Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

2024-01-01から1年間の記事一覧

想像力を鍛えて「関心領域」を拡げたい~『マリウポリの20日間』×門脇小学校で感じたこと

先日聴いたラジオで、社会福祉は「私たち」をどこまで認めるかで決まってくる、という話があった。一次大戦と強く結びついた「国民国家」意識の話から、最近の移民問題まで、「私たち」の線引きが明確で納得度が高ければ良いが、実際にはそううまくは行かず…

あまりにも石原さとみの映画~吉田恵輔監督『ミッシング』

石原さとみ以外 あまりにも石原さとみの映画だったので、まず石原さとみ以外についてメモを残す。 石原さとみを除くと、今回、最も衝撃を受けたのは、沙緒里(石原さとみ)の弟・圭吾役の森優作。 有名な作品にも多く出演されているが、自分にとっては初めて…

「驚かせ方」は、まだある、と感じた2冊~似鳥鶏『叙述トリック短編集』×杉井光『世界でいちばん透きとおった物語』

今回はミステリ2冊の感想です。 2冊目の『世界でいちばん透きとおった物語』の感想は、後半部でネタバレしていますのでご注意ください。 似鳥鶏『叙述トリック短編集』 叙述トリック短編集 (講談社タイガ)作者:似鳥鶏講談社Amazonビブリオバトルで紹介しにく…

現在起きているのは「漸進的なジェノサイド」の総決算~岡真理『ガザとは何か』

ガザとは何か~パレスチナを知るための緊急講義作者:岡真理大和書房Amazon 地獄とは、人々が苦しんでいるところのことではない。 人が苦しんでいるのを誰も見ようとしないところのことだ。 (マンスール・アル=ハッラージュ) p102 「GWに積読本を消化しない…

期待膨らむ大河ドラマの副読本~川村裕子『平安のステキな!女性作家たち』

平安のステキな!女性作家たち (岩波ジュニア新書 976)作者:川村 裕子岩波書店Amazon 大河ドラマ『光る君へ』の副読本として、信頼のブランドである岩波ジュニア新書のこちらを読んだ。 ちょうど先日もドラマの中で、藤原道綱母と紫式部(まひろ)が対面して…

「親ガチャ」的ニヒリズムを乗り越える~戸谷洋志『親ガチャの哲学』

先日『おわりのそこみえ』という本を読んでショックを受けた。 20代女性が主人公の小説だが、彼女は買い物依存で衝動的に欲しいものを買って借金し、借金を返すために働く生活を送っている。 彼女は社会には期待していないし、自分も努力したくない。未来を…

無関心でいることはできても無関係でいることはできない~北原モコットゥナシ『アイヌもやもや』

アイヌもやもや: 見えない化されている「わたしたち」と、そこにふれてはいけない気がしてしまう「わたしたち」の。作者:北原モコットゥナシ303BOOKSAmazon 元々、昨年末の『ゴールデンカムイ』実写映画化のタイミングで、改めて当事者キャスティングと差別…

共感されない物語でいてほしい~図野象『おわりのそこみえ』

おわりのそこみえ作者:図野 象河出書房新社Amazon ポップな表紙デザインとは対照的に不吉なタイトル。 よく見ると、フォントまで不吉さを増幅している。 で、タイトルが『おわりのそこみえ』 そこみえ? 底が見えたのか?見えているのか? いずれにしても、…

関心を持たざるを得なくなるドキュメンタリー映画~『ビヨンド・ユートピア 脱北』

映画を観に行くシチュエーションというのは自分には2パターンあって、見る映画が完全に決まっている場合と、映画を観に行く日と時間だけ決まっている場合がある。 映画が決まっていない後者の場合でも、常に観たいストックはたくさん貯めているので、あまり…

ミステリ要素の配合が巧い短編集~古矢永塔子『ずっとそこにいるつもり?』

ずっとそこにいるつもり? (集英社文芸単行本)作者:古矢永塔子集英社Amazon 5編から成る短編集で、共通するのは、作中で伏せられていたことが、○○だと思っていたら実は××だった、という一種の叙述トリック。 ただ、どれも日常生活の中での人間関係を扱ってお…

