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陸自ヘリ墜落と陰謀論~青山透子『日航123便 墜落の新事実』

宮古島沖での陸自ヘリの墜落事故が起きたのは4月6日で、まだ一か月も経っていないが、新しい事実が出ないからか報道はすでに下火のように感じる。
事故の原因については、中国の関与の話なども出ているが、「そういう陰謀論を信じたがる人いるよね」と一笑に付していた。
ところが、この話題についてTwitterを見ていたら、陰謀論も捨て置けないというニュアンスで、「日航機の事故も色々あるみたいだし」と、青山透子さんの名前を出している人がいて、この本のことを知った。

読んでみて

これまで、日航機墜落事故について、自分は何の疑問も持ったことが無かった。
事故を題材にした小説『クライマーズ・ハイ』でも、墜落現場は群馬なのか長野なのか?という場所の話と合わせて、原因について触れられていた。
小説内で、主人公が逃したスクープとしての事故原因は「圧力隔壁の破壊」という、実際の事故調査委員会の報告書と同じものとなっている。
このこともあり、事故調査委員会が結論付けていることで、この事故原因については解決したものだと思っていた。だって、専門家が調べたんだから、そこに文句のつけようのあるはずがない。


そう思っていた。
この本を読むまでは。


本を読んで、この中で提示される事故原因の真偽はどうあれ、日航機墜落事故は「未解決事件」に他ならないことがよくわかった。
そもそも事故が起きてからの関係者の動きに不審な点が多く、遺族や関係者にも事故原因について納得していない人が多いという。

この本で取り扱っている主な不審点を列記すると以下の通りだ。

  1. 1990年7月に行われた山口悠介検事正による説明会で、前橋地検の捜査の結果、事故調査報告書が不備が多く曖昧であることを指摘し、「原因は不明」と結論付けている。
  2. 墜落現場である群馬県上野村の住民は日航機が墜落した場所をすぐにわかり、多くの関係者に連絡したにも関わらず、墜落場所は、当初、長野県と報道され、墜落位置の判明までに(墜落した19時15分頃から)10時間を費やし、救助は翌朝から始まった。(これは助かる命を恣意的に救わなかったことを意味する)
  3. 寄せられた目撃証言や、上野村の小学生、中学生たちによる事故当時に目撃証言をまとめた文集を見ると、墜落前のジェット機が低空飛行をしていた、大きな飛行機(事故機=日航123便)と小さい飛行機が追いかけっこをしていた、赤色の物体(真っ赤な飛行機)を見たとの証言がそれぞれ複数あるが、場所や高度、状態が公式発表と異なる。
  4. また、墜落後の事故現場には、直後から多数のヘリコプターや飛行機が行き来していることも目撃されている。(つまり、事故現場の特定、公式発表前に、救助以外の何かをしていた)
  5. 「完全炭化(歯や骨の中心まで炭化した状態)」という犠牲者の遺体の損壊状態が(墜落事故が原因と考えられないほど)激しいものだった。
  6. 遺体の検案に関わった押田茂實氏が撮影していたビデオは警察に提供後、返還してもらえていない。また、海の底に眠っている垂直尾翼の大半(事故原因の重要な証拠物)などに対する海底捜索調査について早々と操作を打ち切るなど、原因を隠蔽する姿勢が見られる。通常公開されるボイスレコーダーもプライバシー保護を理由に一部が非公開になっている。


この本の特徴は、作者が、当時、客室乗務員(昔の言い方でいうスチュワーデス)であり、事故犠牲者である123便に搭乗していた客室乗務員のことを同僚としてよく知っていたことだ。
そんな彼女が、先輩の客室乗務員のことをまとめる中で、当時の資料をまとめる中で湧き出た事故原因への疑問をまとめたのが一作目の『天空の星たちへ』で、この2作目では、その後に集めた(申し出があった)目撃者や専門家の意見から、原因推定に踏み込んでいる。


