Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

2022-01-01から1年間の記事一覧

2022年下半期の振り返り(自転車関連、ドラマ、映画、音楽)

2022年上半期はまとめをしたので下半期もまとめをしようと思います。 下半期は大きな傾向がいくつかあります。 自転車関連マイブーム(本) 引き続きフェミニズム関連(本) ドラマを多めに見た 映画をたくさん見た pocari.hatenablog.com 自転車関連ベスト …

岸井ゆきのとガラーン感~三宅唱監督『ケイコ 目を澄ませて』

生まれつきの聴覚障害で両耳とも聞こえないケイコは、再開発が進む下町の小さなボクシングジムで鍛錬を重ね、プロボクサーとしてリングに立ち続ける。嘘がつけず愛想笑いも苦手な彼女には悩みが尽きず、言葉にできない思いが心の中に溜まっていく。ジムの会…

「音のない世界」とか言われても困る~好井裕明『「感動ポルノ」と向き合う』

「感動ポルノ」と向き合う: 障害者像にひそむ差別と排除 (岩波ブックレット NO. 1058)作者:好井 裕明岩波書店Amazon 今回読んだ好井裕明さんのブックレットは、タイトルに書かれている『「感動ポルノ」と向き合う』という主旨が独特で、そこに自分はとても共…

「THE FIRST」なアニメ体験~『THE FIRST SLAM DUNK』

「井上雄彦の絵がそのまま動いているアニメ」そうなんだろうな、と思って、わかって見に行って、まさにそうとしか形容のできない映画が出て来て、わかっていたのに衝撃を受ける。 実際に見るとしょっぱなから心を奪われ、手書きキャラクター5名が向こうから…

ドラマ『silent』最終回とこれから

いろいろと結びつけて書きたい作品や本もあるけれど、まずはシンプルに感想を。 最終回の感想 最終回は、求めるハードルが低かったこともあり満足しました。(ハードルが低くなったのは前回までで、前半で提示した全部を解決する気はないんだな、ということ…

湘南は晴れているか(2022湘南国際マラソンレビュー)(その1)

湘南国際マラソンこれまでのあらすじ 湘南国際マラソンは2015年以降、毎年参加している思い入れのある大会。 その足跡を簡単に辿ると、初参加かつ自身初のサブ4達成の2015年大会以来、順調にタイムを伸ばして2018年に待望のサブ3.5を達成。 しかし、かすみが…

1960年代のフランス×現代日本~オードレイ・ディヴァン『あのこと』

『パラサイト 半地下の家族』でアカデミー賞®4冠に輝いたポン・ジュノ監督が、審査員長を務めた2021年ヴェネチア国際映画祭での最高賞受賞を皮切りに、世界の映画賞を席巻。決して見逃せない傑作が、ついに日本にも衝撃の嵐を送りこむ!舞台は1960年代、法律…

中絶のスティグマを減らす方向に舵を取らない日本~塚原久美『日本の中絶』

日本の中絶 (ちくま新書 1677)作者:塚原 久美筑摩書房Amazon小説『僕の狂ったフェミ彼女』で取り上げられていて気になった「中絶」の問題。 もう少ししっかり勉強したいと思って読んでみたのが、今年8月に出た本書。目次は以下の通り。 第1章 なぜ中絶はタ…

再読時の感動が深い歴史ミステリ~深緑野分『ベルリンは晴れているか』

ベルリンは晴れているか (ちくま文庫)作者:深緑野分筑摩書房Amazon 1945年7月、ナチス・ドイツの敗戦で米ソ英仏の4カ国統治下におかれたベルリン。ドイツ人少女アウグステの恩人にあたる男が米国製の歯磨き粉に含まれた毒による不審死を遂げる。米国の兵員食…

戸惑いと感動と~新海誠監督『すずめの戸締まり』

今回、どの程度がオープンになっているのかあまり理解していないが、話題作は徐々にネタバレOK圧が高くなっていくので、早く行っておきたいと思っていた。 結局公開1週後に観たが、観るのを急いだのは公開直後に「震災の映画」ということを聞いたため。「震…

