Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

2023年下半期の振り返り(映画、本、音楽、そのほか)

もう年が明けてしまったが、昨年同様、年間の振り返りを行おう。
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映画(下半期ベスト、年間ベスト)

映画については上半期のまとめを7月に行っていた。

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下半期に見たのは以下の12作品。
7月:『君たちはどう生きるか』『イノセンツ』
8月:『RRR(吹替版)』『バービー』
9月:『オオカミの家』『福田村事件』
10月:『ゴジラ-1.0』
11月:『正欲』『燃えあがる女性記者たち』
12月:『窓ぎわのトットちゃん』『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』『PERFECT DAYS』
このうち、『君たちはどう生きるか』は爆睡。
また、『オオカミの家』は映像が怖かったことは覚えているが、ストーリーを追うという意味では「全く理解できない」状況に、一緒に観に行った息子と二人で頭をひねりながらイメージフォーラムを出た。
しっかり見た人なら2作ともベストに入れるほどの作品で、修行が足りないことを痛感。どこかでちゃんとリベンジしたい。


さて、鑑賞直後の熱がもっとも高かったのは『福田村事件』なのだが、パンフレット収録の対談で、脚色を加えることの問題点について指摘する文章を読み、事実を基にしたフィクションの難しさについて意識した作品でもあった。
反対に、純粋なドキュメンタリー作品である『燃えあがる女性記者たち』は、インドという行ったことのない国の映画でありながら、出演していた人物の活躍を今現在もYoutubeで追え、その活動を応援したいと感じさせるような作品だった。
そして、2023年最後の鑑賞作品である『PERFECT DAYS』は、ドキュメンタリー的なつくりをしたフィクションで、『福田村事件』とは別個の違和感があり、下半期を通してノンフィクションやドキュメンタリー(的な)作品について、考える機会が多かった。


下半期に鑑賞した12本は、昨年の『RRR』や『SLUM DANK』など圧倒的なものが無く、この中からベスト選ぶのは難しいが、鑑賞体験という点で『燃えあがる女性記者たち』を選ぶ。シネマ・チュプキ・タバタが、20席しかないスーパーな「ミニ」シアターであるとは全く想像せず、予約を入れずに行き、定員オーバー時の「補助席」とクッションを出してもらったのは良い思い出。これぞという作品を狙って、改めて予約を入れて観に行きたい。
『イノセンツ』も雰囲気が良かった。昨年見た『わたしは最悪。』や2019年に見た『ボーダー 二つの世界』など他の北欧作品と共通する良さ(言語化できない)を感じたので、今後、北欧作品は積極的に見るようにしたい。
なお、上半期と合わせて27本の中から選ぶのであれば、『怪物』がベストでしょうか。
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本(年間ベスト)

繰り返し書くように*1、今年は外国人労働者を扱った作品を多く読んだ。
加えて、年末に見たドラマ『MIU404』の第5話もベトナム人技能実習生問題を取り上げており、難しいテーマを短い時間で巧く扱っており驚いた。なお、『MIU404』の本放送は2020年6月~9月、小説『アンダークラス』の刊行が2020年11月、小説『彼女が知らない隣人たち』の新聞連載が2020年7月~2021年8月、とベトナム人留学生を取り上げた作品の発表時期は概ね重なっている。小説家や脚本家が捨て置けないと感じる、きっかけとなる事件などがあったのかもしれない。
今年読んだ本の中では安田峰俊『「低度」外国人材 移民焼き畑国家、日本』(ルポルタージュ)が良かったが、法制度も時代と共に変化していくので、今後も継続して追いかけて勉強していきたい。
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また、夏に日航機墜落についての本を、陰謀論と専門家の手によるものを比較しながら3冊読めたのは良かった。*2ちょうど、これを書いている2024年1月2日に、日航機と海保機の衝突事故が起き、こうした事故は「起きる可能性が低い」だけであって、「起きない」というのとは異なることを痛感する。1月1日に起きた能登半島地震についても同様だ。
特に後者は、地震災害そのものへの対応とは別の問題として、志賀原発の被災状況の情報の出し方に(現時点で)不信感が生まれているように思う。いずれもできるだけ第三者的視点を含む漏れのない事故調査によって今後に備えられることを望む。


