Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

読書

アニメ『平家物語』×映画『犬王』×小説『平家物語 犬王の巻』

アニメ『平家物語』 【Amazon.co.jp限定】平家物語 Blu-ray box(「監督・山田尚子、音楽・牛尾憲輔スペシャルインタビュー」視聴コード付)ポニーキャニオンAmazon『平家物語』を見終わったのは、まさに『犬王』を観る一週間前くらいのことだった。 見始めた…

軽い気持ちで読んだら歴史的名作でした~高木彬光『成吉思汗の秘密』

成吉思汗の秘密 新装版 (光文社文庫)作者:高木 彬光光文社Amazon またもや『鎌倉殿』関連の読書。『成吉思汗の秘密』というタイトルからは、昔流行した『人麻呂の暗号』を思い出すが、この本は名探偵が登場するタイプのミステリであることが大きな特徴だ。 …

芸術とAIと青春~斜線堂有紀『ゴールデンタイムの消費期限』

ゴールデンタイムの消費期限作者:斜線堂有紀祥伝社Amazon斜線堂有紀の本は初めて。そもそもは5月に見た映画『死刑にいたる病』からの連想で著作『恋にいたる病』経由でその名を知り、今回、Amazonでレビュー数の多かった本書を読んでみた。 ミステリ作家の中…

上半期ベストの「読みやすいSF」~アンディ・ウィアー『プロジェクト・ヘイル・メアリー』

プロジェクト・ヘイル・メアリー 上作者:アンディ ウィアー早川書房Amazonプロジェクト・ヘイル・メアリー 下作者:アンディ ウィアー早川書房Amazon 上半期読んだ小説では「ベスト」と言える、万人にオススメできる本でした! 地味な序盤 今年は、アトロク由…

まじめか!~潮谷験『エンドロール』

エンドロール作者:潮谷 験講談社Amazon 『時空犯』でリアルサウンド認定2021年度国内ミステリーベスト10第1位に輝いた著者の、待望の長編!202X年。新型コロナウイルスのせいで不利益を被った若者たちの間で自殺が急増する。自殺者の中には死ぬ前に自伝を国…

いつか私が。いつか誰かが。~佐々涼子『エンド・オブ・ライフ』

エンド・オブ・ライフ (集英社インターナショナル)作者:佐々涼子集英社Amazon ベストセラー『エンジェルフライト』『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている』の著者、佐々涼子が、こだわり続けてきた「理想の死の迎え方」に真っ正面から向き合った。京都の診療…

「知らない人」と話すこと~津久見圭『障がい者よ、街へ出よう』

障がい者よ、街へ出よう―「網膜色素変性症」で視覚をなくしても、現役プロデュプラチナボックスAmazon図書館の地域図書のコーナーで出会った本。 作者の津久見圭さんは、1970年の大阪万博のパビリオンディレクターとして、携帯電話を初めて世界に紹介した人…

安全保障への理解が深まった~グレンコ・アンドリー『NATOの教訓』

NATOの教訓 世界最強の軍事同盟と日本が手を結んだら (PHP新書)作者:グレンコ・アンドリーPHP研究所Amazon 陰謀論より現実の敵、中国とロシアを直視せよ! NATO(北大西洋条約機構)には、世界で他に例のない実績がある。加盟国の本土が70年間、武力攻撃を受…

中盤の「対話」シーンに驚き~潮谷験『時空犯』

時空犯作者:潮谷 験講談社Amazon 私立探偵、姫崎智弘の元に、報酬一千万円という破格の依頼が舞い込んだ。依頼主は情報工学の権威、北神伊織博士。なんと依頼日である今日、2018年6月1日は、すでに千回近くも巻き戻されているという。原因を突き止めるため、…

とりとめないけど惹きつけられる~石井遊佳『百年泥』

百年泥 (新潮文庫)作者:石井 遊佳新潮社Amazon すごいものを読んだ。とにかく「とりとめがない」という一語に尽きる。さすが芥川賞。 冒頭は既に豪雨の場面だが、主人公が日本語教師としてインドのチェンナイに来た経緯をさかのぼるところまでは普通の小説だ…

