Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

無限オジサンに無限に会いたくなる~川村元気監督『8番出口』

元々ゲームの概略は耳にしていたので、映画化の話を聞いて、まず、「このゲームをどうやって映画に??」という、その挑戦自体にとても興味を持った。 そして、ボレロが流れ、ゲームそっくりの画面が出る予告編を見てさらに期待は高まる。 今年はいつもより…

楽しいオタク語り~小泉悠ほか『ゴジラvs.自衛隊 アニメの「戦争論」』

8/17の読売新聞の日曜読書欄「昭和百年百冊」のコーナー担当は、Twitterでは、全裸中年男性という別名でも知られる軍事評論家の小泉悠だった。 www.yomiuri.co.jp日本が戦争を経験しなかった80年間を振り返ったとき、何がそれを成し得たのかについては、戦後…

映画化にあたっての改変部分への期待~カズオ・イシグロ『遠い山なみの光』

遠い山なみの光〔新版〕 (ハヤカワepi文庫)作者:カズオ イシグロ早川書房Amazon イギリスで暮らす悦子は、娘の自殺に直面した喪失感のなか、故郷の日々に思いを馳せる。 戦後の長崎、復興しつつある街で、彼女は佐知子に出会った。娘を一人で育て、男と渡米…

さまざまな移民とさまざまな歴史~安田浩一『団地と移民』

団地と移民 課題最先端「空間」の闘い (角川新書)作者:安田 浩一KADOKAWAAmazonラジオなどで、その声はよく聴いているものの、著書では10年ぶり!に触れる安田浩一さんの本。先日読んだ芝園団地の本に絡めて、ということに加え、近所の神代団地についても触…

夏の思い出その2~九段下周辺の戦争関連3展示

前日譚↓ pocari.hatenablog.com 先日訪れたハンセン病資料館の企画展示は、「戦争とハンセン病」で、しょうけい館との共催だった。 しょうけい館の場所は知っており、今年の夏は水木しげるの企画展示がありちょうど行きたいと思っていたところ。さらに今回、…

夏の思い出その1~国立ハンセン病資料館、清瀬市ひまわりフェスティバル

2年前からロードバイクに乗るようになり、多摩地域は、これまで以上にあちこち行くことになった。 今回は、東村山市、清瀬市について。 国立ハンセン病資料館 ハンセン病資料館は、ずっと行きたいと思っていたが、清瀬市のひまわりフェスティバルが開催中で…

波に乗れなかった青春傑作~山元環監督『この夏の星を見る』

期待度高く観に行ったものの「波に乗れなかった」と感じてしまった一作。 以下、良かった部分を挙げたあと、波に乗れなかった理由を考えたい。 おすすめポイント1:コロナと青春 この映画のおすすめポイントは、イントロダクションに巧くまとめられている。 …

ソングサイクルと善意~潮谷験『スイッチ 悪意の実験』

スイッチ 悪意の実験 (講談社文庫)作者:潮谷験講談社Amazon 夏休み、お金がなくて暇を持て余している大学生達に風変わりなアルバイトが持ちかけられた。スポンサーは売れっ子心理コンサルタント。彼は「純粋な悪」を研究課題にしており、アルバイトは実験の…

わたしを括らないで~年森瑛『N/A』

N/A (文春e-book)作者:年森 瑛文藝春秋Amazon図書館に行ったときによく見るのは「新刊」棚、「返却」棚、「特集」棚だろうか。 『N/A』は、一度「返却」棚で装丁に惹かれて手に取った。しかし、ほとんど読まずに返却。 その後、1か月くらい経ってから「特集…

新機軸のサイコパス野球漫画~平井大橋『ダイヤモンドの功罪』1~8

ダイヤモンドの功罪 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)作者:平井大橋集英社Amazon 「オレは野球だったんだ!」 運動の才に恵まれた綾瀬川次郎は何をしても孤高の存在。自分のせいで負ける人がいる、自分のせいで夢をあきらめる人がいる。その孤独に悩む中…

