Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

オリジナル・ラヴ『エクトプラズム・飛行ツアー』2/17@名古屋クラブクアトロ〜続きの始まり

オリジナル・ラヴ名古屋クラブクアトロライヴ評ですが、少し、エントリを分けます。
目次は以下の通りです。
4つ全てのタイトルの元ネタがすぐに分かった人には、プリごろ太タオルが当たるプレゼントに応募できます。(嘘)

(1)求めすぎている?僕
(2)ROCKER ROOM
(3)These Three Words 〜 君ノ声
(4)Hang On To Your Ego

(3)以降は、ネタばれ注意です。

(1)求めすぎている?僕

まずは、基本的な事項の確認から。
結局のところ、ライヴの満足度は、こちらが「求めているもの」と、ライヴで「与えられるもの」(パフォーマンス)が、どれだけ合致したか、超えていたか、で決まってくる。
田島ダンスを楽しみに見に来た人と、佐野さんのスティックさばきを見に来た人、木暮君のくし使い*1を見に来た人では、求めているものが異なるので、ライヴの満足度は異なって当然だ。
自分の求めていたものを振り返って考えてみると、大きく二つある。
それは「驚き」と「メッセージ」。勿論、演奏のレベルが高いことなどは、当然のことだが、プラスアルファとして、いつもこれらを求めているようだ。それは、ライヴだけでなく、音楽全般や、小説、漫画、全てに共通して自分が要求してしまうものなのだ。

驚き

まず、「驚き」。大きく出るが、僕は「芸術」というのは「驚き」だと思う。
現代芸術は特にそうだと思うが、「わかる/わからない」ではなく、そこに「驚き」があるかどうかが重要だと思う。
ライヴで言えば、予想外の選曲*2や、CDからは想像もつかないアレンジ*3。勿論、予想を裏切る、だけでなく、圧倒的な「もの」がそこにあれば、それは驚きにつながる。こちらの想像を超えていることが重要なのだ。
過去のパフォーマンスから考えると、田島貴男は、観客をびっくりさせてやろう、という考えを基本的に持ってライヴに臨んでいるように思え、僕は推理小説を読むとき、手品を見るときのように、そこに驚かされに行くのだ。

メッセージ

次に「メッセージ」。メッセージというのは、MC*4という意味ではない。言葉だけでなく、会場全体から発せられるものだと思う。歌詞を中心とした、その曲の世界が、ライヴで聴いて、はじめて伝わる、もしくはCDで聴くより数倍伝わることがある。ケミストリーが生じる、とでも言うのか。
さらには、最近の田島貴男の場合、岡本太郎への傾倒や、自分の「声」へのこだわりが顕著で、少ないMCや選曲を含めたライヴ全体から、彼のメッセージを強く感じていた。
インタビューで「サウンドよりも詞を書きたかった時期だった」と語る田島貴男が、今回のライヴで、どんなメッセージを伝えるのか、心の底では期待していたのだと思う。
何というか、自分は音楽に「救い」を求める弱い人間なのかもしれない。

*1:ギター木暮晋也は、一時期、毎回のように、胸元からくしを勿体つけて出し、リーゼントを整えるパフォーマンスをやっていた。最近はやらない。

*2:VINTAGE SONG TOURの椎名林檎カバー

*3:FIRE WALKINGツアーの、ブルース・リー風イントロから始まる「ドラキュラ」。うろ覚え。

*4:そもそも、今回、自ら吐露していたように、田島貴男はMCが非常に少ない

(2)ROCKER ROOM

(田、ロッカールームに呼び出される)

