平城京のごみ図鑑: 最新研究でみえてくる奈良時代の暮らし (視点で変わるオモシロさ!)
- 作者: 文化財研究所奈良文化財研究所=,奈良文化財研究所
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2016/11/29
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (3件) を見る
ここで取り上げられている、平城宮跡で見つかったゴミは、下駄、木靴、墨、硯、土器、埴輪、装飾や建物に使った金具、魚の骨や果物の種など。
中でも面白いのは「木簡」。
まず、木簡に書かれている文字や絵画が、現在自分たちが書くそれとほとんど変わらないところが凄い。
先日行った運慶展でも、その仏像を作ったのが運慶であることを示す証拠としてあがっていたのは、仏像胎内に収められた「木札」。運慶の時代は800年前だが、平城京というと、さらに500年近く遡る。
その時代のスケール感だけで、まず興味を惹かれる。
それだけでなく、その使われ方。
当時の書写媒体は、紙と木があるが、木簡には以下のようなメリットがあったという。
- 風雨にさらされても傷みにくい
- 表面を削れば容易に書き直しが出来る
- 孔に紐を通してカード的に利用できる(役人の勤務評定に使われていた)
また、不要になった木簡はバラバラにして、トイレでお尻を拭くものとして使われていたという(籌木と呼ばれる)のも面白い。
漢字の練習や落書きに使われた木簡も、当時の生活がしのばれて見ていて楽しい。
それ以外にも、ショッピングセンター建設工事中に見つかった長屋王木簡(奈良時代の屋敷の主人を特定できた唯一の事例)の話など、考古学という学問自体のスリリングな感じ(気づかなければ歴史自体が失われた)や、トイレの場所の推理など、色々と興味深い内容があった。
また、710年の平城京遷都以降の落ち着かない都の変遷(740恭仁京、744難波京、745紫香楽宮、745平城京、784長岡京、794平安京)とそれに伴う引っ越しなど、ある意味では激動の時代だったのだなあ、と変なところに感動した。なお、狭義では784年までを奈良時代と呼ぶとのこと。(長岡京時代の10年間は奈良に都が無かったため)
ここら辺の小説も読んでみたい。
ずっと昔に読んだ井上靖『天平の甍』がちょうどこの時期か。
- 作者: 井上靖
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 1977/10
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る