ウルトラマンエースの名言でモヤモヤ感は晴れるのか~大島隆『芝園団地に住んでいます―住民の半分が外国人になったとき何が起きるか』

芝園団地に住んでいます――住民の半分が外国人になったとき何が起きるか作者:大島 隆明石書店Amazon 2016年の米大統領選挙で排外主義の台頭を目の当たりにした著者は、取材から帰国した後、住民の半数が外国人の芝園団地(埼玉県川口市)に移り住む。日本人住…

説明の重要性~柳沢高志『菅と安倍』

菅と安倍 官邸一強支配はなぜ崩壊したのか (文春文庫)作者:柳沢 高志文藝春秋Amazon タイトルは、『菅と安倍』だが、実際の内容は、2015年から日本テレビ政治部の記者(官房長官番)として長年、近くにいた著者から見た菅義偉の官房長官~総理大臣時代につい…

2025年上半期よかった映画

上半期に観た映画は19本でした。以下、感想を書いたものにはそのリンクを、書いていないものについては一言感想を綴っていきます。 1月 pocari.hatenablog.com pocari.hatenablog.com 2月 pocari.hatenablog.com pocari.hatenablog.com 3月 Flow:台詞がない…

日米安保、県外移設、台湾有事~高橋哲哉『沖縄について私たちが知っておきたいこと』

沖縄について私たちが知っておきたいこと (ちくまプリマー新書 457)作者:高橋 哲哉筑摩書房Amazon 沖縄について改めて勉強したいと考えたとき、まずは入門ということで、信頼のレーベル「ちくまプリマー新書」から沖縄に関する本を探して読んでみることに…

できるかな?~斧屋『パフェとデートする。』

パフェとデートする。~ひとりパフェ活のすすめ~ (ホーム社)作者:斧屋集英社Amazonパフェ評論家の斧屋さんのことは知っていたが、何となく「孤高の研究者」タイプなのではないかと思っていた。 しかし、『胃が合うふたり』で猛獣のような2人に「パフェ先生…

生存者の方々の言葉、表情、生きる強さ~柴田昌平監督『ひめゆり』

経緯 5月に次のようなニュースが世間を騒がせた。 沖縄戦で犠牲になった学徒隊の生徒らを慰霊する「ひめゆりの塔」(沖縄県糸満市)について、自民党の西田昌司参院議員が3日、那覇市内で開かれたシンポジウムで、説明内容を「ひどい」「歴史の書き換え」な…

覚えられない四重否定タイトル~向坂くじら『いなくなくならなくならないで』

いなくなくならなくならないで作者:向坂くじら河出書房新社Amazon 死んだはずの親友・朝日からかかってきた一本の電話。時子はずっと会いたかった彼女からの連絡に喜ぶが、「住所ない」と話す朝日が家に住み着き――。デビュー作にして第171回芥川賞候補作。 …

ドラマと地続きの世界で~朱野帰子『対岸の家事』

対岸の家事 (講談社文庫)作者:朱野帰子講談社Amazonここ数年は1シーズンで1つか2つはドラマを見ている。 TVerなどの見逃し配信があるので、ずぼらな自分でも追いかけていける。 2025年4月からのシーズンは、「天久鷹央の推理カルテ」*1「対岸の家事」(+朝…

良作ミステリだけに映画が心配~浅倉秋成『俺ではない炎上』

俺ではない炎上作者:浅倉秋成双葉社Amazon これは良かった。 『六人の嘘つきな大学生』に感じた不満は、まるでそれを見透かされていたかのように、完全に解消した。 その不満とは、作品が主張するメッセージはとても良いのに、後半の伏線回収へのこだわりが…

ミーガンVSアヤちゃんに期待するしかない!~矢口史靖監督『ドールハウス』

確か1月にジークアクスの映画を観に行ったときに予告編で知り、それからずっと楽しみにしていた本作。 もちろん日本人形に対する怖さ、というのはある。しかし、それ以上に、「部外者による家族乗っ取られ作品」(例:洗礼、ジョジョ第一部)というカテゴリ…

