Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

読書

「食えない羊羹」としてのスマホ~高橋久美子『旅を栖(すみか)とす』

旅を栖とす作者:高橋 久美子KADOKAWAAmazon 5/12のアトロク(ラジオ番組アフター6ジャンクション)のサウンドスケープ特集がよかった。 これまで、少し足を伸ばせば簡単に行けたあの街ですら、今は、はるか遠い星のよう。だったら、いつかの旅行で訪れたあ…

肖像画って面白い~佐藤賢一『フランス革命の肖像』

<ヴィジュアル版> フランス革命の肖像 (集英社新書)作者:佐藤 賢一集英社Amazon 『ベルサイユのばら』と『大奥』を読んで本当に良かったのは、歴史に興味が沸いたこと。 これまで、フランス革命に対する自分の認識は「非難爆発(1789)フランス革命」という…

『大奥』と似てるとこ・似てないとこ~池田理代子『ベルサイユのばら』(3)~(5)

ベルサイユのばら 3 (集英社文庫(コミック版))作者:池田 理代子発売日: 1994/12/01メディア: 文庫ベルサイユのばら 4 (集英社文庫(コミック版))作者:池田 理代子発売日: 1994/12/01メディア: 文庫ベルサイユのばら 5 (集英社文庫(コミック版))作者:池田 理代…

さらけ出すコミュニケーション~清田隆之『さよなら、俺たち』

さよなら、俺たち作者:清田隆之発売日: 2020/07/02メディア: Kindle版読まなくちゃとずっと思っていた清田隆之さんの著作を初めて読みました。 男性の書くフェミニズムの本ということで、女性が書くそれよりも、さらに気の引き締まる思いでページをめくりま…

逃げ道が無い「運命」と幸せ~『掏摸』×『メランコリック』

中村文則『掏摸』 掏摸 (河出文庫)作者:中村文則発売日: 2013/06/14メディア: Kindle版 東京を仕事場にする天才スリ師。ある日、彼は「最悪」の男と再会する。男の名は木崎、かつて仕事をともにした闇社会に生きる男。木崎は彼に、こう囁いた。「これから三…

「電波停止発言」と番組制作~永井愛『ザ・空気』

ザ・空気作者:永井 愛発売日: 2018/07/25メディア: 単行本 人気報道番組の放送数時間前、ある特集の内容について局の上層部から突然の内容変更を命じられ、現場は大混乱に陥る。 編集長の今森やキャスターの来宮は抵抗するが、局内の“空気"は徐々に変わって…

それでも野外排せつを続ける理由~佐藤大介『13億人のトイレ -下から見た経済大国インド』

13億人のトイレ 下から見た経済大国インド (角川新書)作者:佐藤 大介発売日: 2020/08/10メディア: Kindle版 つい先日もテレビで「クアッド」と呼ばれる4か国のニュースがあった。 日本とアメリカ、オーストラリア、インドの4か国の枠組みによる初めての首脳…

推しは命にかかわるか~宇佐美りん『推し、燃ゆ』

推し、燃ゆ作者:宇佐見りん発売日: 2020/09/10メディア: Kindle版 推しが燃えた。ファンを殴ったらしい。まだ詳細は何ひとつわかっていない。何ひとつわかっていないにもかかわらず、それは一晩で急速に炎上した。 そんな冒頭から始まる第164回芥川賞受賞作…

新聞記者の仕事とは ~三浦英之『南三陸日記』

南三陸日記 (集英社文庫)作者:三浦 英之発売日: 2019/02/20メディア: 文庫 住んで、泣いて、記録した。東日本大震災直後に受けた内示の転勤先は宮城県南三陸町。瓦礫に埋もれた被災地でともに過ごしながら、人々の心の揺れを取材し続け、朝日新聞に連載され…

竜児とマヤとキャンディ~いがらし ゆみこ・水木 杏子『キャンディ・キャンディ』

キャンディ・キャンディ (8) 講談社コミックスなかよし (315巻)作者:ゆみこ, いがらし,杏子, 水木発売日: 1978/11/22メディア: コミック 『キャンディ・キャンディ』が届くまで ご存知の方も多いと思うが、『キャンディ・キャンディ』は、日本どころか世界で…

