Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

2022-01-01から1年間の記事一覧

それぞれのリトルホンダを育てるということ~長沢栄治監修『13歳からのイスラーム』

13歳からのイスラーム作者:長沢 栄治かもがわ出版Amazonイスラームについての本を読むのは久しぶりだ。 過去のブログを振り返ると、5年前くらいに少し固めて読み、それ以降は、本としてはあまり読んでいなかった。 ということもあり、今回、リハビリがてら易…

『さかなクンの一魚一会』×『さかなのこ』

学ラン姿で釣りをするのん そのビジュアルに一目惚れして待ちに待った映画『さかなのこ』*1。 まずは原作で予習を済ませて万全の体勢で迎え撃った。 さかなクン『さかなクンの一魚一会』 さかなクンの一魚一会 ~まいにち夢中な人生!~作者:さかなクン講談…

「しかたがない」と犠牲を強いてきたのは誰か~平井美帆『ソ連兵へ差し出された娘たち』

ソ連兵へ差し出された娘たち (単行本)作者:平井 美帆集英社Amazon戦争の話というと、1945年8月15日を機に終わり、その後は混乱期のどん底から立ち上がっていく。そのイメージが強かった。*1 しかし、ラジオでフィリピンや中国の残留孤児について扱った映画『…

カモン!(少し)高いところ!~『東京もっこり散歩』×『東京 街なか山さんぽ』

東京もっこり散歩──街中のふくらみを愉しむ作者:いからし ひろき自由国民社Amazon東京 街なか山さんぽ 地形と歴史を楽しむ超低山ガイド作者:江戸楽編集部メイツ出版Amazon 丘を越え、行こうよ。古墳、築山、富士塚…もっこりでほっこり。 日本の国土は山地が…

井上荒野は君に語りかける~井上荒野『生皮 あるセクシャルハラスメントの光景』

生皮 あるセクシャルハラスメントの光景作者:井上 荒野朝日新聞出版Amazon 小説講座の人気講師がセクハラで告発された。なぜセクハラは起きたのか? 家族たちは事件をいかに受け止めるのか? 被害者の傷は癒えるのか? 被害者と加害者、その家族、受講者たち…

ラスト1ページの衝撃~今村夏子『星の子』

今村夏子の作品には前々から興味があった。 特に、豊崎由美×大森望の「文学賞メッタ斬り」の芥川賞予想の企画(ラジオ)で、候補作に入るたび、豊崎由美の「読む楽しさ」がこぼれ落ちるような評が尋常でなかったことが大きい。 さらに、枡野浩一×古泉智浩のp…

楽しい仕掛けに満ちたびっくり箱のような本~横道誠『唯が行く! ー当事者研究とオープンダイアローグ奮闘記』

唯が行く! ー当事者研究とオープンダイアローグ奮闘記作者:横道 誠金剛出版Amazon 双極性障害の家族を持ち自身も発症の疑いを持つ大学生、唯(ゆい)は大学のサークル活動を起点として自助グループの運営にかかわるようになり、当事者研究とオープンダイアロー…

自転車の夢、遠のく(笑)~栗村修『今日から始めるスポーツ自転車生活』×高千穂遙『ヒルクライマー宣言』

(前回までのあらすじ) 高千穂遙『ヒルクライマー』は、小説ながらも、素人が自転車にのめり込む様子が描かれており、舞台が生活圏に近いことや、普段ランニングをしていて目につく自転車乗りの人たちの生態がよくわかる内容だった。 高千穂さんがロードバ…

対話を通じた子どもたちの変化に涙~豪田トモ監督『こどもかいぎ』

映画は「これが観に行きたい!」と決まっている時もあるが稀で、今回も 8/1の午後にiPhoneのバッテリー交換に行く、iPhonを預けている時間に見られる映画があれば… 場所はAppleストアのある有楽町か新宿 映画コムで気になる映画を探して、上映時間を確認して…

「坂馬鹿」たちに鼓舞される小説~高千穂遙『ヒルクライマー』

ヒルクライマー (小学館文庫)作者:高千穂遙小学館Amazon近藤史恵さんの一連の自転車ロードレース小説の関連でAmazonのオススメにこの本が出てきたときは、「同姓同名の人がいるんだな、しかも作家で…」と思ってしまった。 しかし、確認すると「クラッシャー…

