Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

親切設計なのに分からなかった自分に鉄槌~竹宮ゆゆこ『砕け散るところを見せてあげる』


読み終えて、あれ?思っていたのと少し違ったと思った。
というのは、ラノベをあまり読まないので、そこに、漠然と野崎まど的な「ぽかーん感」を期待していたところがあるからだ。
ここでいう「ぽかーん感」というのは、いうなればSF不可解オチで、放り投げられたままの読後感が正解というような作品。
でも、この本は、もっと筋が現実的でしっかりしていて、それなのに分からないところがあったことが少しストレスに感じたのだ。

思い返してみると、そもそも、この本に辿り着いたのは、竹宮ゆゆこの近著『心が折れた夜のプレイリスト』の書評を見て興味を持つ→検索すると著名作家であることを知り、映画化されている作品もあるじゃないか!というルートだった。
SABU監督の映画『砕け散るところを見せてあげる』は俳優陣も豪華で、今年の4月に公開されたばかりで予告編を見ても、自分がラノベに抱いているぼんやりしたイメージよりも、だいぶ通常のミステリ寄りだ。この映画のさわりを見た直後に読めば、イメージとのずれは無かっただろうが完全に忘れていた。

実際、この本の中盤以降のシリアスな展開への変化は見事で、現実味も十分あり、手に汗握りながら本を読み進めた。が、最後の最後で、作品の重要なテーマであるはずの「UFO」の話がピンと来なさ過ぎて、結局よくわからないまま読了に至った。そこに悔しさを感じた。


で、すぐに解説ブログを読む。(笑)
wakatake-topics.com
emptystudy.hatenablog.com


これらを読むと、この小説自体が「わかりにくい」部分に対して、かなり丁寧なつくりをしていて、「わからなかった」という感想自体、読み手の努力不足であることを知った。確かにUFOが何かという読み解き自体は少しだけハードルが高いかもしれないが、「仕掛け」自体は素直。
読了後にすぐ冒頭を読み返せば、作品に対する「わからなさ」のほとんどはクリアできる親切設計であることも身をもって感じ、「違和感があったらすぐに冒頭を読み返せ!」ということを、この種のエンタメを読むときの遵守事項として、自分の胸に刻み付けたい。

ただし、そこまでわかっても、魅力的なタイトルの直接的な意味はよくわからないのは残念。やはり力不足かもしれない。


さて、敗北感に打ちひしがれ、内容について簡潔にまとめてあるブログを読んでしまい、本編についてはもう書きたい気持ちはなくなってしまったので、映画について少し。

主人公・濱田清澄役の中川大志はハンサムすぎるのでどうかと思うが、「いじめられっ子だけどちゃんとしたら美少女」という難しいキャスティング・蔵本玻璃役の石井杏奈は面白い。尾崎・妹役は清原果耶で、彼女の持つ「天性の暗さ」からすると、玻璃役でも合っていた気もするが明るい役も見てみたい。
そして何といっても玻璃の父親の堤真一。これは見たいなあ。


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