ごらんよビールこれが夏だよ~岡本真帆『水上バス浅草行き』

水上バス浅草行き作者:岡本 真帆ナナロク社Amazon上坂あゆ美『地球と書いてって読むな』における「フルーツに生まれ変わるとしたら」の人ということで知った岡本真帆さんの歌集ということで読んでみた。 やっぱり短歌は良い。歌集は良い。 改めて考えると、3…

真似したくても真似できない~新井見枝香・千早茜『胃が合うふたり』

胃が合うふたり(新潮文庫)作者:千早茜,新井見枝香新潮社Amazon 2人のプロフィール 執筆している2人のうち、一人が自由人で破天荒。もう一人は、寛容で適度に几帳面。 2人の職業が作家と元書店員と聞けば、自由人なのは作家の方だろうと思うが、そうではな…

職場の体脂肪率はどのくらいが適正か~石田夏穂『ミスター・チームリーダー』

ミスター・チームリーダー作者:石田夏穂新潮社Amazon 理想を求める中間管理職の奮闘に切り込む、シニカルなボディ・メイキング文学 勤務先で係長に抜擢された後藤は、ボディビルの選手でもあった。ある日、社内の人材の無駄に切り込み組織の代謝を上げると大…

低糖質より低脂質~奥田昌子『これをやめれば痩せられる』

これをやめれば痩せられる―医学的に正しい ダイエットNG習慣ランキング作者:奥田 昌子東洋経済新報社Amazon 栄養や健康面についてまとめられた「食」の本は、時々読むようにしている。 意識せずとも日頃から多くの情報に触れてしまうため、こちらも知識を…

春が来るのを待つのか呼ぶのか?~五百旗頭幸男監督『能登デモクラシー』

五百旗頭監督の作品を観るのは初めて。 したがって、今回は、『はりぼて』の監督の作品で、能登の震災についても内容に含まれる、との程度のことしか知らずに映画を観に行った。ドキュメンタリー映画をそれほどたくさん見るわけではないため、これまで観た映…

AIBO供養からヘボコンまで~谷明洋『役に立たないロボット』

役に立たないロボット 日本が生み出すスゴい発想(インターナショナル新書) (集英社インターナショナル)作者:谷明洋集英社Amazon「弱いロボット」関連の本は、非常に気になっていて、これまで2度挑戦したのに挫折して放置。 しかし、今回、「弱いロボット」…

採用面接×十二人の怒れる男×デスゲーム~浅倉秋成『六人の嘘つきな大学生』

六人の嘘つきな大学生 (角川文庫)作者:浅倉 秋成KADOKAWAAmazon 面白く読んだ。 面白く読んだが、大きな違和感が残った。元々20代前半の人のオススメで読んだ本ということもあり、今の人たちは、こういうのが好きなのか?という世代間格差を感じてしまった。…

「モンスター」を解き放つ~コラリー・ファルジャ監督『サブスタンス』

デミ・ムーアがオスカーを獲るかで注目されていた作品ということは知っていたが、その設定を読み、フェイバリット漫画の楳図かずお『洗礼』を思い出し、行かなくては!となった。 しかし、実際に観てみると、『洗礼』がグロテスクな部分もありながら、最後は…

終末少女たちは何故コミケをめざすのか~カスガ『コミケへの聖歌』

コミケへの聖歌作者:カスガ早川書房Amazon 人類がほぼ絶滅したあとの世界を描くポストアポカリプスもの。 それなのに、女子高生がサバイバルというよりは、日常生活を、趣味を続けるタイプの物語は読んだことがある。終末ツーリング 1 (電撃コミックスNEXT)…

満足&肩透かし~滝川さり『ゆうずどの結末』

ゆうずどの結末 (角川ホラー文庫)作者:滝川 さりKADOKAWAAmazon ちょっとタイトルが澤村伊智っぽく、信頼の角川ホラー文庫ということで120%の期待を持って挑んだ本。ホラー小説自体、それほど多くを読んでいないので、そもそも、これがホラー「ど真ん中」な…