Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

『3月のライオン』聖地巡礼の魅力(その1)~ランドマーク

大好きな作品の舞台となった場所を実際に訪れる「聖地巡礼」は、それだけでワクワクするものです。
自分が『3月のライオン』の「聖地巡礼」をしてみようと思ったのは勿論、そのワクワク感を求めてのことです。しかし、何度か現地に行き、その後、漫画を読み返して思うのは、三月町(川本家のある町)のモデルである佃・月島の聖地巡礼の魅力はそれだけじゃない、ということです。
勿論、『3月のライオン』は、プロ棋士の漫画なので、千駄ヶ谷にある将棋会館(と向かいにある鳩森神社)も作品内に何度も登場し、そこに行くワクワク感も格別*1なのですが、佃、月島には、それ以上の魅力があるのです。

1.ランドマーク

Wikipediaから引けば「目印となる地理学上の特徴物」をランドマークといいますが、『3月のライオン』には、実在のランドマークが多く登場します。
特に多いものが、中央大橋、佃小橋&風呂屋の煙突の3つ(2つ)です。

3月のライオン 1 (ジェッツコミックス)ファイター [TVアニメ『3月のライオン』主題歌 (リアル・インスト・ヴァージョン)]3月のライオン 2 (ジェッツコミックス)3月のライオン[前編]

  • 中央大橋↓(桐山零が川本家を訪れる際に最初に渡る橋)

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  • 佃小橋↓(桐山零が川本家を訪れる際に二番目に渡る橋)
  • 風呂屋の煙突↓(銭湯は「日の出湯」。作中では「月の湯」)

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これらは、いわば登場人物らが三月町(ということは佃・月島)にいる風景の「お約束」として、大体どの巻にも登場しますが、聖地巡礼で佃・月島を訪れたときも、これらは、風景の中のランドマーク(目印)として機能し、それがあるからこそ、『3月のライオン』をもっと楽しむことが出来るのです。
具体的には、作中に登場する背景の中で、これらのランドマークをチェックすることで、その風景が見える位置(視点)を地図上に落として捉えることができる、というのがランドマークを見て楽しむ作品の楽しみ方です。


たとえば、佃小橋は作品中では「赤い橋」として頻出し、 風呂屋の煙突とほぼセットで出てきますが、そのほとんどは南側(橋の左側に煙突が見える)もしくは東側から見た風景(橋を渡った向こう側に煙突が見える)です。実際、14巻で、島田八段と林田先生(+みんな)がハゼ釣りをする「赤い橋のほとりで」では、タイトルにも「赤い橋」と入っており主役級の扱いで登場しますが、釣りをしているのが橋の南側ということもあり、北側からの絵は描かれません。
しかし、稀に北側からの風景が出てきます*2。下に引用したのは10巻99話「雨の降る街」ですが左奥から佃小橋、風呂屋の煙突、聖路加タワー、住吉神社が並ぶロイヤルストレートフラッシュ的な景色です。こういう絵を見ると、お!これは!とレアキャラに出会ったような喜びがあるのと合わせて、零くんは、多分このあたりから佃小橋を眺めているのだな、と登場人物の位置が特定できます。(少しストーカー的・倒錯的喜びな感じもしますが…)
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さて、今も書いた通り、上の景色で佃小橋と煙突の奥に光るタワーは聖路加タワーです。

この、聖路加タワーは対岸側(ざっくり言うと月島の対岸は築地)にあるので、漫画の舞台として登場することは少ないのですが、川の向こうの風景として描かれることがとても多いランドマークです。
ただ、 13巻を読むと、後藤九段の奥さんの入院先 (作品内では中央病院) は聖路加病院のようで、零とは無関係な場所ながら、ここも作品の舞台ではあります。この13巻139話「目の前に横たわるもの」で香子が見た景色は、聖路加タワー側からの景色、つまり、いつもは遠景として見ている川の向こう側から零の暮らす世界(三月町と六月町)を見ている、これまた、とてもレア、かつ深読みしがいのある景色となっています。(そして零の住んでいるマンションもばっちり特定できます…笑)
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最後にもうひとつ付け加えると、中央大橋から隅田川上流を見ると永代橋越しにスカイツリーが見えるのですが、零が何度も目にしているはずの、この景色は多分これまでに描かれていません。零の住む世界は六月町と三月町、そして将棋の世界だけ、ということで、余計な情報は不要なのでしょう。
こういった、背景の取捨も物語の重要な要素なのだと、改めて感じます。
なお、住吉神社の鳥居や、今回触れていない中央大橋を含む隅田川の橋も何度も登場しますが、これはまた今度に回しましょう。
(続き→『3月のライオン』聖地巡礼の魅力(その2)~河を渡る - Yondaful Days!

参考

聖地巡礼のまとめは個人で沢山の方がされており、どこも熱のこもったページで参考になりますが、公式としては、漫画の副読本である「おさらい編」(初級で関東地方、中級でそれ以外を取り扱っています)が参考になります。

HPでは、中央区が映画公開に合わせて「おでかけマップ」という形で紹介しています。また、東京ウォーカーの記事でアニメの舞台が取り上げられています。
日月堂があると思われる場所付近には佃煮*3屋さんが何軒かあるのですが、「おさらい編」では、「佃煮天安」さんをピックアップしているのに対して、東京ウォーカーでは「つくだに丸久」さんをピックアップしています。聖地巡礼をしたときは、お土産に買いたい逸品です。

www.walkerplus.com

過去日記のリンク

pocari.hatenablog.com

*1:あと、将棋会館では、棋士のグッズを買える!

*2:2巻表紙は珍しく北側からの佃小橋です。

*3:当然お気づきかと思いますが、佃は佃煮発祥の地です。