Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

「恋愛スピリッツ」こそが作品最大の魅力~『ダーリン・イン・ザ・フランキス』

人類は荒廃した大地に、移動要塞都市“プランテーション”を建設し文明を謳歌していた。その中に作られたパイロット居住施設“ミストルティン”、通称“鳥かご”。コドモたちは、そこで暮らしている。外の世界を知らず。自由な空を知らず。教えられた使命は、ただ、戦うことだけだった。敵は、すべてが謎に包まれた巨大生命体“叫竜”。まだ見ぬ敵に立ち向かうため、コドモたちは“フランクス”と呼ばれるロボットを駆る。それに乗ることが、自らの存在を証明するのだと信じて。かつて神童と呼ばれた少年がいた。コードナンバーは016。名をヒロ。けれど今は落ちこぼれ。必要とされない存在。フランクスに乗れなければ、居ないのと同じだというのに。そんなヒロの前に、ある日、ゼロツーと呼ばれる謎の少女が現れる。彼女の額からは、艶めかしい二本のツノが生えていた。「――見つけたよ、ボクのダーリン」

ダーリン・イン・ザ・フランキス、略して「ダリフラ」。
あっという間の全24話でした。
昨年放映時から気にはなっていたものの、昨年末くらいのタイミングで Amazon見放題に入ったのを機に観てみることに。


もう一つ偶々の流れがあって、ちょうど昨年の秋アニメとして全話観た『SSSSグリッドマン』。これが、円谷の実写作品をアニメ化した内容と聞いて想像するのとは違い、エヴァンゲリオンを彷彿とさせる好みの内容で何より絵が綺麗。
しかし、13話(1クール)では全く話が終わらずとても残念だったのです。
特に、自分の好きなタイプのキャラクターであるアンチ君(主人公の敵役だったはずなのに、対立関係を保ちながら主人公を助ける役回りとなる。例.ガイバーのアプトム)が今からもっと活躍を!というところで残り話数が僅かになってしまったのがとても心残りでした。


そんなときに観始めたダリフラ
グリッドマンと同じくトリガー製作ということもあるのか、これも、かなりエヴァンゲリオンの世界観のままの物語。
才能のある少年少女がロボットを操縦する、という基本事項だけでなく、使徒もいるし、NERVもゼーレもある、当然、人類補完計画もある(笑)。
でも、これを観て、やっぱり自分はエヴァが好きなのだなと思った。大歓迎です笑

男女2人乗りで操縦するロボット「フランクス」

色んなところがエヴァそっくりなダリフラですが、彼らが乗るロボット「フランクス」には、エヴァとは異なる大きな特徴があります。
それは、男女2人乗りで操縦するロボットであること。*1
勿論、パシフィック・リムと同じく2人の気持ちが一つにならなければ操縦できないというのは当然ですが、問題は、 初めて見たとき「ええええ!!」と思った コクピットの形状。(未見の方はググってください…)
ただし、全話を見終えてみると、この形状は、実際にはそれほど実用的な意味があるわけでなく、単なる視聴者へのほのめかし(笑)だったのでした。


つまり、主人公たちは10歳くらいで、14歳だったエヴァパイロットたちよりもかなり年下なのですが、4体のロボット(フランクス)に乗る8人の少年少女が、いわゆる思春期を過ごす中で、性的な部分に興味関心を持って行くというのが、ダリフラのひとつの大きな魅力でした。


自分が大好きなエピソードは11話のパートナー・シャッフル。
主人公ヒロとそれに思いを寄せるイチゴ。また、そのイチゴを好きであることを意識し始めたゴロー。10話までの物語が彼らにスポットライトを当てていたので、その部分をシャッフルすると思いきや、ミツルとイクノという8人の中ではあまり目立たない2人の心の内を見せます。
ここでのミツルの感じは、とてもよく分かります。ミツルがヒロとフランクスに乗りたい(男→男)と思っていたのは、ゲイだとかバイセクシャルだとかそういうことではなく、このくらいの年頃だったらあることのように思うのです。一方でフランクスに一緒に乗る相手としてイチゴを指名したイクノは「本気」(女→女)だったことが、この11話だけでなく後半の話でも分かります。あとでも触れますが、後半の物語上の失速は、この「嫉妬」要素が不足していたからだと思います。