だから冒頭では、彼女自身が、当時は公式発表を疑わなかったとして、このように書いている。

事故原因については一部の過激な陰謀説、根拠の薄い憶測も多々あり、それがかえって再調査への道を妨げていることもある。私自身も自衛隊の誤射やミサイルという言葉すら不愉快で違和感を覚えていた。


そんな彼女が、事件について調べ続けて大きく意見を変え、政府が隠している事実の中で確実度の高いものとして結論付けているのは以下の内容だ。

  • 18時台の日航123便は、2機の自衛隊ファントム機(F-4EJ)に追尾されながら低空飛行を続けていた。
  • 墜落直後に現場は特定されていたが、「不明」ということにして、何らかの隠蔽工作のために時間をかけた。
  • その隠蔽工作のためにゲル状燃料(完全炭化の説明が可能)の武器を使用して現場を破壊した。


この本を読む限り、ここまでは事実であるように感じた。


青山さんは、さらに踏み込んで、目撃された「赤色の物体」を自衛隊の訓練用の誘導ミサイルで、それが墜落の原因と考えた。ミサイルらしきものが機体につきまとっていることを確認した機長が、それを避けるために低空飛行や旋回ルートを取り、自衛隊のファントム機に確認を依頼した、という内容だ。


ここは、何とも言えないが、状況証拠からすると、「そんなの陰謀論だろう」と否定できない。
あまりにも公式発表が「見せかけ」過ぎて、何かを隠していることは確実と見えるからだ。

国の隠蔽体質と陰謀論

青山さんは、仙台出身ということもあり、終わりの部分で東北大震災の原発事故と結びつけて政府への不満を述べているが、全く別の事故である以上、これを結び付ける必要はなく、Amazonレビューなどを見ると、ここに反発を感じてる人もいるようだ。(自分もそうだ)
しかし、政府が情報を公開しない姿勢が、数々の陰謀論を助長しているということははっきりしている。また、国の言うことを正しいと捉えて従い、それを疑う人たちを馬鹿にするような国民の姿勢は、国の情報隠蔽体質を助長してしまうだろう。
ここには、科学的か非科学的かという視点も入って来るが、東北大震災のときの放射能問題、そしてコロナ禍でのマスク問題を考えると、日本には、その土台がないように感じられる。(ここでは、青山さんの轍を踏み、完全に日航機墜落事故から離れた話題に移ってしまっているが)



そもそも今の政府は、国民が「科学的であること」よりも、「(国が)できるだけ説明しないで済むこと」を重要視しているように見える。(「説明責任を果たす」と言い続けつつ何も説明しようとしない政治家が多い。)
しかし、科学的であるということの基礎には、情報が公開され共有されていることが重要だ。すべてが公開され、共有されていれば、陰謀論が生じる隙はない。
もちろん国家間の情報や軍事面など機密事項すべてを公開することは出来ないが、ちょっとした議事録も公開できない国だと、それを信じずに安易に陰謀論に走る人がいるのは仕方ない。この本を読んで、そう思うようになった。


国の姿勢を糺す報道やジャーナリズムがあればよいが、この本を読むと、報道はある程度、こういった問題に気付いていたのに政府に異を唱えなかったとしか思えない。
このあと、また感染者数が増えて問題になるはずのコロナ第9波、そして生きている間に確実に起きる巨大地震とそれに伴う混乱、そんな災害の中で国民の分断を止められない政府と、分断と混乱を煽るマスコミを考えると、暗澹たる思いがした。
宮古島陸自ヘリ墜落についても、国の発表を疑いつつ可能性の高い事実を見極めたい。
(国の発表や判断を安心して信じられる国の方がいいなあと思いますが、世間一般的にも…↓)
www.asahi.com


これから読む本

青山透子さんの本は、このあと何冊も出ているので、原因究明がどのように変わっていくのかも含めてもう少し追いかけてみたい。また、本の中で登場した押田茂實さんの本も併せて読んでみたい。


⇒この本の感想のつづき↓
pocari.hatenablog.com

参考(過去日記)

pocari.hatenablog.com