そんな中で、ベスト1冊を選ぶとすれば、ひらりさ『それでも女をやっていく』。フェミニズムをテーマにした2023年の作品といえば映画『バービー』があるが、どこか入り込めない部分があった『バービー』と比べて、自分の問題意識に圧倒的に近い一冊だった。
特に、この本の総括の部分に登場する「正しくなくてもフェミニスト」というキーワードには、フェミニズムへの理解というよりは、気の持ちようという点で、大きな学びを得た。他のフェミニズム本を読んで、迷うところがあれば原点として立ち戻りたい一冊だ。
2024年は、これらのテーマには継続的に触れつつ、宗教、戦争、世界史といったテーマの本をもっと読んでいきたい。
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音楽(2023年下半期ベスト)

音楽も、上半期で振り返りをしていた。

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したがって、下半期のベストを選ぼうということになるのだが、年間どころか、ここ数年のマイベスト作品に出会った。それはKIRINJIの最新アルバム『Steppin’ Out』。

Steppin' Out

Steppin' Out

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実質的に単独制作体制に戻ったアルバムということで、最初に聴いた時は『Home Ground』(2005)を思い出した。少なくとも前作までに1曲はあった、最先端ダンスチューンのような攻めた作品は影を潜めて、アルバム一枚としてのまとまりが強くなった。
しかし、「小さくまとまった」のではなく、聴き込めば聴き込むほど

  • 明らかにレベルアップした歌唱技術
  • 曲順や複数楽曲の歌詞の呼応、全体のテーマを考えたアルバム構成
  • 社会問題を歌詞に取り込んでいく巧みさ

等、色々な部分で、アルバム全体の素晴らしさに気がついていく。
歌詞は、トー横問題を扱った7曲目『I♡歌舞伎町』では、上から目線にならない絶妙な視線とユーモア溢れる言葉選び。続く8曲目『不恰好な星座』は老いについて歌い、やや不穏に終わりながら、ラストの『Rainy Runway』では、次のように、一種現代的な流行語である「~しかない」を使って希望について歌い上げて終える。

新しい季節を生きよう
素敵な予感しかない

アルバム全体を繰り返しリピートで聴くと、このあとにアルバム内で最もポジティブな1曲目『Runner's High』に繋がる。個人的には、Stevie Wonderを思い起こさせる後半の展開と、高樹の歌唱の艶が映えるメロディで、色々なときに聴きたくなる最高の楽曲。
そのほか、歌詞世界がおかしい(説得される立場で、説得してくれと頼む)『説得』、『Rainy Runway』と呼応するような「素敵な予感(素敵な旅館)」の歌詞が楽しい『指先ひとつで』等、1曲ごとにポイントがあり、全く飽きさせない。そして何といってもアルバム全体から伝わる、ポジティブに人生を捉えようとするメッセージの強さが際立つ。
実は、ほぼ同時期に購入したcero『e o』や水曜日のカンパネラ『ネオン』も大好きなアルバムなのだが、KIRINJIが凄すぎて、一枚選ぶならこれしかない。


そんな新生KIRINJIのツアーに行けなかったのは2023年の心残り。
2023年はKANをはじめ、よく知るミュージシャンの訃報が相次いだこともあり、今年は(明日は我が身という意味でも)「これが最後かも」という気概で、できるだけライブの予定を入れるようにしたい。

そのほか

10月からの冬ドラマで『セクシー田中さん』『パリピ孔明』『きのう何食べた』という漫画原作の3作品を見たがどれも良かった。
特に『きのう何食べた』の主人公シロさんは、ドラマでの年齢が50歳(ケンジは2個下なので48歳)で年が近く、両親とのリアルな会話を見ながら、自分の物語として見てしまい泣くシーンもしばしば。
『セクシー田中さん』も、朱里(めるる)の「たとえば、コンビニのスイーツが美味しかった。眉がキレイに描けた。一つ一つは些細だけど、たくさん集めると生きる理由になるじゃないですか」という台詞が、とても心に染みた。この台詞は、場面を変えて何度か登場するが、そのたびに泣いてしまった。
3作品ともに原作漫画をしっかり読んでみたい(『きのう何食べた』は途中まで読んでいるが)。また、『パリピ孔明』はアニメの評価が非常に高いので、こちらも何とか観てみたい。


それ以外の出来事としては、ロードバイク購入と湘南国際マラソンでのサブ3.5達成が何といっても大きなインパクトだった。
2024年は、もう少し記録を伸ばすためのトレーニングを意識しながら、怪我に気をつけ、二刀流を継続していきたい。