さすがに一冊ではわからない~関眞興『一冊でわかるドイツ史』

一冊でわかるドイツ史 (世界と日本がわかる 国ぐにの歴史)作者:眞興, 関発売日: 2019/11/21メディア: 単行本まずは読んだ自分を誉めたい。1月初めに今年は歴史を勉強するぞ!と宣言したその気持ちは続いていることを自分のことながらも改めて認識しました。 …

どこが「復興」し、何に「打ち勝つ」のか?~三浦英之『白い土地』

白い土地 ルポ 福島「帰還困難区域」とその周辺 (集英社クリエイティブ)作者:三浦英之発売日: 2020/11/27メディア: Kindle版 「人類が新型コロナウィルスに打ち勝った証として」という欺瞞に満ちた枕詞がすっかり印象づいてしまったが、そもそも東京五輪は、…

神奈川県or武蔵県or多摩県だった可能性も~梅田定宏『なぜ多摩は東京都となったか』

以前、東京都の歴史を調べたとき、23区が生まれる過程についてとても面白く読んだ。ただ、他の本も同じだが、「東京」のことを書いてある本には、多摩地域のことが載っていないことが多いことが、23区「外」在住の都民としては、とても残念だった。そんなと…

歴史地理に詳しくなりたい~『一冊でわかるロシア史』×『絶対に住めない世界のゴーストタウン』

職場の同僚に東ヨーロッパの国出身の人(日本語は問題なし)がいることもあり、ヨーロッパのロシア寄りの地域に地理的にも歴史的にも興味があります。 先日読んだ『マウス』も、歴史だけでなく、東ドイツ、ポーランドなどの地理的な位置関係が勉強になりまし…

傑作!でも終わり方がしっくり来ない~柚木麻子『BUTTER』

BUTTER(新潮文庫)作者:柚木麻子発売日: 2020/06/05メディア: Kindle版 結婚詐欺の末、男性3人を殺害したとされる容疑者・梶井真奈子。世間を騒がせたのは、彼女の決して若くも美しくもない容姿と、女性としての自信に満ち溢れた言動だった。週刊誌で働く30…

女性キャラクターが戦う理由~王谷晶『ババヤガの夜』

ババヤガの夜作者:王谷晶発売日: 2020/10/22メディア: 単行本 ちょうど、Yahooの記事で、『鬼滅の刃』に登場する女性キャラクターについて取り上げた記事があった。鬼殺隊の中心メンバー「柱」を担う甘露寺蜜璃と胡蝶しのぶという二人の女性が、それぞれ何故…

炭治郎の「アジる力」~吾峠呼世晴『鬼滅の刃』全23巻

鬼滅の刃 23 (ジャンプコミックスDIGITAL)作者:吾峠呼世晴発売日: 2020/12/04メディア: Kindle版鬼滅の刃の23巻を読んだ。 最終巻も、最後になって無惨が自分の主義を変えるなど、一筋縄ではいかない意外な展開を見せ、全速力で駆け抜けた物語だった。 世間…

アウシュヴィッツ生存者の父親のことを今でも許せない~アート・スピーゲルマン『完全版 マウス』

完全版 マウス――アウシュヴィッツを生きのびた父親の物語 (フェニックスシリーズ)作者:アート・スピーゲルマン発売日: 2020/05/18メディア: 大型本 アウシュヴィッツの生存者、ヴラデックの体験記録。息子のアート・スピーゲルマンがマンガに書き起こした『…

前向きな感情と言葉を取り戻すための技術~本田美和子『ユマニチュード入門』

ユマニチュード入門作者:本田 美和子,ロゼット マレスコッティ,イヴ ジネスト発売日: 2014/06/09メディア: 単行本 ユマニチュード(Humanitude)はイヴ・ジネストとロゼット・マレスコッティの2人によってつくり出された、知覚・感情・言語による包括的コミュ…

「地味な戦い方」にこそ意味はある~松田青子『スタッキング可能』

スタッキング可能 (河出文庫)作者:松田 青子発売日: 2016/08/05メディア: 文庫 『あなた』と『わたし』は交換可能?5階A田、6階B野、4階C川、7階D山、10階E木……似ているけれどどこか違う人々が各フロアで働いているオフィスビル――女とは、男とは、社会とは、…