嫉妬と諦め、そして「相手」への嫌悪が「恋愛スピリッツ」

さて、この物語は、終盤の展開に不満を抱いている人が多くいるのですが、その理由は、話自体が大きく不連続になるタイミングが2度あるからだと考えています。
まず、ダリフラを薦めてくれた方が、実質最終回と言っていた15話。
ダリフラの一つのポイントは、ヒロインであるゼロツーが暴力的で、そもそも人ではなく、過去にパートナーの少年を何人も(実質的に)殺してきたというところがあります。
それでも、彼女を好きになるヒロ。
そして、幼少時からヒロのことを想い続けるイチゴ。
さらに、イチゴへの気持ちに気がついたゴロー。
このドミノ倒し的片思い連鎖こそが、15話までのダリフラの魅力だったわけです。
自分の大好きな歌に、チャットモンチーの「恋愛スピリッツ」があります。

あの人をかぶせないで
あの人を着せないで
あの人を見ないで私を見てね
あの人がそばに来たら
あなたのそばにもし来たら
私を捨ててあの人捕まえるの?
あの人がそばにいない
あの人のそばに今いない
だからあなたはわたしを手放せない

この感じです。
仲が悪いわけではない。相手からの好意がゼロではない。でも一番じゃない。
特に、実質的に第2の主人公であるイチゴの「恋愛スピリッツ」(嫉妬と諦め。そして「あの人」への嫌悪)が溢れていたからこそのダーリンインザフランキスでした。


それが16話以降はなくなります。
ゼロツ―が「いい子」になってしまったため、ドミノが止まって、イチゴの気持ちが落ち着いてしまったのです。
16話以降で「恋愛スピリッツ」を出したのは、18話のイクノくらいで、15話以前とはかなりトーンの違う作品になってしまいました。

ナインズの活躍がもっと描かれることを期待した20話以降

ということで、15話までと16話以降では物語が断絶しているのですが、それ以降で物語の断絶があるのは、やはり20話「新しい世界」です。ここでは、19話まで伏せられていた物語の核心部分が突如明らかにされます。
16話以降、18話のミツルとココロの結婚式や、その後のココロの妊娠など、自分はドキドキしながら見ていました。(ミツルの髪型変更も良かったです)
一方で、2人の記憶を奪ったAPE(エヴァでいうゼーレ)に対する憎しみを深め、さらに、APEからの指示にひたすら従うナインズの優等生たちも憎々しく思っていました。
本当ならば、最終回に入る前に、ナインズ達と13部隊の対決がきちんと描かれるべきだったと思います。
しかし、20話で、人類の本当の敵は叫竜ではなく、別にいた(VIRM)ことが分かると、ナインズ達は、急速に後退してしまいます。これは本当に残念です。
最終話を改めて振り返ると、ゼロツ―の正体や、APEの目的など、伏線回収はかなりしっかりやりつつ、「戦い」が終わったあとの、登場人物の生活にも目を向けたラストになっていて、ある意味では行き届いた作品になっていたのでした。
その一方で、15話まで見ていて高まった期待にも、19話まで見ていて高まった期待にも応えず、さらに新しい方向に向かってしまったのが、20話以降のように思います。あと、フランクス博士は「ただのマッドサイエンティスト」ではなく、もう少し感情移入できて「可哀想な博士」と思わせてくれた方が良かったように思います(笑)。


ただ、(グリッドマンもそうですが)技術的なところはよく分かりませんが、絵の綺麗さはピカイチでした。重要な場面で現れる桜もそうですが、ゼロツ―の髪の色は本当に画面に映えていて、美しいピンク色が印象的な作品でした。
グリッドマンを見て13話では足りない、と思った自分ですが、ダーリンインザフランキスを見ると、24話やってある程度の伏線回収まで済ませたとしても、まだモヤモヤとした気持ちは残ってしまうのだなあ、と思いました。ダリフラは物語の断絶部分があるから、そこで置いていかれると(気持ちが前の物語に引きずられると)不満は特に大きくなります。
ただ、そこらあたりの不満は分かった上で、ストーリーも一部変更しながら漫画版が進行しているというので、ちょっと漫画版にも期待したいです。そして次に観るアニメは、このダリフラエヴァとスタッフが重なるというグレンラガンかな…。

ダーリン・イン・ザ・フランキス 1 (ジャンプコミックス)

ダーリン・イン・ザ・フランキス 1 (ジャンプコミックス)

*1:男女2人と聞くと、ウルトラマンエースを思い出す人もいるようですが、自分の中では、ダントツに桂正和の『超機動員ヴァンダー』です。コミックスは2巻で終わってしまったけど、もっと続いてほしかった…