Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

サザエさん症候群から抜け出したい~竹林亮監督『MONDAYS』

とある小さな広告代理店で働く主人公・吉川朱海(円井わん)は、「この仕事が終わったら、憧れの人がいる大手広告代理店へ転職する」と燃え上がる野心を持って仕事に取り組んでいた。しかし、次から次に降ってくる仕事で、余裕はゼロ。プライベートも後回し。月火水木金土日、休みなく働き続けていた、ある月曜日の朝。後輩2人組から、こう告げられる。「僕たち、同じ一週間を繰り返しています!このタイムループを、夢の出来事だと思って忘れないために、合図を覚えてください。鳩です…」。ひとり、またひとりと、「白い鳩」の合図に導かれ、タイムループの中に閉じ込められているのを確信する社員たち。だが、その脱出の鍵を握る永久部長(マキタスポーツ)は、いつまで経ってもタイムループに気づいてくれないのだった。

10月19日に観に行った。
先行公開期間中だったからか最終上映時間だったからなのかわからないが、久しぶりにパンフレットを買えなかった作品。
ということで、自分の中で区切りがつかずに、感想を書くのを放置していたが、そうすると全部忘れて「観なかった」ことになってしまうので、急いで感想を書く。


観る前は、もしかしたら『カメラを止めるな!』みたいな、あっと驚く仕掛けのある作品か?とも思ったが、純粋なタイムループもので、ループから脱出したらハッピーエンドという、本当に見る前に思い描いた通りのシナリオ。映画的な感動もあるけれど、「号泣」みたいなタイプの作品ではない。


ただ、ここで提示されるメインテーマは、自分にとっては「刺さる」作品だった。
僕らは、本当に、変わらない日々の繰り返しに疲れ果てるばかりで、本当はやりたいことを後回しに、もしくは塩漬けにしていないか、と。


この種の作品として、『ビューティフルドリーマー』なんかも「終わらない日常」を描いた作品として評価されるが、「文化祭」の前の繰り返しと「月曜日」の前の繰り返しでは、全く意味が異なる。
サザエさん』症候群などという言葉がある通り、自分なんかは、日曜の夕方から既に「月曜日」に備えて身構え、心に鬱が侵され始めている。(だから日曜日のライブはやめて欲しい、というのは心の底からの願い。)
だから、繰り返しが始まるタイミングを月曜日の朝に設定して、タイトルを『MONDAYS』としたのは本当に上手いと思う。


さらに、この映画が上手いのは、「このままでいいの?人生はすぐに終わるよ」みたいな、ある種、自己啓発的な、ありきたりのメッセージを、直接には出さず、部長の未完成の漫画内のキャラクターの台詞として言わせているところ。
しかも、ループするコメディがメインのストーリーの中で、サブリミナル的に小出しに見せられるので、ストーリーの流れに頭を使わない分、そのメッセージを真面目に受け止める気持ちになり、コメディ映画を観ながらも脳のバックグラウンドでは、自分を見つめ直すモードが並行して進行していた。


ということで、まさに、竹林亮監督(脚本も)の狙い通りに、自分にとっては「白い鳩」となる作品になった。時間の使い方を見直さないと。

コロナ禍の生活でも顕著に感じましたが、僕の生活ではたまに、これタイムループしてるんじゃないかと感じる瞬間があります。あれ、この議論前もしたよね!?とか、この仕事が終わったら全てが変わる!と毎回思っていたり。時間が過ぎるのはとても早いからこそ、今という時間にしっかりと向き合って生きていかなければとよく思います。本当にしっかりと向き合えた時に、初めてぐるぐるとしたループから螺旋階段になり、ゆっくり進んでいけるのかなとか想像しながら、また日々を繰り返しています。この映画が、見る人の心の窓に激突する白い鳩になることができれば嬉しいです。
fansvoice.jp

なお、役者さんは、みんな良かった。
特にポスターにも出ているメインの3人は、職場にいそうで、いつリアルな同僚が自分に「ハトです」ポーズを出してくるのか心配になってくる笑

連想で…

ところで、サザエさん症候群に関連していつも思い出すのは、そのものずばりのタイトルである倉知淳日常の謎ミステリ『日曜の夜は出たくない』。
2020年12月に15年ぶりの続編(4作目)が出ているということで、久しぶりに読み直してみようかな。