「誰か」とは誰か?~宮部みゆき『誰か Somebody』

誰か―Somebody (文春文庫)作者:みゆき, 宮部文藝春秋Amazon 菜穂子と結婚する条件として、義父であり財界の要人である今多コンツェルン会長の今多嘉親の命で、コンツェルンの広報室に勤めることになった杉村三郎。その義父の運転手だった梶田信夫が、暴走す…

2つのパープルと苦手意識~映画『カラーパープル』×大河ドラマ『光る君へ』

『カラーパープル』は公開初日に観たのだが、鑑賞前に、映画.comでの感想を流し見して「誰にも共感できなかった」と書いている人がいるのを目にした。黒人差別という、構造的にはわかりやすいはずの問題を扱っていて「共感できない」ということがあるのだろ…

ノンフィクション、エンタメ、文学の境界~齊藤彩『母という呪縛 娘という牢獄』×川上未映子『黄色い家』

齊藤彩『母という呪縛 娘という牢獄』、川上未映子『黄色い家』という全くジャンルの異なる2冊の本を短い期間に連続して読んだ。 異なる、と書いたが、共通点もある。 『母という~』はタイトル通り、母が娘を拘束して、そこから逃げ出せないような「監禁」…

社会派ミステリで描く安楽死問題~中山七里『ドクター・デスの遺産』

ドクター・デスの遺産 刑事犬養隼人 「刑事犬養隼人」シリーズ (角川文庫)作者:中山 七里KADOKAWAAmazon先日久しぶりに会った2歳下の弟が、最近よく読んでいるということで中山七里を薦めてくれて、興味のある安楽死問題を扱った小説があるということで手に…

尋常じゃない「聡実くん」祭り~綾野剛・齋藤潤主演『カラオケ行こ!』

チラシを見たときから「これは、漫画そのままでは?」と思っていた。未読だったが、原作漫画の存在は知っており、和山やま作品も『夢中さ、きみに。』を読んだことがある。チラシの2人は漫画の2人にイメージ的にぴったりじゃないか。 実は初めて原作漫画を読…

植物状態の母との25年~朝比奈秋『植物少女』

植物少女作者:朝比奈 秋朝日新聞出版Amazon 「図書館で借りて読んだ」と書くと申し訳ない気がしてあえて書かないが、買って読む本より借りて読む本が多い。 予約貸し出しの場合、ほとんどの場合は、何故この本を予約したのかを思い出せない頃になって本が手…

「死にたい」という人を死なせてあげていいのか?~児玉真美『安楽死が合法の国で起こっていること』

安楽死が合法の国で起こっていること (ちくま新書)作者:児玉真美筑摩書房Amazon昨年、興味はあったのに見逃した映画のひとつに『PLAN75』がある。 少子高齢化が一層進んだ近い将来の日本で、満75歳から生死の選択権を与える制度<プラン75>が国会で可決・施…

前澤友作の世界平和の語り方~『僕が宇宙に行った理由』

映画を見るときにネタバレを避けるためレビューは読まないが、映画.comやFilmarksで、どの程度の人が観て、★5つを満点として何点くらいついているのか?というのはどうしても気にしてしまう。 本作『僕が宇宙に行った理由』は、『プペル』のように「信者」的…

2023年下半期の振り返り(映画、本、音楽、そのほか)

もう年が明けてしまったが、昨年同様、年間の振り返りを行おう。 pocari.hatenablog.com pocari.hatenablog.com 映画(下半期ベスト、年間ベスト) 映画については上半期のまとめを7月に行っていた。pocari.hatenablog.com下半期に見たのは以下の12作品。 7…

役所広司演じる「平山さん」の禅と欺瞞~ヴィム・ヴェンダース監督『PERFECT DAYS』

年末の帰省の際、名古屋駅周辺で時間を使う必要があり、上映時間スケジュールが、予定とぴったり合う、この映画を観に行った。自分の中ではディズニーのアニメ映画『ウィッシュ』が最有力候補だったが、一緒に観に行く息子に断られてこちらに。ヴィム・ヴェ…