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シェイクスピア『オセロ』

オセロ (角川文庫クラシックス)

オセロ (角川文庫クラシックス)

あまり期待しないで読んだら、意外に現代的でわかりやすく面白かった。
ちょうど1年ほど前にマクベスを読んだが自分のツボには嵌らなかったので、心配していたのだ。
筋はamazonよりそのまま引用。

美しい妻デズデモーナを愛するムーア人の勇敢な将軍オセロ。トルコ艦隊を打ち破り、今や順風満帆な彼の人生は、副官に任命されなかったことを不服に思う部下イアーゴの冷酷で緻密な陰謀により、影が差し始める。イアーゴはデズデモーナが不義を働いているとオセロにささやき続けたのだ。そしてついにオセロはみずからを破滅に追い込んでしまう…。人間の抱える普遍的な愛情の葛藤を、冷静に鋭く描いた、傑作悲劇。

肌の黒いオセロ*1は、キプロスの軍隊の中では見た目は「異形のもの」であり、そういう意味では、ある現代小説を思い出させた。
異形の大男が国を救い、貴族の娘と結婚する、というのは、まさにグインサーガのグインであり、初登場時のオセロは、国を治めるオーラを持った偉大な英雄なのである。
しかし、話が進むにつれて、オセロはイアーゴの陰謀にことごとくはまり、以前のオセロではなくなってしまう。
そう、嫉妬に狂うとはよく言ったもので、オセロは、本当に狂ってしまうのだ。
オセロが勘違いから不貞を疑う相手のデズデモーナが本当にいい娘だから、余計に悲しく、救われない話。
解説でもあるように「嫉妬は愛情の深さの裏返し」である。人種の違いや世間の反対、そういった障害を乗り越えて実った愛だからこそ、何かをきっかけに力が逆方向に働けば、それだけ大きな嫉妬、怒りが生まれてきてしまう。これまで何度もドラマのモチーフになっているプロットだが、やはり、そういうときに人間の感情の正負のパワーが溢れ出てくるものなのだろう。
男女の愛が中心テーマとなるらしいオリジナル・ラヴの新作『東京 飛行』の2曲目「オセロ」は、間違いなく、「嫉妬」の歌なのだろう。タイトル負けしないような曲であることを期待したい。
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ところで、当然のことながら、オセロゲームの名称の由来は、この作品から来ているようだ。

名称の由来はシェイクスピアの「オセロ」のストーリーが黒人と白人の関係がめまぐるしく変わる様であることから取ったという。

*1:オセロはムーア人。ムーアは北西アフリカのイスラム教教徒の呼称。wikipediaによると、オセロが黒人であったかアラブ人であったかには議論が分かれるようだ。