死とどう向き合うか~井上靖『補陀落渡海記』×金原ひとみ『ミーツ・ザ・ワールド』

井上靖『補陀落渡海記』 補陀落渡海記 井上靖短篇名作集 (講談社文芸文庫)作者:井上 靖,曾根 博義講談社Amazon4月頭に家族で和歌山旅行に行った。時間の関係から、訪れることが叶わなかったが、旅先の候補として挙がっていた補陀落寺。その予習として読んだ…

忙しい現代人に刺さるロボットSF~チョン・ソンラン『千個の青』

千個の青作者:チョン ソンラン早川書房Amazon表紙イラストから受ける印象の通り、とても爽やか、でも力強い物語。あらすじとしては、Amazon等にある短めのものよりも少し長めの以下の方がストーリーの要点を抑えている。 故障のため安楽死させられる競走馬・…

研究報告風SFの衝撃~柴田勝家『アメリカン・ブッダ』

アメリカン・ブッダ (ハヤカワ文庫JA)作者:柴田 勝家早川書房Amazon もしも荒廃した近未来アメリカに、 仏陀を信仰するインディアンが現れたら――未曾有の災害と暴動により大混乱に陥り、国民の多くが現実世界を見放したアメリカ大陸で、仏教を信じ続けたイン…

F先生作品のような親しみやすいSF短編集~キム・チョヨプ『わたしたちが光の速さで進めないなら』

わたしたちが光の速さで進めないなら作者:キム チョヨプ早川書房Amazon著者あとがき、そして解説が素晴らしすぎると、自分の言葉で考えなくなるから 、 それはそれで問題だ。 特に短編集は、複数の作品に込められた作者の思いを読み解くのが、読後の「振り返…

義時ライジングの流れが理解できた~本郷和人『承久の乱』

承久の乱 日本史のターニングポイント (文春新書)作者:本郷 和人文藝春秋Amazon今年のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の放送直前の正月に「鎌倉殿サミット2022」という特番(NHKがあり、番組が立てたいくつかの「謎」に対して複数の歴史学者が持論を戦わせて…

レジ応援お願いします!~町田康『ギケイキ2』

ギケイキ2: 奈落への飛翔 (河出文庫 ま 17-4)作者:町田 康河出書房新社Amazon 相も変わらずの『鎌倉殿の13人』関連作品。 まだドラマには出ていない源義経が主人公で、南北朝時代から室町時代初期に成立した『義経記』を元に町田康がいわば超訳した小説。 だ…

やはり目立たない北条義時~坂井孝一『承久の乱』

承久の乱 真の「武者の世」を告げる大乱 (中公新書)作者:坂井孝一中央公論新社Amazon 今年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の時代考証担当の坂井孝一さんの著書。 ということは、歴史の勉強になるだけでなく、これから大河ドラマで描かれるストーリーを探る上で…

なぜ北条義時は「学習まんが日本の歴史」に登場しないのか~『鎌倉殿の13人』時代の日本史漫画2冊読み比べ

大河ドラマ『鎌倉殿の13人』が始まったこともああり、小中学生時代に読んでいた『学習まんが少年少女日本の歴史』(以下、小学館版)と石ノ森章太郎『新装版マンガ日本の歴史』(以下、石ノ森版)を比べて読んでみた。学習まんが 少年少女日本の歴史7 鎌倉幕…

熱くなれる新書~中川裕『アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」』

アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」 (集英社新書)作者:中川 裕集英社Amazon これは名著。タイトルから見ると、漫画『ゴールデンカムイ』の謎本、考察本の類かと思ってしまうところもあるが、著者は『ゴールデンカムイ』のアイヌ語監修を行っている千…

「課金マウンティング」と少年隊ラジオ~劇団雌猫『浪費図鑑 ―悪友たちのないしょ話―』

浪費図鑑 ―悪友たちのないしょ話―作者:劇団雌猫小学館Amazon2017年初刷なので、少し前の本になるが、各種の沼にハマってしまった人たちの「推し」への愛以上にその「出費」に目を向けた本。目次を見ると、どんな趣味が取り上げられているのかがわかる。 ◎は…

