Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

迎撃!田島貴男DCvol.3『ELEVEN GRAFFITI』『L』『ビッグクランチ』編

記事のタイトルは「田島貴男DC」としていますが、「田島貴男のHome Studio Concert ~ディスコグラフィー・コンサート」が正式名称。
買い忘れている人は早くチケットを買いましょう

■チケットページURL: https://originallove.moala.live/products/hsc-4-st
■チケット価格:1,500円
■生配信予定日時:2021年3月20日(土) 21:00~22:00
http://originallove.com/live/2021/02/20/3328


ついにこの時が来た!!

対象アルバム

  • ELEVEN GRAFFITI(1997年7月2日)
  • L(1998年9月18日)
  • ビッグクランチ(2000年8月2日)

1997年~2000年の音楽

(工事中)

ELEVEN GRAFFITI(1997年7月2日)

(工事中)

L(1998年9月18日)

(工事中)

ビッグクランチ(2000年8月2日)

ビッグクランチ

ビッグクランチ

今回、一通りアルバムを聴いてきて、基本的には、アルバムの良さを再評価する良い機会になっていたが、やっぱり『ビッグクランチ』への苦手意識は払拭できなかった。
実際、今回の3枚のうち、元々大好きだった『L』もニュートラルな位置にあった『ELEVEN GRAFFITI』もどちらも聴き直して評価を上げたあとで聴いたアルバムなのに、やっぱり『ビッグクランチ』は自分にとって鬼門なのか…。
単体で聴くと大好きな曲はいくつもある。名曲「ショウマン」、大作「地球独楽」は勿論のこと、AB面の一曲目を担うダブルヘッダー「女を捜せ」「ダブルバーガー」も良い。
ただ、アルバム1枚となると、なかなか聴き通すのがしんどい。


これはやはり歌詞なのでは?と思って何かを掴みかけたとき、手元にあった新潮文庫の小冊子(ナツイチみたいなやつ)「高校生に読んでほしい50冊2020」の中の言葉が、自分の思っていたことをまさに言い当てた。
この小冊子では「中高生のためのワタシの一行大賞」として、中高生から対象図書の好きな一冊から心に残った一行と、それにちなんだエピソードを募集している。
第7回の大賞は角田光代『さがしもの』の一行を取り上げた中学生の女の子の文章で、「明日から留学」というときに鍵が見つからずに必死で探すエピソードが書かれている。

「さがしもの」と「なくしもの」は微妙に違う。あの鍵は数時間前まで手の中にあったはずの「なくしもの」。これから私は自分にない「さがしもの」を見つけに海外へ旅立つ。

まさに『ビッグクランチ』は、ここで言う「なくしもの」についてのアルバムで、田島貴男がそれまでの作品で「We are bound for LOVE(夢を見る人)」と歌っていたような前向きな「さがしもの」感が少ない。

  • 新世界のPARTY NIGHTで女を捜せ(女を捜せ)
  • おれの恋の気まぐれなアモール 何処へ行ってしまったの(愛の薬)
  • 裸探しサファリ(セックスサファリ問題OK)
  • 愛の渇きに彷徨い続けて何処へ辿り着くのだろう(ショウマン)
  • 8メートルリムジンで今日の相手捜せ(ダブルバーガー)
  • なにも見つからない(MP)

結局、「探している」と言いながら、同時に「失ってしまった」と何度も歌うので、より一層「取り戻す」感じ=後ろ向きな「なくしもの」 感が強まってしまっている。(そもそもMP=ミッシングパーソン)
「愛で殺したい美しい人」と歌う「殺し」も「愛の薬」も繰り返し「愛」という言葉を使うが、愛が満ち足りた歌詞ではなく、明らかに「愛」を取り戻そうと苦しんでいる歌だ。