人口減少と「男性の育児休業取得」~メアリー・C・ブリントン『縛られる日本人』

縛られる日本人 人口減少をもたらす「規範」を打ち破れるか (中公新書)作者:メアリー・C・ブリントン中央公論新社Amazon 人口減少が進む日本。なぜ出生率も幸福度も低いのか。日本、アメリカ、スウェーデンで子育て世代にインタビュー調査を行いデータとあわ…

山に挑む人たち~NHK『激走!日本アルプス大縦断』×ドニ―・アイカー『死に山』

息を飲むような雄大な眺め、漆黒の闇に浮かぶ仲間の灯、烈風に晒され追いつめられる自分、悲鳴をあげる身体、絶望的な距離感、何度も折れそうになる自分の心、目指すのはあの雲の彼方。日本海/富山湾から太平洋/駿河湾までその距離およそ415Km。北アルプスか…

被害者家族の思いと少年Aの「更生」~奥野修司『心にナイフをしのばせて』

心にナイフをしのばせて (文春文庫)作者:奥野 修司文藝春秋Amazonこの表紙とタイトルが ずっと以前から気になっていた本。その印象から小説だと思い込んでおり、改めて手に取って初めて、ルポルタージュだと気がついた。 ましてや題材としている事件が自分の…

友情!ダンス!アクション!インド独立!~S・S・ラージャマウリ監督『RRR』

ワクチン接種後に観る映画探し 今日は東京都庁に4回目のワクチン接種に行ってきた。 飛び石連休の中日の平日を予約したのは、新宿でワクチン接種後、90分くらいの映画を観て、ついでに花園神社(酉の市)に行って帰ろうと思っていたからだった。が、ワクチン…

サザエさん症候群から抜け出したい~竹林亮監督『MONDAYS』

とある小さな広告代理店で働く主人公・吉川朱海(円井わん)は、「この仕事が終わったら、憧れの人がいる大手広告代理店へ転職する」と燃え上がる野心を持って仕事に取り組んでいた。しかし、次から次に降ってくる仕事で、余裕はゼロ。プライベートも後回し…

小説⇔ドラマの往復感想(ネタバレあり)~相沢沙呼『medium』×ドラマ『霊媒探偵・城塚翡翠』

medium 霊媒探偵城塚翡翠 (講談社文庫)作者:相沢沙呼講談社Amazonもちろん書店で何度も見かけていたし、ミステリとしての評判も聞いていたので、その名は知っていましたが、清原果耶が主演、と聞き、ドラマを見てみよう、それなら小説も読んでおこう!…

脱「思いやり」で社会を変える~神谷悠一『差別は思いやりでは解決しない』

差別は思いやりでは解決しない ジェンダーやLGBTQから考える (集英社新書)作者:神谷悠一集英社Amazon 「ジェンダー平等」がSDGsの目標に掲げられる現在、大学では関連の授業に人気が集中し企業では研修が盛んに行われているテーマであるにもかかわ…

このtwitterアイコンは著作権的にあり?なし?~井上拓『SNS別最新著作権入門』

SNS別 最新 著作権入門: 「これって違法!?」の心配が消える ITリテラシーを高める基礎知識作者:井上 拓誠文堂新光社Amazon著作権の話は定期的に最新情報を確認しておきたいと思っている。「違反しているけど黙認されている場合」というグレーゾーンが非常に…

19世紀のスイス、ドイツに思いを馳せる~『図説 アルプスの少女ハイジ 増補改訂版』

図説 アルプスの少女ハイジ 増補改訂版: ハイジでよみとく19世紀スイス (ふくろうの本)作者:ちば かおり,川島 隆河出書房新社Amazon読みたくなる本(小説以外)の条件として、自分は以前から「読みやすい・読み通せそう」という点を重視していた。 さらに最…

オリジナル・ラブ20枚目のアルバム『MUSIC, DANCE & LOVE』と積み減らし

【Amazon.co.jp限定】MUSIC, DANCE & LOVE [完全生産限定盤] [CD + DVD] (Amazon.co.jp限定特典 : メガジャケ 付)アーティスト:Original LoveビクターエンタテインメントAmazon当初、9/21に発売を予定していたが、発売が11/16に延期となっていたオリジナ…

