警戒していたが、まさかこれほどとは…!!
「タイトル当て」という奇抜なミステリだが、読み終えたあとのこの本に対する印象は、解説で摩耶雄嵩が書いている通り、「世の中を舐め切った作品」。
一方で摩耶雄嵩は次のように褒めている。

本書はサプライズ・エンディングなミステリーではなく、極めてロジカルな犯人当てである。本格ミステリーの基礎体力が備わっていないとできない芸当。しかもアイディアそのものが、地引網のヘドロの中から金貨を探し当てるような稀有な代物だから、これだけ作者に舐め切られていてもなお、読後に跪かざるをえない。

この賛辞に素直に頷けない自分を顧みて、「面白ければ何でもOK」と思っていた自分が、実は結構保守的だったのかもしれない、と思ってしまう。
それほどまでに、このトリックには呆れた。
…という書き方も正確ではないかもしれない。来るぞ来るぞ、と思ってはいたが、よく言われる「斜め上」、あまりにも「斜め上」からの真相が明かされ、笑いながら怒る、という竹中直人的な気分になった。
しかも、「斜め上」は3段階。
256ページの第一段階には、おーー!(???)と思えた。
261ページの第二段階では、えーー!(これは酷い)と呆れた。
285ページの第三段階では、むむむ!確かに…(なわけあるかい!)と笑いながら怒った。
ただ、この3段階こそが、ロジカルな謎解きのダメ押しになっているということは納得だ。
納得だが…。
納得だが…。


とはいえ、ここまでチャレンジングな物語というのも珍しいし、それこそ麻耶雄嵩以上に、自分の「変なミステリ読みたい」欲を満たしてくれる作家が発見できたことはとても嬉しい。
驚いたことに、この作品は、シリーズ化され、この本を含めて4作品出ており、3作目は2017年の本格ミステリ大賞にノミネートされているという。この本もだが、文庫化される際に大幅に修正・加筆が加えられているということなので、まずは文庫化された2作目を早く読もう。