Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

似てますよね~『見えない目撃者』VS『アンナチュラル』

見えない目撃者

見えない目撃者

見えない目撃者

  • 発売日: 2020/01/18
  • メディア: Prime Video

警察官として将来を有望視されながら、自らの過失による事故で視力も大切な弟も失い、失意の底にあった浜中なつめ(吉岡里帆)は、ある夜、車の接触事故に遭遇。なつめは慌てて立ち去る車の中から助けを求める少女の声を耳にするが、彼女の訴えは警察には聞き入れてもらえない。視覚以外の人並外れた感覚、警察学校で培った判断力、持ち前の洞察力から誘拐事件だと確信するなつめは、現場にいたもう一人の目撃者高校生の国崎春馬(高杉真宙)を探し出す。

事件に気づきながら犯人を見ていない目の見えないなつめと、犯人を見ていながら少女に気づかなかった高校生の春馬。
“見えない目撃者”たるふたりの懸命の捜査によって、女子高生連続猟奇誘拐殺人事件が露わになる。
その真相に近づくなつめたちに、犯人は容赦なく襲いかかる。絶命の危機を前に、彼女らは、誘拐された女性を助けることができるのか。

『見えない目撃者』は、ノベライズ版を読んだあとで、映画そのものへの高評価を聞き、とても気になっていた作品。
実際に観てみると、予想を上回る面白さ。
毎度のことだが、出だしと、追いかけっこの部分以外は(ということは全体のストーリーについて)ほとんど記憶に残っていなかったこともあるが、何人かの主要キャラクターが命を落としてしまうこともあり、最後まで気が抜けない映画となった。


そして何より吉岡里帆の演技が光る。
自分は、ドラマをほとんど見ないので、吉岡里帆を見るのはもっぱらCM。
演技が巧いと感じたのは、CMと印象が違うのは当然として、緊張感、神経質、不安というセリフ以外の部分で表現される要素がしっかり伝わってきたから。
そこには、目の見えない登場人物を演じるという特殊な状況が作用しているのかもしれないが、この映画は圧倒的に吉岡里帆の映画となっていた。


俳優でもう一人挙げるなら、連続殺人犯を演じる浅香航大
今回、死体や遺体損壊映像が比較的多く、それだけで嫌な気持ちになったが、その嫌な気持ちを引き受けるにふさわしいサイコパスぶりを発揮している。
追いかけっこのシーンも、吉岡里帆を追いかける浅香航大の足取りはゆっくりで、実際の犯人の行動と考えると疑問符がつくが、浅香航大の「怖さ」ですべてを乗り切った。


そして、脚本的には、なつめ(吉岡里帆)の推理のロジックがわかりやすいということが大きい。推理の部分が饒舌だったり、難解だったりすると、全体的なスピード感が損なわれるだけでなく、頭脳明晰ななつめであれば、 目が見えないというハンデがあっても、「やってくれる」と視聴者に思わせる。(このあたりは元の韓国映画や中国版リメイクとの違いを確認したい)
後半になればなるほど、チャレンジに対するリスクの難易度が上がって、どんどん「これな嘘だろ」「これは無い」と思ってしまう部分もあるのだが、なつめの頭脳と行動力(それを支える吉岡里帆の演技)があるので、心の中のツッコミは、そこまでノイズにならなかった。 


なお、高杉真宙は(自分のこれまで観た作品からすると)とてもはまり役なんだけど、いつも通り。
散歩する侵略者』も『前田建設ファンタジー営業部』もこんな感じだったので、もう少し違うキャラクターが見たい。