ドラマ『silent』、映画『LOVE LIFE』と当事者キャスティング

今年は、アカデミー賞受賞作品の『コーダ あいのうた』が当事者キャスティングで注目されたのと対照的に、ノミネートで話題になった邦画『ドライブ・マイ・カー』では、手話(韓国手話)を使う役を聴者が演じていて悪い意味で話題になり、「当事者キャスティ…

どんなに離れていても愛することはできる~深田晃司監督『LOVE LIFE』

深田晃司監督は、『よこがお』を結局観に行けなかったのが心残りだったので、今回、他の映画と迷った挙句、上映時間や劇場*1も吟味して観に行くことに。 敬太君 この映画で「序盤に起きる出来事」の破壊力は本当に凄まじい。 公式HPのあらすじで書かれている…

記憶の中の小説VS映画~蜷川幸雄監督『青の炎』

青の炎二宮和也Amazonこの映画は、ずっとPrimeVideoのウォッチリストに入っていたが、そうなってしまったら、よほどの機会がないと観ないことになる。というのがパターンだ。(本は図書館の者は読むが、買ったら読まないのと似ている) しかし、Twitter上で…

紀元前から現代までを18の漫画でつなぐ~茂木誠・大久保ヤマト 『バトルマンガで歴史が超わかる本』

バトルマンガで歴史が超わかる本作者:茂木誠,大久保ヤマト飛鳥新社Amazon歴史と漫画の相性が良いことはよく知っている。駿台予備校世界史講師による本ということもあり、これはかなり期待できるのではないか? と思っていたが、店頭で本を実際に見ての印象は…

「叱られる小説」と思って読んだら「呆れられる小説」~ミン・ジヒョン『僕の狂ったフェミ彼女』

僕の狂ったフェミ彼女作者:ミン・ジヒョンイースト・プレスAmazon 以前「狂ったフェミ彼女」の本を読んだことがある。 pocari.hatenablog.com この本(『私たちにはことばが必要だ』)の衝撃(というか罵倒され体験)は自分にとって過去最大級に大きく、その…

作品テーマを見抜けなかった~ジョーダン・ピール『NOPE』

今回、事前情報を出来るだけ遮断して観に行き、「UFOの映画らしい」程度のことしか知らなかった。そのことで逆に、映画館に入ってからもっと知っておくべきだったのでは?と不安になったが、広い牧場と空が絵的に美しい映画で、内容も、ホラーというかパニッ…

あみ子は可哀想?~今村夏子『こちらあみ子』

こちらあみ子 (ちくま文庫)作者:今村夏子筑摩書房Amazon今村夏子『星の子』のラストは、自分にとって衝撃だった。物語のセオリー通りに進まない話だったからだ。 pocari.hatenablog.com しかし、その後、映画を観て改めて考え、読者の押し付けた幸福の物語に…

タイル楽しい~加藤郁美『にっぽんのかわいいタイル 昭和レトロ・モザイクタイル篇』

増補新版 にっぽんのかわいいタイル 昭和レトロ・モザイクタイル篇作者:加藤郁美国書刊行会Amazon 今年の夏休みは、岐阜への帰省にかこつけて、あいちトリエンナーレ(今年から名称が変わり、「トリエンナーレ」が取れて「あいち2022」となった)に行ってき…

ブライアンを愛でる映画~『ブライアン・ウィルソン 約束の旅路』

ビーチボーイズは、自分にとって本当に思い入れのあるグループで、ビートルズはむしろビーチボーイズとの関連から聴き始めた。すなわち『ラバーソウル』に対抗して『ペットサウンズ』が出来、『ペットサウンズ』に対抗して『サージェントペパーズ』が出来た…

「フラグ」に逆らって生きる~大森立嗣監督『星の子』

今村夏子『星の子』は、自分にとって衝撃をもって受け止めた作品だけに、映画では、どのように改変されているのか?そして芦田愛菜はどう演じているのか? 色々と興味を持ってみた映画だった。 そして、同時期に読んだ今村夏子『こちらあみ子』が、『星の子…