Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

タイル楽しい~加藤郁美『にっぽんのかわいいタイル 昭和レトロ・モザイクタイル篇』


今年の夏休みは、岐阜への帰省にかこつけて、あいちトリエンナーレ(今年から名称が変わり、「トリエンナーレ」が取れて「あいち2022」となった)に行ってきた。
といっても使える時間は2時間+半日。
そこで、名古屋会場はパスして、一宮会場(2時間)と常滑会場(半日)で、アートを満喫した。



特に常滑は、今回のイベントのための作品もとても面白かったが、「焼き物の街」として十分魅力的だった。
そんな常滑の地元企業「伊奈製陶所」から発展したのがINAX(会社名としては現在LIXIL)。そんなINAXの運営する巨大な敷地の企業博物館「INAXライブミュージアム」にも行ってきた。
ここでは焼き物体験等いろいろな時間の使い方が出来そうだが今回は断念。
ただ、「あいち2022」の展示だけではもったいないので、「世界のタイル博物館」は足早に見学してきた。タイルの歴史がイスラームの文化と深いかかわりがあること等を知ることが出来たが、何より、タイルそのものに色かたち含めて興味を持った。
これまであまり「タイルそのもの」を意識したことが無かったのだ。


そこで読んでみたのがこの本。(ちょうど2022/9/16に増補版が出ているようですが、自分の読んだのは旧版)

「モザイクタイル」とは、タイル1枚の表面積が50平方センチメートル以下のタイルのこと。かつては一般の家庭でもお風呂や炊事場で、あるいは銭湯や映画館、煙草屋などでごく普通に使われていました。驚くべきは、昭和を彩ったこのモザイクタイルの約8割が、わずか4キロ四方の小さな町、岐阜県多治見市笠原町で作られていたこと。その立役者は一人の青年・山内逸三で、彼の独創と努力によって笠原町のタイルは、日本全国に、そして世界に広まったのです。 笠原町では2016年6月3日、藤森照信氏設計による独特の建物も話題の多治見市モザイクタイルミュージアムが開館しました。本書は、同館所蔵モザイクタイルの名品を収録する第1部、23歳で美濃焼モザイクタイルを創製した山内逸三、そして彼と藤井厚二や甲子園ホテルとの知られざる関連を追う第2部、町全体がひとつの工場のような笠原町を訪ね、タイルの製造過程を紹介する第3部、人魚や桃太郎といった美しくも妖しいモザイクタイル画など、笠原タイルを今に残すレトロな街町を歩く第4部で構成されます。なつかしいモザイクタイルを深く楽しく紹介する、充実の一書です。


本の内容は、上にほとんど書いてある(笑)が、目次は4部構成で、1部がカタログ的内容、4部も旅行・街歩きガイド的内容。
2部、3部が、それぞれ山内逸三、笠原町に焦点をあてたタイルの歴史ということになる。
+昭和レトロタイル・コレクション
+山内逸三という青年がいた
+タイルの町、笠原町の人びと
+モザイクタイルの旅
どの章も写真が多く、気軽に読み進めることのできる本だった。


表紙にあるようなシンプルタイルは1部で多く取り上げられ、同じパーツで組み替えたデザインや、釉薬を変えた色違いなど、カタログ的に見ていても楽しい。
それ以上に、4部で多く取り上げられるドット絵のようなモザイクタイル画は実物を見に行きたくなる。
特にお気に入りは

1センチ角のユニットから成るモザイクタイル壁画は東郷青児や高井貞二などに依頼し意匠登録した絵画デザインがあり、INAXライブミュージアムにデザインのカタログもあるという。
今はドット絵は、懐古的な意味もあり人気があると思うので、こういったタイルを使ったデザインは受け入れられやすいだろうし、そういうデザインを売りにしているところがあったら行ってみたい。
なお、上に挙げた例もほとんどが銭湯だが、比較的近くにある平間温泉(川崎市幸区)は、2018年で閉店。もともと、本でも「旧○○湯」と紹介されているところが多く、これらのデザインは保護しようとする人の手が入らなければ、どんどん失われていくのだろう。


今回、興味を持ったが、日常的にはあまり意識してこなかった「タイル」。本の中でも紹介があったが、岐阜にはしょっちゅう行っているので、少し足を延ばして多治見市モザイクタイルミュージアム藤森照信設計)*1には行ってみたい。

なお、博物館で売っていたブックレット『I LOVE タイル~タイルがつなぐ街かど』には、銭湯のような室内ではなく、外壁に使われたタイルデザインがたくさん紹介されていた。街歩きの際には、少し気にして探してみようと思う。

追記

あ、こんな本も。
ドット絵と相性のよいクロスステッチ
これはモザイクタイルではなくマジョリカタイルということになると思うが、こちらも楽しい。


クロスステッチで本を探ると…立体物も作れるのか!