また、通して見る中で、視覚障害者の方が、(人それぞれであろうが)スマートフォンをどのように使用しているのかも何となくわかり、その点では「教育的」な部分もあった。

アンナチュラ

アンナチュラル DVD-BOX

アンナチュラル DVD-BOX

  • 発売日: 2018/07/11
  • メディア: DVD

『アンナチュラル』は諸先輩方からのオススメもあり、Amazonプライムビデオ見放題に入ったタイミングで久しぶりに見た連続ドラマ。なお、見る前は、何のドラマか全く知らなかった。
なぜ、この2作を並べて書いているのかといえば、全体を通してみると、『アンナチュラル』は、直前に観た『見えない目撃者』との共通点が多いから。
もちろん時系列は反対で、『アンナチュラル』は2018年1月期のドラマで、『見えない目撃者』は(韓国版オリジナルがあるとはいえ)2019年9月公開の映画であることを考えると、『見えない目撃者』の方が意識している可能性があるのではないかと思ったり思わなかったり…。

  • 主人公は女性で、見習いが相棒役
  • 相棒は、当初、主人公の(元)職業に不信感を持っている
  • 写真も含めて死体が画面に映ることが多い
  • 扱うのが連続殺人で、動機が怨恨等ではなく儀式殺人
  • 犯人がサイコパスで幼少期に問題あり
  • 推理がロジカルであることに重きが置かれる
  • しかし、最初は、警察側は主人公の推理を信じようとしない
  • ラストで相棒役の見習いが、主人公の職業を目指すことを決心
  • 大倉孝二がほぼ同じ役回りで登場

ただし『アンナチュラル』のミコト(石原さとみ)は、『見えない~』のなつめほどは強い人間として描かれず、また他のキャラクターも強い面と弱い面の両方が丁寧に描かれる。そこが連続ドラマの良さなのだろう。
そして何より『アンナチュラル』は、『見えない~』とは異なり、ミコトと六郎(窪田正孝)のストーリーというよりは、中堂(井浦新)のストーリーだったということが大きい。そこには主題歌の米津玄師『Lemon』の影響もあるだろうが、映画だったら、こんな感じのストーリーにするのは相当難しいはずだ。


もう一つ、今回『アンナチュラル』に見た連続ドラマの良さは、テーマ性。
繰り返し描かれる法医解剖医の役割について、公式HPより引用する。

主人公・ミコトの職業は、死因究明のスペシャリストである解剖医。

彼女が許せないことは、「不自然な死(アンナチュラル・デス)」を放置すること。不自然な死の裏側には、必ず突き止めるべき真実がある。偽装殺人・医療ミス・未知の症例…。しかし日本においては、不自然死のほとんどは解剖されることなく荼毘に付されている。その現実に、彼女は個性豊かなメンバーと共に立ち向かうことになる。

これは元医師のベストセラー作家・海堂尊が主張していたことだろうと思ったら、監修に携わっているわけでもなく、立場や主張も異なるようだ。『死因不明社会2018』に海堂尊×野木亜紀子対談が載っているようなので、こちらはチェックしたい。



さて、『アンナチュラル』が面白いのは、各話ごとに、異なるテーマが仕込まれていること。
2年先の現在が見えていたとしか思えないMERSコロナウイルス感染症をめぐる差別問題(1話)が典型だが、法廷の場における女性差別(3話)、労働問題(4話)、いじめ問題とサバイバーズギルト(生き残った者が感じる罪悪感)の問題(7話)など、広範囲にわたる。
また、神倉所長(松重豊)の東日本大震災の身元不明遺体調査の話(8話)などもとても切実で、それぞれ視聴者側も問題意識を共有しないといけないような重要なテーマで、とても「教育的」な番組と感じた。


ということで、後半は『見えない目撃者』と比較したときの『アンナチュラル』の良さ、ひいては映画と比べたときの連続ドラマの良さについてズラズラとかいてきたが、どちらもとても面白かった。

個人的には、連続ドラマでもAmazonプライムビデオみたいなCMなしで45分であれば、ギリギリ見られると知れたのは良かった。(海外ドラマに多い1話60分は、自分にとっては厳しい)
今後は連ドラも、色々な作品を観ていければと思います。まずは、野木亜紀子関連作品でしょうか。(放送中のMIUは見てません…)

参考(過去日記)

pocari.hatenablog.com