圧倒的な強度とリーダビリティ~山口貴由『シグルイ』

シグルイ 1 (チャンピオンREDコミックス)作者:山口貴由,南條範夫発売日: 2013/09/13メディア: Kindle版 読んだきっかけ 最近、携帯の漫画アプリで漫画を読む習慣がついた。 何故「習慣」がつくかといえば、アプリの仕組みと関係する。色々なアプリがあるが、…

絶望からほんの少しでも希望を~松田青子『持続可能な魂の利用』

持続可能な魂の利用作者:松田青子発売日: 2020/05/20メディア: Kindle版現代日本に絶望する気持ちがとても伝わる作品だった。 もう少し詳しく言えば、「おじさん」が支配する現代日本に絶望する気持ちがとても伝わる作品だった。 冒頭、印象的な一文で物語は…

自信と嫉妬と~山崎ナオコーラ『ブスの自信の持ち方』×花房観音『どうしてあんな女に私が』

今回も、「恒例」のビブリオバトル原稿をベースにした内容です。最初に重要なことなので、繰り返し書きますが、ビブリオバトルはコミュニケーションゲームであるため、基本的に観客を観て話し、原稿を見ながら喋ることはありません。が、自分の場合は、5分と…

「生きやすい街」とは~香山哲『ベルリンうわの空』×『「助けて」と言える国へ』

ベルリンうわの空作者:香山 哲発売日: 2020/01/17メディア: コミック ドイツ、首都ベルリン。ベルリンといえば、壁、ビール、ソーセージ。だけじゃなくって、様々な文化、様々な人々…、パリや東京とも並ぶ国際都市だ。そんな街で僕は…、僕は…、あんまり何も…

自分の視点から見える世界は限られている~前田健太郎『女性のいない民主主義』(その1)

女性のいない民主主義 (岩波新書)作者:前田 健太郎発売日: 2020/01/30メディア: Kindle版 自分は小池百合子都知事が嫌いなので、小池さんが出馬した2度の都知事選では、いずれも他の候補に投票した。しかし奥さんは違う。 今回、奥さんに「何で小池さんにす…

支える・支えられる~浅生鴨『伴走者』

伴走者 (講談社文庫)作者:浅生 鴨発売日: 2020/02/14メディア: 文庫 伴走者とは、視覚障害者と共に走るランナーである。「速いが勝てない」と言われ続けた淡島は、サッカーのスター選手として活躍しながら事故で視力を失った内田の伴走者として、パラリンピ…

知識より態度を~上野千鶴子×田房永子『上野先生、フェミニズムについてゼロから教えてください! 』

上野先生、フェミニズムについてゼロから教えてください!作者:上野 千鶴子,田房 永子発売日: 2020/01/12メディア: 単行本(ソフトカバー) 田房永子さんについて 女性の生きづらさ(あえて「フェミニズム」という言葉を使わない)についての本を読み始めたの…

四半世紀ぶりに再読したホラー短編集~井上雅彦『異形博覧会』

異形博覧会 (角川ホラー文庫―怪奇幻想短編集)作者:雅彦, 井上メディア: 文庫 まさに四半世紀ぶりくらいに読む短編集。 高校生の頃だったか、ミステリーゾーン(トワイライトゾーン)の小説版をよく読んでいて、その頃のことも思い出した。『異形博覧会』が刊…

38年差対決の結果は…?~『斜め屋敷の犯罪』(1982)VS『#柚莉愛とかくれんぼ』(2020)

島田荘司『斜め屋敷の犯罪』 改訂完全版 斜め屋敷の犯罪 (講談社文庫)作者:島田荘司発売日: 2016/02/12メディア: Kindle版自分の読んだ2016年発売の講談社文庫の「改訂完全版」の綾辻行人による巻末解説に詳しいが、『斜め屋敷の犯罪』は1982年11月に講談社…

私がつくりたいのはロボットではない~吉藤健太朗『「孤独」は消せる。』

「孤独」は消せる。作者:吉藤 健太朗発売日: 2017/03/10メディア: Kindle版 難病ALSは安楽死する人さえいる過酷な病。そして、患者さんが何より恐れているのは、コミュニケーションが閉ざされて永遠に孤独になること。オリィくん(吉藤健太朗さんのニックネ…