ツール・ド・フランス2022後半×近藤史恵『スティグマータ』

news.jsports.co.jp さて、終わってみると、1週目のポガチャルの優勢は、2週目以降、ユンボ・ヴィスマの総合力によって抑えられ、マイヨ・ジョーヌと山岳賞はヴィンゲゴー、マイヨ・ヴェールはファンアールトが取り、つまり4賞*1のうち3賞をユンボ・ヴィスマ…

行きたい!が増える~岡部敬史、山出高士『見つける東京』

見つける東京作者:岡部 敬史東京書籍Amazon岡部敬史・文、山出高士・写真による「目でみることば」シリーズは、手に取りやすいサイズ、写真中心で次々とページをめくりたくなる本だが、この本は、その魅力をさらに倍化した。 構成は、同一キーワードに関する…

栗村修さんの名解説とともに~近藤史恵『サヴァイヴ』

ツール・ド・フランス(ジロ・デ・イタリア)については、Amazonプライム経由で見られるデイリーハイライトと関連番組を見ているが、その時に出てくる解説でも特に好きなのは、栗村修さん。 元選手とは思えない軽々しいトークとダジャレが素晴らしい。 どう…

ツール・ド・フランス2022前半×近藤史恵『エデン』

エデン (新潮文庫)作者:近藤 史恵新潮社AmazonAmazonプライムのJSPORTS(お試し期間無料)にも登録し、ジロ・デ・イタリアの振り返りとツール・ド・フランスの追っかけを始めた。 ジロ・デ・イタリアも約3週間かかるレースなので、休息日にまとめて7~9レー…

ツール・ド・フランスを迎撃~近藤史恵『サクリファイス』×映画『パンターニ/海賊と呼ばれたサイクリスト』

今年は、色んなタイミングが重なり、ツール・ド・フランスを見てみようということになった。 ロードレースの小説の傑作と言われる『サクリファイス』のシリーズを、これを機会に読み直してみよう、そういう流れになるのは当然のことだ。 ということで、ツー…

みんな最悪なんだからみっともなく生きていい~ヨアキム・トリアー監督『わたしは最悪。』

水曜日の仕事終わりに時間が取れそうと思ったとき、ド派手なエンタメや主張のはっきりした作品「ではない」作品を観ようと思って選択した映画。 で、実際、観に行って良かった。 こういう風に、何だかわからないものを観に行って、何だかわからない感じで帰…

2022年上半期の振り返り(鎌倉関連、SF、映画、そのほかのベスト)

5月以降は特に定期的に更新が出来たこともあり、上半期振り返りをしようと思い立ちました。 上半期は大きな傾向が3点あり、この3点に沿ってそれぞれのベストを挙げます。 『鎌倉殿の13人』関連の、源平合戦~鎌倉時代の本が多い なぜか珍しくSFが多い 映画…

悪人が裁かれない嫌な事件~『そして陰謀が教授を潰した ~青山学院春木教授事件 四十五年目の真実~』

そして陰謀が教授を潰した ~青山学院春木教授事件 四十五年目の真実~ (小学館文庫)作者:早瀬圭一小学館Amazon 教授による教え子強姦事件は有罪か、無実か。本作は、1973年に青山学院で起きた「教授による女子学生強姦事件」の真相を、 元新聞記者である著…

アニメ『平家物語』×映画『犬王』×小説『平家物語 犬王の巻』

アニメ『平家物語』 【Amazon.co.jp限定】平家物語 Blu-ray box(「監督・山田尚子、音楽・牛尾憲輔スペシャルインタビュー」視聴コード付)ポニーキャニオンAmazon『平家物語』を見終わったのは、まさに『犬王』を観る一週間前くらいのことだった。 見始めた…

サーリャは今も頑張れているのか~川和田恵真監督『マイスモールランド』

『マイスモールランド』は、同僚から最近見た映画として薦められて、その名を知った。 クルド人難民の映画と聞いて気にはなったが、「社会問題」をテーマにしたドキュメンタリー映画(と勘違いしていた)は、少し敷居が高い。『シン・ウルトラマン』など観た…

