Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

2024-02-01から1ヶ月間の記事一覧

ミステリ要素の配合が巧い短編集~古矢永塔子『ずっとそこにいるつもり?』

ずっとそこにいるつもり? (集英社文芸単行本)作者:古矢永塔子集英社Amazon 5編から成る短編集で、共通するのは、作中で伏せられていたことが、○○だと思っていたら実は××だった、という一種の叙述トリック。 ただ、どれも日常生活の中での人間関係を扱ってお…

「誰か」とは誰か?~宮部みゆき『誰か Somebody』

誰か―Somebody (文春文庫)作者:みゆき, 宮部文藝春秋Amazon 菜穂子と結婚する条件として、義父であり財界の要人である今多コンツェルン会長の今多嘉親の命で、コンツェルンの広報室に勤めることになった杉村三郎。その義父の運転手だった梶田信夫が、暴走す…

2つのパープルと苦手意識~映画『カラーパープル』×大河ドラマ『光る君へ』

『カラーパープル』は公開初日に観たのだが、鑑賞前に、映画.comでの感想を流し見して「誰にも共感できなかった」と書いている人がいるのを目にした。黒人差別という、構造的にはわかりやすいはずの問題を扱っていて「共感できない」ということがあるのだろ…

ノンフィクション、エンタメ、文学の境界~齊藤彩『母という呪縛 娘という牢獄』×川上未映子『黄色い家』

齊藤彩『母という呪縛 娘という牢獄』、川上未映子『黄色い家』という全くジャンルの異なる2冊の本を短い期間に連続して読んだ。 異なる、と書いたが、共通点もある。 『母という~』はタイトル通り、母が娘を拘束して、そこから逃げ出せないような「監禁」…

社会派ミステリで描く安楽死問題~中山七里『ドクター・デスの遺産』

ドクター・デスの遺産 刑事犬養隼人 「刑事犬養隼人」シリーズ (角川文庫)作者:中山 七里KADOKAWAAmazon先日久しぶりに会った2歳下の弟が、最近よく読んでいるということで中山七里を薦めてくれて、興味のある安楽死問題を扱った小説があるということで手に…