Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

2024-09-01から1ヶ月間の記事一覧

『虎に翼』×上野千鶴子『ごめんなさいと言わなくてもすむ社会を手渡すために』

こんな世の中に誰がした? ごめんなさいと言わなくてもすむ社会を手渡すために作者:上野千鶴子光文社Amazon 『虎に翼』が終わった。 今年見た映像作品の中では、最も考えさせられ、心揺さぶられた作品と言えると思う。 戦前から始まった物語の最終回第130話…

結末を思い出せないくらい異常な小説~吉田修一『湖の女たち』

湖の女たち(新潮文庫)作者:吉田修一新潮社Amazon 異常な小説でした! そもそも映画『愛に乱暴』を観た帰りに本屋で原作小説『愛に乱暴』が醸す物語としてしっかり構築された雰囲気を感じて、久しぶりに吉田修一の小説を読みたい!と思っていたところ。 ち…

5-1=6という考え方~広瀬浩二郎・相良啓子『「よく見る人」と「よく聴く人」』

「よく見る人」と「よく聴く人」 共生のためのコミュニケーション手法 (岩波ジュニア新書 975)作者:広瀬 浩二郎,相良 啓子岩波書店Amazon 目の見えない人や耳の聞こえない人の本が好きで、定期的に読んでいる。 自分はそこに何を求めているのか漠然としてい…

2024年ベスト「落差」&ベスト純文学作品~砂川文次『ブラックボックス』

ブラックボックス (講談社文庫)作者:砂川文次講談社Amazon 令和6年最大の「落差」が観測された。 ちょうど、先日聴いていた荻上チキsessionで、今年上半期の芥川賞受賞作家である松永K三蔵(受賞作は『パリ山行』)が、純文学の魅力を「何でもあり」と語って…

大技を支える絶妙なリアリティライン~麻耶雄嵩『隻眼の少女』

隻眼の少女作者:麻耶 雄嵩文藝春秋Amazon(今週のお題「好きな小説」)先日の『あぶない叔父さん』不完全燃焼からそのままの流れで読んだ、同じ麻耶雄嵩作品で、日本推理作家協会賞と本格ミステリ大賞をダブル受賞した作品。 麻耶雄嵩のデビュー作『翼ある闇…

傑作かどうかは俺が決める!~北沢陶『をんごく』×押山清高監督『ルックバック』

映画『ルックバック』は、傑作と評価が高い。 実際に見てみると、確かに、よく挙げられるスキップのシーンも含めて、原作以上の表現、アニメならではの印象的な表現も多かったのは素人目にも歴然としていて、原作から加点要素こそあれ、減点要素がほとんどな…

蓄積する「嫌な感じ」に立ち向かう江口のりこ~森ガキ侑大監督『愛に乱暴』

映画館に行くときは、時間と場所だけを決めて、何を観るかが決まっていないときがよくある。今回、日曜の午前中早い時間に開始という条件で考えて、『ソウルの春』『サユリ』『侍タイムスリッパ―』などの候補から、吉田修一原作ということで気になっていた『…