渋「前に、『東京 飛行』について「みんながイメージする、ポップでお洒落なオリジナル・ラヴ」って褒めたけどさあ、それ、自分でちゃんとわかってる?田島貴男の悪いところは、リスナー感覚がない、というかズレがありすぎるところなんだよ。」
田「うーん」
渋「簡単に言えば、(売れていた)『Desire』で大きく形を崩すまでのオリジナル・ラヴ、というのは、あれは一つの完成形だったと思わない?」
田「ああ〜。確かに、その完成形に戻らないように戻らないように、避けて曲作りやライヴをしていた感じはありますね。」
渋「そう、それを言っているわけよ。でさー。今回のライヴはさあ、騙されたと思って、昔の曲を中心にやってみなさいよ。ファンが何を望んでいるか、もう一度よく考えてみたら?」
田「そうですね。ファンレターでも、昔の曲をやってくれ、というのは確かに多いですね。」
渋「まあ、ベストアルバム的な選曲だと、田島君もつまらないだろうから、まずは、自分のアルバムを聴きなおしてよ。」
田「わかりました。騙されたと思って昔のアルバムの復習からやりましょう。」
渋「あとねえ、最近、声を張るような歌い方と選曲をするでしょ。「ふられた気持ち」とか。あれも一度やめてみた方がいいよ。」
田「え!あれは、かなりお気に入りだったんだけど・・・。ファンも喜んでいたような・・・。」
渋「田島君の好きな言葉に「人生積み減らし」っていう言葉があるでしょ。とにかく、まずは一度やってみようよ。」
田「そうですね。人生積み減らしですから。」
渋「あとねえ、アレンジとかもあまリ悩む必要ないよ。だって、原曲が、こんな素晴らしいメロディと、こんな素晴らしいアレンジなんだから、もういじる必要ないでしょ。」
田「そうですね。なかなか悩むんですよね。」
渋「あと、最近マニアックなカバー曲やったり、サックス吹いたりするでしょ。あれも自己満足だから、やめよう。ファンが何を望んでいるか、というところに戻ってみよう。」
田「がはははは。もう、渋さんの仰る通りに一度やってみることにします。(笑)」

以上、妄想的楽屋エピソード(もうひとつのシブタジ対談)でした。

(3)These Three Words 〜君ノ声

さて、やっと本題。
セットリストは、以下の通り

1 ジェンダー
2 美貌の罠
3 オセロ
4 2度目のトリック
5 髑髏
6 カフカの城
7 宝島
8 流星都市
〜MC〜
9 妖精愛
10 夜とアドリブ
11 プライマル
〜MC〜
12 セレナーデ
13 ヴィーナス
14 接吻
15 アダルトオンリー
16 ミッドナイト・シャッフル
17 13号室からの眺め
18 The Rover
19 JUMPIN' JACK JIVE
20 鍵、イリュージョン

アンコール1
1 踏みかためられた大地
2 夜をぶっとばせ
3 ムーンストーン
4 遊びたがり
5 エクトプラズム、飛行(メンバー紹介)

アンコール2
明日の神話
noriさんのエントリを参考にさせていただきました。

いろいろと伏線を張っているので、書いたも同然ですが、今回のライヴは今までいったライヴとの比較は難しいものの、非常に不満の大きいライヴだった。理由は大きく3つ。

アレンジ

2曲目「美貌の罠」が少しトリッキーだったことと、「ムーンストーン」がやや賑やかだったことを除けば、ほとんどが原曲どおりだったのではないだろうか。
それでも原曲を超える圧倒的な何かがあれば、自分は、そこに「驚き」を感じることができたはずだが、全ていわば「想定の範囲内」だった。理想が高いのか、自分の欲望がねじれているのか・・・。
ただ、実際には、「セレナーデ」くらいまではアレンジについてもほとんど気にならず、うっとりしながら聴けていたわけで、問題は、以下に挙げる二点の方が大きかったといえる。