関連本読後にまた読み返したい~品田遊『ただしい人類滅亡計画 反出生主義をめぐる物語』

ただしい人類滅亡計画 反出生主義をめぐる物語 (コルク)作者:品田遊コルクAmazon この本を読むきっかけになったのは『変な家』。 話題になっていたということ以上に、やはり間取り図メインの本ということに惹かれた。 『変な家』の感想を簡潔に言うと、とて…

桃鉄に欲しい「保安条例」カード~なだいなだ『TN君の伝記』

TN君の伝記 (福音館文庫 ノンフィクション)作者:なだ いなだ株式会社 福音館書店Amazon前半の感想はこちら↓ pocari.hatenablog.com 『TN君の伝記』の後半の話は、特に今の政治の風景と重ねながら読んだ部分が多かった。 日本の歴史をしっかり辿ったのは中学…

『大奥』と『ベルばら』をつなぐ一冊~なだいなだ『TN君の伝記』

TN君の伝記 (福音館文庫 ノンフィクション)作者:なだ いなだ株式会社 福音館書店Amazon先月11/6・7に行われたビブリオバトルのWebイベント「Bib−1 グランプリ 2021」(ビブワン)はいつも以上に色々な本の紹介があり、とても楽しく視聴した。 『TN君の伝記』…

すべての人に寄り添いたい…と思ってしまったときにオススメの2冊『正欲』×『きみはだれかのどうでもいい人』

今、キム・ジヘ『差別はたいてい悪意のない人がする』という本を読んでいます。差別はたいてい悪意のない人がする: 見えない排除に気づくための10章作者:キム ジヘ大月書店Amazon自分も差別的な発言をしていることや、そもそも自分が持っている特権への自覚…

公的支援だけでは問題は解決しない~石井光太『本当の貧困の話をしよう』

本当の貧困の話をしよう 未来を変える方程式 (文春e-book)作者:石井 光太文藝春秋Amazon 日本は国民の7人に1人が貧困層。君たちが幸せをつかむために今知るべきこと。最底辺のリアルから始まる「新しい世界」のかたち。人生への向き合い方が「180度変わる」…

面白い!けど終わらせ方にモヤモヤ~品田遊『止まりだしたら走らない』

止まりだしたら走らない作者:品田遊コルクAmazonついこの前読んだ『名称未設定ファイル』の品田遊のデビュー小説。 pocari.hatenablog.com 自然科学部の都築くん(1年生)と新渡戸先輩(2年生)が東京駅から中央線に乗って高尾山まで行く間の会話をベースに…

なぜ彼女の書評に惹かれるのか~金原ひとみ『アンソーシャルディスタンス』

アンソーシャル ディスタンス作者:金原ひとみ新潮社Amazon毎週の習慣として、土日は朝ランニングに出かけて、帰り際に新聞(土曜日は朝日、日曜日は読売)を購入する。書評欄を読むためだ。(あと数独) 書評が本そのものよりも良いところは、「読み終わらな…

シンプルに楽しい短編集~品田遊『名称未設定ファイル』

名称未設定ファイル作者:品田遊コルクAmazon17編が入った短編集だが、ネット炎上や掲示板など、インターネット上の話題を扱ったものが多く、最も短いものは2ページの超短編。縦書きだけでなく、突然上下を逆さ*1にして横組みの掲示板小説に移行したりとバラ…

「ありのまま」とは何か?~沼田和也『牧師、閉鎖病棟に入る。』

牧師、閉鎖病棟に入る。作者:沼田 和也実業之日本社Amazon これまで牧師として見舞いに行っていた病院へ、患者として入院した著者。その病棟は、分厚い扉で仕切られ−。 「ありのままでいい」と語ってきた著者が、ありのままに生きられない人たちと過ごした閉…

読んで色々と考えた~野田聖子『私は、産みたい』『生まれた命にありがとう』

野田聖子さんの本を読んだのは中島岳志さんが著書『自民党 価値とリスクのマトリクス』で『私は、産みたい』を「名著」としていたからで、総裁選に名乗り出た4人の中では(マトリクス的に)最も共感できる場所に位置する野田聖子という政治家に興味があった…