音楽的なトライは前向きで面白いけど、どの曲からも感じ取ってしまう後ろ向きな言葉のボディーブローがどんどんダメージとして溜まってくる。
このやるせない悶々とした気持ちの積み重なりは「地球独楽」でラッピングされて、最後に「突破感」のある「R&R」が付いているので、最後まで聴けば少しスッキリするけど、やっぱり通して聴くのが重いのは、この一貫した歌詞が原因だとわかった。
なお、アルバムの中で順位を付けたら「ショウマン」「地球独楽」の次に好きな「液状チョコレート」には「なくしもの」要素はなく、逆に、苦手な「殺し」「愛の薬」「MP」は「なくしもの」要素に満ちているので、勿論、個人の好みの問題だろうと思う。


田島貴男本人も、当時のラジオ番組「BURST」のビッグクランチ特集の全文書き起こしを読むと、後ろ向きな様子は露ほども見せずノリノリ過ぎて笑ってしまうほどだ。田島解説では「液状チョコレート」は「AVっぽい歌詞」だそうです。面白い。*1

なお、16年前の自分が語る『ビッグクランチ』が駄目な理由はコチラ。
今とたいして変わらない。今では「R&R」は好きです。
pocari.hatenablog.com


演奏してほしい3曲

  • ティラノサウルス
  • ビタースウィート
  • アンブレラズ
  • ディア・ベイビー
  • 水の音楽
  • ドラキュラ
  • 大車輪
  • インソムニア
  • 神々のチェス~白い嵐
  • ダブルバーガー
  • ショウマン

(駄目だ、『L』愛が溢れてしまっている…。多分演奏すると思うけど「ディア・ベイビー」はちゃんとやってほしい。)

セットリスト

  1. GOOD MORNING GOOD MORNING
  2. 宝島
  3. ビタースウィート
  4. アイリス
  5. ショウマン
  6. 水の音楽
  7. MP
  8. 地球独楽
  9. 羽毛とピストル
  10. 大車輪
  11. サーディンの缶詰
  12. R&R


今回は、唯一「MP」が天邪鬼の気概を見せていました(笑)が、終わってみると穏当すぎるセットリストでした。
とはいえ、「水の音楽」「地球独楽」がまとめて聴けたのは本当に良かったです。
そして、弾き語りで聴いてみて、観客を入れても盛り上がりを期待できると確信できたのは「大車輪」。
「ショウマン」や「アイリス」はやはり名曲でした。
MCで驚いたのは「ビタースウィート」が19か20歳の時に作った曲だという情報です。これも『ELEVEN GRAFFITI』というアルバムの核となる曲なのにすごい。


なお、『ビッククランチ』こそがオリジナル・ラヴ田島貴男)の最高傑作と信じて疑わないというkeyillusionさんからコメントを頂き、それ以降、コンサートまで改めて聴き直したところ、「MP」は、空虚な気持ちにはなりますが、嫌いな曲ではないことがわかりました。となると最後まで残る「殺し」「愛の薬」の2曲に対する苦手意識が全体の中で勝っていて、アルバム全体に対する辛い評価に繋がっていると言えそうです。(実は、このあと「苦手」がどこから来ているのかが判明しました!→迎撃!田島貴男DCvol.4『ムーンストーン』『踊る太陽』『街男 街女』編 - Yondaful Days!
とはいえ、Twitterのタイムラインを見ていると、「殺し」「愛の薬」を好きな人もいて、やっぱり人それぞれで面白いなあ、と思いました。
一方で、対人での好き嫌いも、同様に、癖や言い回し、身振り手振りのほんのちょっとしたことで「大嫌い」が生まれることもあり、しかもその「呪い」は時間で解決できない気もしてしまいました。


ディスコグラフィーコンサートは、過去のアルバム聴き直しの中で、もう一度、苦手な曲やアルバムを好きになるいい機会だと思っています。別に無理に好きになる必要はないのですが、フラットな気持ちに戻ってそれぞれの曲と「再会」してみたいです。

*1:改めてみると、このORIGINAL LOVE presents 《BURST!》書き起こし、大量にあるし力作過ぎます!ちょうど『XL』『ビッグクランチ』『ムーンストーン』くらいの時期で、自分も初回から途中まではいつも聴いていたはずなのですが最終回の記憶がないので途中で脱落してしまったのだろうか…