Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

嬉し過ぎる展開に涙涙〜アーネスト・クライン『ゲーム・ウォーズ』(上)(下)


こう来るか…!(涙)
こんな場面が待っていたか…!(涙涙)
これは…
これは…最高過ぎる!!!

西暦2041年。革新的なネットワーク〈オアシス〉が張りめぐらされた世界は、深刻なエネルギー危機に陥っていた。
多くの人々はそうした現実から逃避するように、〈オアシス〉と呼ばれるコンピュータの仮想世界にのめりこんでいた。
ある日、〈オアシス〉のコンピュータ画面に、突然「ジェームズ・ハリデー死去」のニューステロップが現れた。
ジェームズ・ハリデーとは、〈オアシス〉を開発し、運営する世界的億万長者。ゲーム界のカリスマ的存在だ。
テロップに続いて、ハリデーの遺書ともいえるビデオメッセージが現れ、〈オアシス〉内に隠したイースターエッグを一番先に見つけたものに、遺産のすべてをゆずることが宣言された――。

クライマックスがあまりに自分のツボをつくものであったため電車内でうれし涙を流してしまった一作。
実際、上巻から面白い小説でしたが、気持ちの盛り上がり的にはそれほどではありませんでした。というのも、上巻は(IOIおよびソレントの奸計を除き)ほとんどが仮想空間であるOASIS内で閉じた話になっており、リアル生活抜きで話が進んでしまうとモヤモヤするなあ、と思っていたからです。
だから、本当に面白くなったのは、下巻に入ってパーシバルが一時的にOASISを離れる場面から。リアルな世界での苦労・努力・成功があるからこそ、仮想空間での活躍を心の底から応援できる。自分は旧時代の人間なのかもしれませんが、この場面があったからこそどこか安心して物語全体を楽しむことが出来たように思います。
そしてクライマックス!!!





以下ネタバレ






ゴールまであと一歩の第三ゲートを前にして、OASIS世界を二つに分ける大戦争に駆け付ける主人公たちは、いずれも巨大ロボット(第二ゲームクリア時に受け取ったアイテム)に乗り込みます。

まさかまさかのレオパルドンの登場に、頭の中をスパイダーマンの主題歌が流れていました…。
また、大好きだった勇者ライディーンも嬉しい。
まさに天下分け目の関ヶ原というような「戦」の場で、数えきれないほどの宇宙船の中に、巨大ロボットが陣頭指揮を執る、という、その構図が絵的に素晴らしい。素晴らし過ぎます。
パシフィック・リム』も感動しましたが、それを遥かに上回る胸の高まりがありました。


そして。
ここだけで既に涙しているのに、敵役ソレントが出してきたのはメカゴジラ(機龍)。
これが強く、レオパルドンは真っ二つにされてしまう。
そこでパーシバルが手にするのは、ベーターカプセル(ウルトラマンの変身アイテム)。
ゲームの中の1アイテムではありますが、ベーターカプセルをめぐるここまでのダイトウ・ショウトウ兄弟とのやり取りが上手い伏線になっているので、ここで出るのは当然と言えば当然なのです。しかし、巨大ロボ群に感動し過ぎていて完全に忘れており、それだけに、ウルトラマンメカゴジラを倒すシーンに思わずはガッツポーズでした!!


第三ゲートをくぐると同時に全員が死んでしまうという展開も衝撃でした。
その後の展開も含めて、基本的にはOASIS内での特殊アイテムの効果について、そこまでに丁寧な説明があるため、伏線として理解しやすく、かなり納得感があります。
最後の方になると「仮想空間よりもリアル」「人と人との触れ合い(恋愛)が尊い」「人を見た目で判断しない」「性的指向は人それぞれ」など、やや説教ぽいメッセージが出てくる感じもしますが、むしろ自分は安心できました。
ストーリーはシンプルですが仕掛けはダイナミック。そして伏線など、構成は親切。各所への配慮もこらされている。その意味で、誰にも読みやすい本になっているとは思います。


ただ、この小説の一番の凄味はクライマックスに代表される異様なまでの80年代リスペクト。音楽、映画、ゲーム、圧倒的な情報量の一部は(その時代を生きて来たからこそ)自分にもわかって、そこは本当に得した気分です。(アーネスト・クラインは1972年生まれということで完全に同世代。)
映画でこれを実現しようとすれば、権利面で相当に苦労するのだろうと思いますが、スピルバーグ監督作ということで、是非とも、あのクライマックスの感動を映画でも味わわせてほしいです。映画は3月にまず全米公開とのこと。

生頼範義展とこれから見る作品


この本のクライマックスを読み、電車内で涙したときに向かっていたのは、上野の森美術館で開催中の「生頼範義(おうらいのりよし)展」でした。かなり沢山の点数がありましたが、特に多いのは70年代〜80年代の作品でシンクロする部分もありました。
たとえばウルトラマンゴジラ等は勿論ですが、ポスターの展示があった『グーニーズ』(1985)などは自分の中で80年代を最も代表する作品です。
『ゲーム・ウォーズ』もそうですが、そこで紹介されている作品群、特に、これまで見過ごしてきた作品群を見直してみたくなりますね。『ノヴァ』や『虎よ、虎よ!』などの古典SF、平井和正小松左京もいいですが、今回、これは早く読まないと!と強く思ったのはダン・シモンズハイペリオン』ですね。涼宮ハルヒ長門有希が読んでいたのが強く印象に残っています。『ゲーム・ウォーズ』では『ウォー・ゲーム』と『ゴジラVSメカゴジラ』(2003)。あとは音楽関係ですね。映画公開までに予習しないと。


ハイペリオン(上)ハイペリオン(下)
ハイペリオンの没落(上)ハイペリオンの没落(下)

追記

劇場版(日本版)の予告編出ましたね!(映画タイトルは原作通り『レディ・プレイヤー1』)
でも、原作で言う80年代は、70年代終わりから80年代頭にかけてを指しているのに対して、予告編で出ている金田のバイクは80年代も後半だし、アイアン・ジャイアントに至っては2000年代に近いので、全体の雰囲気がどう変わるのか注目しています。
でも大きくフィーチャーされているヴァン・ヘイレンの『ジャンプ』は、ザ・80年代で良い感じです。