Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

声に、音に魅了されたアニメ〜『メイドインアビス』


kindleFIREでの通勤時アニメ視聴が定着した2017年は多くのアニメ作品を見た。
思いつくだけで「嘘と恋」「クズの本懐」「鬼平」「鉄血のオルフェンズ」「甲鉄城のカバネリ」「ひぐらしのなく頃に」「3月のライオン」「ザ・リフレクション」「いぬやしき」「シュタインズ・ゲート」等。
そんな中で、泣き笑い、一番満足した番組が『メイドインアビス』だ。
原作の存在も知っていたが、今回、アニメでこの作品の世界に触れることが出来て良かった。
というのも、圧倒的に絵が綺麗というのもあるが、特にこのアニメについて言えば、声・音の力が大きいと感じたからだ。

隅々まで探索されつくした世界に、唯一残された秘境の大穴『アビス』。どこまで続くとも知れない深く巨大なその縦穴には、奇妙奇怪な生物たちが生息し、今の人類では作りえない貴重な遺物が眠っていた。
アビスの不可思議に満ちた姿は人々を魅了し、冒険へと駆り立てた。そうして幾度も大穴に挑戦する冒険者たちは、次第に『探窟家』と呼ばれるようになっていく。
アビスの緑に築かれた街『オース』に暮らす孤児のリコは、いつか母のような偉大な探窟家になり、アビスの謎を解き明かすことを夢見ていた。そんなある日、リコはアビスを探窟中に、少年の姿をしたロボットを拾い…?
竹書房・原作コミックあらすじ)


まず、この主人公2人、リコとレグ(少年の姿をしたロボット)の声が、キャラクターにとても合っている。だけでなく、オープニングとエンディングを、この2人が歌っている。そして、歌が物語を盛り上げる。
Amazonプライムの特別番組を見ると、リコ役の富田美憂さんはまだ「新人」の部類に入る人で、レグ役の伊瀬茉莉也さんらがサポートするような形だったらしい。そんな舞台裏の人間関係を知ることが出来たという意味でも、とても良い番組だった。


そして、声が特徴的なキャラクターが終盤に2人登場する。
オーゼン(→公式HP紹介)とナナチ(→公式HP紹介)だ。


オーゼンの、人を小馬鹿にしたような、そして全く感情を表に出さず、棒読みのような喋り方は、最初に聞いたときかなりの違和感を覚えた。しかも、何度聞いても慣れない。だが、それだけに癖になる、耳に残る声で、最後には、その棒読みの中に垣間見える彼女の優しさを感じることが出来た。


そしてナナチ。


ナナチがこれまた独特で、(映画館で予告編の間に登場する)紙兎ロペのような喋り方をする。
造形的な楽しさ(その理由を知れば悲しいのだが)もあって、アニメ終盤を盛り上げる最重要人物だ。


ナナチが登場する11話から最終話の13話までは疾風怒濤。
本当に痛いし、本当に悲しいし、本当に笑える。
原作は終わっていないし、物語はまだ続くのだが、どん底に叩き落してから希望を見せる最高の盛り上げ方で終わっており、1シーズンのラストとしては最高だったと思う。
(なお、同クールの『嘘と恋』というアニメが、直前に張った伏線を全てスルーする、あまりに変な終わり方で、不満が溜まった。)
ということで、11話から13話は、名場面がたくさんあるのだが、一番好きなのは、ナナチが作ってくれる料理があまりに不味いことに業を煮やして、レグが手本を示そうと食事を作った後のシーン。
ナナチは、レグの料理の味が、ナナチのそれを下回ることを感じて、にやにやしながら揶揄うように言う。
「なあ、おぃ、”度し難い”って言ってみろよ」※度し難いはレグの口癖
ユーモア溢れる笑えるシーンだが、これが最も泣けるシーンの直前に入っているところが最高だ。


さて、『メイド・イン・アビス』に次いで感動した作品は『鉄血のオルフェンズ』なのだが、2期が無料視聴作品から外れたため、1期しか見ることが出来なかったのが本当に悔やまれる。と、自分で書いていても思ってしまうのだが、「有料なら見ない」というロジックは本当に大丈夫なのか、と思う。
そもそも、無料でここまで見てしまっていること自体に罪悪感を覚えてもいいはず…。
という意識もあり、今回、『メイド・イン・アビス』については、少しでも楽しませてもらった対価をという気持ちもあり、サントラ盤を購入した。



この2枚組サントラは、オーストラリア出身でロンドン在住のケビン・ペンキンという音楽家によるもの。作中の色々なシーンで使われているのだが、盛り上げる音楽よりも、環境音楽に近いものが多く、しかもそれぞれが特徴的。
聴いた感じは全く異なるが、コーネリアスの昨年のアルバムと、このアルバムは、読書時のBGMとしてとても重宝した。
プロデューサーへのインタビューを読むと、自分の好みのポイントは、まさに、ここで挙げられている〈ミニマル〉〈トライバル〉〈環境音楽〉だと思う。

「今回は音楽も個性的なものを残したいというお話で、普段とは違うチャレンジングなことができそうな機会でもあったので、僕とケビンでコンセプトを作りこんで監督やプロデューサーにプレゼンしたんです。そのコンセプトというのが〈ミニマル〉〈トライバル〉〈環境音楽〉という3つのモチーフでした」
TVアニメ『メイドインアビス』音楽プロデューサーに聞く制作秘話。どの国の音楽でもない“アビス的”劇伴はこうして生まれた!−エンタメステーション


なお、アニメは原作4巻の途中まで。続編製作も決定しているが、原作者へのインタビューを読むと、もともとゲーム畑の人間であることや、『神々の山嶺』に影響を受けていること、さらにはストーリーに何らかの隠し玉?を持っていることなど興味深いことがたくさん書いてあった。第2シーズンまでは時間もあり、作品自体の世界観はかなり練られたものなので、それを深く味わうためにも最新の6巻まで読んでおこうという気になりました。

参考

⇒『メイドインアビス』が2017年で一番面白かったアニメなら、2016年はユーリ。いまだに引きずっている。