選曲

全く予想していなかった「妖精愛」や「セレナーデ」は、自分にとって「驚き」だったし、嬉しかった。ただ、『街男 街女』からが「鍵、イリュージョン」だけということに代表されるように、「田島貴男度数」の高い、最近の作品からの選曲が圧倒的に少ない。さらに「妖精愛」「ヴィーナス」「ミッドナイト・シャッフル」が本人以外の作詞であることも、田島度数を少なくさせている。
ここまで「田島度」を薄める理由がわからない。
オレオレモード全開だった、『キングスロード』までの選曲と比べると、連続性を感じられない。同じ人が選曲したとはとても思えない。
もっといえば、「ここ最近のアルバムの方向性は間違っていました」と謝る田島貴男が見えるような、弱気な選曲。ポニーキャニオン時代に入ってからオリジナル・ラヴファンになった人たちの切捨てにすら思える。

上にいろいろ書いたが、これに尽きる。
はじめの方のMCで食中毒にかかった話をしたのは「言い訳」だと思う。
ライヴ後半が顕著だったが、声量が無かった。アンコール「明日の神話」は、かなり上手く歌っていたが、弾き語りで、バックの大きい音に影響されることがなかったからだろうと思う。
自分の耳が悪いのかもしれないが、「ミッドナイトシャッフル」あたりから、高音部の歌い方が慎重になり、メロディを探しながら歌うような不安定さを見せていた。
その後、演奏された「13号室からの眺め」は、今回のアルバムの中でも、最もライヴ映えがする曲だと期待していただけに、声の迫力の無さにがっかりした。そのあたりから、自分としては「心、ここにあらず」でしたね。
思えば、ライヴ開始当初は、田島貴男が、やや抑えた歌い方をしており、バックの楽器の音とのバランスが非常によかったことに大満足だった。自分がオリジナル・ラヴの音楽が好きになったのは、ボーカルだけでなく、後ろの楽器の音が全部聴こえるからだったのだ、とファンになった頃を思い出したりもした。
ただ、今の自分が田島貴男に求めるものは、それだけでは足りなかったのだ。
今回の声の状態では、むしろ無くて正解なのだが、何故、「張り上げ系」の曲がなかったのか、ということにも疑問。ここ数年のライヴで恒例だった「あの声」は聴けず仕舞いだった。

(4)Hang On To Your Ego

近年厚みを増したオリジナル・ラヴの魅力は、多少バランスが悪くても、田島貴男がエゴ丸出しにすることによって、得てきた部分が大きいと思っている。もちろん、それによって失ってきたものに対する不満もあった。確かに、今回のライヴは、昔の楽曲の演奏、田島貴男の「抑えた歌い方」など、自分が望んだとおりのライヴだった面もある。
しかし、実際に、田島貴男のエゴが希薄な今回のライヴを見てみると、自分にとっては、それこそ「空っぽになった真空の肺」というような空虚な印象が残るものとなった。
おそらく、田島貴男も行き過ぎた自分への反省というか、不安というか、迷いみたいなものがあったのだろう。しかし、そこで針を大きく戻しすぎたのは、それこそ田島貴男の生来のバランス感覚の悪さなのかもしれないが、妄想的ロッカールームの楽屋裏話でも書いたように、他の誰かの意志が介在しているとしか思えない。(笑)
そうでなければ「変節」といえるくらいのひどい方向転換だと思う。
曽我部恵一が、そういう部分で上手いバランスが取れている作品を出した直後だけに、10年前に一気に逆戻りしたような今回のライヴは、自分にとって理想とのギャップが大きかった。
「誰にも渡しちゃいけないものが君の中にもあるんじゃないか」と歌った「渡しちゃいけないもの」というのが田島貴男にとってなんだったのか、改めて考えたくなるようなライヴだった。
〜〜〜
とはいえ、何度も書くように、今回のライヴは「声」の問題が大きかったのもあると思う。東京のライヴでは「声」の問題がクリアされていれば、素晴らしいライヴになるのだと期待しています。
〜〜〜
歌詞の間違いについては、今回、特に気になりませんでした。(自分もしっかり覚えていないので)
「プライマル」はピアノ弾き語りだったので、上田さんが前に出てギターを弾いていたのですが、正確に歌詞を口ずさみながら弾いていたのが印象的でした。(笑)