軽い気持ちで読んだら歴史的名作でした~高木彬光『成吉思汗の秘密』

成吉思汗の秘密 新装版 (光文社文庫)作者:高木 彬光光文社Amazon またもや『鎌倉殿』関連の読書。『成吉思汗の秘密』というタイトルからは、昔流行した『人麻呂の暗号』を思い出すが、この本は名探偵が登場するタイプのミステリであることが大きな特徴だ。 …

「用例採集」の現場~飯間浩明『知っておくと役立つ街の変な日本語』

知っておくと役立つ街の変な日本語 (朝日新書)作者:飯間 浩明朝日新聞出版Amazon 飯間浩明さんは、三省堂国語辞典の編纂に携わる「辞書の人」として名前は知っていたが本を読むのは初めて。 今回は、図書館で目立つ陳列がされていたので、VOWネタみたいなも…

芸術とAIと青春~斜線堂有紀『ゴールデンタイムの消費期限』

ゴールデンタイムの消費期限作者:斜線堂有紀祥伝社Amazon斜線堂有紀の本は初めて。そもそもは5月に見た映画『死刑にいたる病』からの連想で著作『恋にいたる病』経由でその名を知り、今回、Amazonでレビュー数の多かった本書を読んでみた。 ミステリ作家の中…

何度も体験したいアトラクション~『トップガン マーヴェリック』

「前作を予習してから」とも思っていたが、それだと結局観ないことになるかもしれない。「前作を観なくても楽しめる」との友人からのアドバイスも受けて水曜日の仕事帰りに急いで観に行った。感想はSU・GO・I !!!この映画の良さは何かと言えば、映画とい…

「相互感謝」でもあり「善意の押し付け」でもある~『31cm~ ヘアドネーションの今を伝え、未来につなぐ~』

31cm~ ヘアドネーションの今を伝え、未来につなぐ~(株)KuLaScipAmazon 髪をもらう人、髪をわたす人は、何を感じているのだろう。 ヘアドネーションを日本で最初に始めた非営利団体Japan Hair Donation & Charity (NPO法人JHD&C〈ジャーダック〉)初の監修本。…

上半期ベストの「読みやすいSF」~アンディ・ウィアー『プロジェクト・ヘイル・メアリー』

プロジェクト・ヘイル・メアリー 上作者:アンディ ウィアー早川書房Amazonプロジェクト・ヘイル・メアリー 下作者:アンディ ウィアー早川書房Amazon 上半期読んだ小説では「ベスト」と言える、万人にオススメできる本でした! 地味な序盤 今年は、アトロク由…

まじめか!~潮谷験『エンドロール』

エンドロール作者:潮谷 験講談社Amazon 『時空犯』でリアルサウンド認定2021年度国内ミステリーベスト10第1位に輝いた著者の、待望の長編!202X年。新型コロナウイルスのせいで不利益を被った若者たちの間で自殺が急増する。自殺者の中には死ぬ前に自伝を国…

もっと『メギドの火』っぽいと良かったな~樋口真嗣監督『シン・ウルトラマン』

自分はウルトラマン世代というには少し年代が下で、リアルタイムの放送は「ウルトラマン80」で、再放送(マン、新マン、セブン、タロウ、エース、レオ)をちょこちょこ見ていたが、怪獣大百科はよく読んでいた。 その後、関連著作を読んだことをきっかけに5…

痛い!でもまた観たい~白石和彌監督『死刑にいたる病』

これは宮﨑優の映画 W主演の阿部サダヲ、岡田健史の演技は勿論、印象に残る。 それでも、やはり、加納灯里役の宮﨑優さんの映画だったでしょう。この映画は。 それなのに、パンフレットを買ったら、期待していた彼女の情報がほとんどなくて残念。 パンフレッ…

いつか私が。いつか誰かが。~佐々涼子『エンド・オブ・ライフ』

エンド・オブ・ライフ (集英社インターナショナル)作者:佐々涼子集英社Amazon ベストセラー『エンジェルフライト』『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている』の著者、佐々涼子が、こだわり続けてきた「理想の死の迎え方」に真っ正面から向き合った。京都の診療…