Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

何度も体験したいアトラクション~『トップガン マーヴェリック』


「前作を予習してから」とも思っていたが、それだと結局観ないことになるかもしれない。「前作を観なくても楽しめる」との友人からのアドバイスも受けて水曜日の仕事帰りに急いで観に行った。

感想は

SU・GO・I !!!

この映画の良さは何かと言えば、映画というより、それを超えたアトラクションであるということ。ストーリーも面白いが、映像体験そのものが圧倒的に魅力的。
作中でも「G」(重力加速度)の話が何度も出てくるが、映画を観ているだけで、それを追体験している気になるし、映像に合わせて呼吸を止めてしまう。
そんなシーンが最初から最後まで山盛りで、かと言って、繰り返される戦闘シーンが全く飽きないまま、クライマックスで盛り上がりがピークを迎える。それは何故かを考えると、理由は大きく二つあると思う。

(1)ミッションの行動の流れが分かりやすい

これは映画の見せ方が巧いとしか言いようがないのだが、登場人物がするべき行動の流れが理解しやすい、という当たり前のことが映画の盛り上げに一役買っている。
対照的な映画として、今年の劇場用コナン(ハロウィンの花嫁)を挙げるが、あの映画は、クライマックスでのコナンの取る行動の意図がよくわからないところに問題があった。しかも、コナン一人で短時間で済むミッションではなく、少年探偵団はじめかなりの大人数がコナンの意図を理解して協力して初めて成立する話なのだが、最後まで進んでも観ている側に対して「それで解決する」という説得力がなかった。


これに対して、『トップガンマーヴェリック』は慎重だ。
まず、ミッション全体の流れについて、最初にマーヴェリックから説明がある。流れだけでなく、2分30秒という制約条件や、敵からの攻撃に対する(高度に応じた)安全性の話。そして、戸田奈津子っぽいとも揶揄される日本語訳「棺桶ポイント」。
そして、訓練シーンでは、一連の流れについてシミュレーションが繰り返される。この中で

  • そもそも常人には2分30秒が難しい
  • ウラン濃縮施設を破壊するためには、2機連続で同じ個所に命中させる(ミラクルその1、その2)必要がある。
  • 低空飛行からの急上昇は体への負担が大きい
  • 急上昇のあとの「棺桶ポイント」が生死を分ける(この訳語は正解でしょう)

トム・クルーズからの説明および訓練の中で、観客にもこれらの難しい点が頭に叩き込まれるので、いざ実戦という際に、まさに息をのみながらミッション成功の可否に集中できる。
なお、シミュレーションで何度も繰り返しているからと言って、本番になり観客側が慣れて退屈するということは全くない。本番では、敵国の対空ミサイルや第五世代機の存在が、失敗は死に繋がることが想起され、緊張感が全く異なる。

(2)落として上げるマーヴェリック活躍の流れ

結局終わってみるとマーヴェリックの活躍が目立つ映画なのだが、いくつか「ダメなのか」→「そうくるか」という下げ→上げの流れがあった。

  • マーヴェリックは、あくまで教官として作戦に関わり、実際に極秘ミッションに向かう教え子の中から編隊長を選ぶ方針(そうか。今回の映画では、トムは教育側に徹するのか…) → マーヴェリック自身が編隊長に。(当然だよな)
  • 実際のミッションではプラント破壊に成功(あれ?これでエンディングだとマーヴェリックのスーパーマンっぷりに話が寄り過ぎでは?) → マーヴェリック機は撃墜(あれ?飛行機から下りて映画が続くの?それはそれで面白そうだけど米国には帰れないよね…) → 敵国のF-14を盗み出す(そう来たか!しかもここで2人が同じ機に乗るし最高の流れ)
  • とはいえ、盗み出したF-14で、敵の第五世代戦闘機に勝てるはずもなく…(どうすんだどうすんだ…) → ハングマンが敵機を撃墜(そもそも、ハングマンではなくルースターがなぜ選ばれたかよくわからなかったけど、チーム1の実力者が最後にいい見せ場!)

という具合に、トム・クルーズが活躍する映画なんでしょ?→え?前半しか活躍しない?→え?最終盤は飛行機を降りた映画になる?→え?やっぱり奇跡は起き続けない?…と紆余曲折があり、結局、トム・クルーズが活躍する映画ではあったけれど、チームワークと成長が上手く描けた映画だった。

不満

ということで大満足だったが、いくつか不満があった。

  • ルースターの顔を「ひげ」で認識していたので、コクピットに入り、ひげの隠れたルースターを彼と見分けられなかった。
  • F-18に一人で乗るのか二人で乗るのか、どんなつくりになっているのかという基本的な説明がなく、2人ずつセットで任命されたチーム編成も最初はスッキリわからなかった。
  • 技術的な問題があり最新鋭機を選ばないのは分かったが、F-18は40年くらい前の漫画『エリア88』の時から登場していた戦闘機なのにまだ現役という感覚がよくわからない。そもそも、お笑い界は第七世代まで行ってるのに、第五世代戦闘機が最新というのがわからない(笑)。実際には冒頭にあるように無人戦闘機が主流になるのか気になる。

このうち、戦闘機の問題は、おそらくパンフレットに書いてあるだろう、と思っていたのだが、全く載っておらず…。

映画製作の裏側

パンフレットは、PRODUCTION NOTESとして、インタビューを整理した映画製作の裏側の記事+キャストの紹介、というシンプルなものだった。が、普通の人なら映画を観る前に知っているはずの内容を、自分は初めて知り衝撃を受ける。

戦闘機の映像は、すべてCGではなくリアルなもので、俳優も全員が戦闘機に乗って撮影をしている!*1

映画を観ているときは、トム・クルーズのバイクの運転はカッコいいなという程度にしか思っておらず、戦闘機シーンは「何かうまい方法」で撮影しているんだろうという程度にしか思っていなかった。
しかし、舞台裏を知ると、トム・クルーズの指導のもとで若手俳優たちが訓練(映画では数週間だったが実際には数か月!)を受ける、という、映画の内容と全く同じことが行われていることを知る。以下の記事や動画を見ると、トム・クルーズがマーヴェリック同様に信頼されていることがわかる。

www.youtube.com

www.youtube.com
eiga.com


さらに、そもそも前作の『トップガン』自体が、シドニー・ポラックに薦められて飛行機操縦技術を即習得、即座に免許を取得していたことありきで進んだ企画で、映画製作にもこのときから関わっていたという。
今さらながらトム・クルーズというのは相当に凄い人だったのだということを知る。
なお、戦闘シーンで、一人だけ吐かなかったのがモニカ・バルバロだったというエピソードは面白かった。
theriver.jp


まとめ

実は、トム・クルーズの映画はミッション・インポッシブルシリーズも含めて、あまり見たことがありませんでした。今回『トップガン マーヴェリック』を観て、前作のときから続く、彼の映画への情熱と才能を知り、しっかり観ていかないといけないなと気持ちを新たにしました。
まずは、来年公開の最新作の前に、ミッションインポッシブルのシリーズから制覇していこうと思います。

*1:F-18自体は軍のパイロットが操縦し後部座席で俳優が自身で撮影