- 作者:田村麻美
- 発売日: 2018/12/07
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
久しぶりの自己啓発書。
改行が多く、協調部分は太字で書かれており、圧倒的に読みやすい。
と言ってしまえばそれまでなんだけれど、捨て置けないのは、やはりこのタイトル。
Amazonレビューでも次のような意見に対して「107人のお客様がこれが役に立ったと考えています」と共感する人が多いようだ。
大変インパクトがある本で面白いのですが、どうしてもタイトルが頂けないです。著者の方は大変優秀な方ですし、お綺麗な方です。世の中が徐々に容姿で判断しない風潮になりつつあるのに、何故平気でブスとか劣化とか侮辱ワードをタイトルに使えるの?一親として、小学生のいじめの助長にも繋がる為、「ブス」という言葉は公に使わない方が良いと思います。
かつての自分は同じように思ったかもしれない。しかし、ある本を読んで以降は少し感じ方が変わったのだった。
そもそもこの本を読んだのは、山崎ナオコーラ『ブスの自信の持ち方』を読んで、他の人が書く「ブス」論の本に興味を持ったから。
『ブスの自信の持ち方』で、山崎ナオコーラさんは、「自分はブスだ」と書くのは、「ブスですが、文章がうまいです」という、(英語が喋れない、○○が不得意などと同様に)単なる不得意分野を示したものに過ぎず、むしろ「文章がうまいです」ということを主張したいのだと言っている。
田村麻美さんが『ブスのマーケティング戦略』で言っていることも同じで、第一章は、自分という商品が提供しているサービスのセールスポイントの洗い出しから始まる。すなわち「見た目」以外で、自分の価値を探そうとするのだ。
しかし、この『ブスのマーケティング戦略』のすごいところは、フェミニズム的な視点に一切触れずに、美醜のレベルとしての「ブス」を書き抜くことだ。*1
故に、とても嫌いな「劣化」などという言葉もバシバシ出てくるなど、言われた人がどう思うか等の配慮はあまりないままに、美醜が語られる。。
でも、使われる言葉のインパクトはそれだけではない。
本書の構成から、「ブス」「劣化」以上にインパクトを受けた言葉について説明する。
- 第1章 自分を商品と考える
- 【行動提案】「見た目」の客観的査定
- 【マーケティング戦略】プロダクト解析
- 第2章 性欲をエネルギーに変えて商品力を高める
- 【行動提案】本能を認める
- 【マーケティング戦略】セグメンテーション
- 第3章 神童からただのブスへ
- 【行動提案】武器を増やし総合点を上げる
- 【マーケティング戦略】3C分析
- 第4章 ブスが処女を捨てるとき
- 【行動提案】最低限の見た目レベルアップ/告白/処女を早く捨てる
- 第5章 100回の合コンで学ぶ
- 【行動提案】自己紹介のテンプレを準備/ほめ会話を続ける/自己PR禁止論を唱和/さわれる店を選ぶ
- 【マーケティング戦略】市場調査
- 第6章 ブスにとっての肩書きの重要性
- 第7章 ブス自身も顧客であった
- 第8章 ブスの結婚
- 【行動提案】「とりあえず」付き合う、「とりあえず」同棲
- 【マーケティング戦略】プロダクトに合ったプレイスとプロモーション
- 第9章 ブスの起業
- 第10章 ブスの成功すごろくと美人の経年劣化
2章~5章の流れを目次で辿ってもわかる通り、性的な話がかなり出てくるのがこの本の特徴で、読み終えると、そちらのインパクトが大きく、「ブス」という言葉にはあまり抵抗感がなくなってしまったほどだ。
例えば、4章には「やりたい」という言葉が何度も何度も出てくるし、5章で出てくる親友の紹介は「ヤリマンの友だち」だ。もちろん、何よりも性欲について(人生の一時期だけとはいえ)第一優先的に考えている女性もいるだろう。しかし、ビジネス書でそれを読むことになると思っていなかったので面食らった。
しかし、顔写真も含めて、マーケティング戦略の説明(と笑い)のためにすべてをさらけ出し過ぎているので、文章を読んでも嫌な気持ちにほとんどならない。むしろすがすがしい。
ただし、この本を読んでどの程度の女性が共感を持ち、自ら動き出すことができるのかはわからない。自分の娘がこの本を熱心に読んでいたらちょっと不安だ。
その意味では、一番ターゲットとなる読者層は大学1年生くらいの男子ではないだろうか。合コンについて書かれた第5章の「リーン・スタートアップ」の項が特に良かった。大学生の頃の自分には刺さりまくっていた気がする(笑)
トライ&エラーの繰り返しによって商品の精度を上げていく。
これこそブスに有効な方法だ。
勇気が必要なのはわかる。その背中を一押しするのは、やはり総合点で、商品改良の努力は必要なのだが…。
(略)
繰り返すようだが、ブスのいちばのダメな点は、行動しないことだ。
でも、総合点が低いまま、未完成のまま市場に出すことで、ものすごい学びがある。
(略)
失敗前提で行動し、そこから必ず何かを学ぶこと。
ブスこそリーン・スタートアップ、トライ&エラーである。
このとき、もっとも大切なのは、「フィードバック」の部分である。
失敗から学ばず、同じ失敗を繰り返し、傷を深くしてはだめだ。
p136
引用してみると、思いのほか、単なるビジネス書っぽくなってしまったが、この第5章は、合コンのあとのデートでの店選びでは、女を意識させるために「さわれる店を選ぼう」などと下世話な話が満載なので、やっぱりこの本はただものではない。
そしてこの本のカバー、やっぱりすごい。
本のカバーと同様、本の内容は、基本的には田村麻美さんの半生を描いたもので、誰にでも適用できるものではないだろう。(多くの自己啓発書に言えることだが)
それでも説得力があるのは、この本がこのタイトルと表紙で書店に並んでいること自体が、本の中で語られているマーケティング戦略を体現しているように思えるからだ。
「ブス」という言葉と表紙写真の組み合わせを見て、思わず本を手に取らざるを得なくなったことに対して、また、写真がどこか爽やかさだけでなく、見る人を苛つかせる雰囲気があることに対して「これも計算のうちか…」と言いたくもなってしまう。*2
「篭絡された」かのようにも思える旦那さんもどんな人か見てみたい。
そう思うほどには、田村麻美さんに興味が沸いた本だった。
ブログもさっそく見に行ってしまった。
tamuramami.com